11月8日から公開されている『生理ちゃん』という映画を観てきた。感想としては75分というコンパクトな尺の映画でなかなか良かった。最近、映画館に2時間座ってるのがつらい。スマホによる細切れの情報摂取に慣れてしまったせいか、集中力がもたないのだ。

(C)吉本興業 (C)小山健/KADOKAWA

生理ちゃん、原作のマンガも好きだったけど実写には実写の面白さがあった。

結局のところ、我々男性には生理の大変さを実感することはできない(女性同士でも差異があってわからないという人もいるわけで)。でもこの映画を観て、少し想像の幅を広げることができた気はする。

原作のマンガと違う点は、実写映画になると“生理ちゃん”を肩に乗せたり、背負って歩いたりする女性陣たちの、いかにも重そうで苦しそうな様子がリアルに伝わってくるところだ。

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とにかくでかい。ピンクのふかふか素材でできているように見えるものの、サイズは大人の女性よりも一回り大きい。あれに月1ペースでつきまとわれたらさぞかし迷惑だろうなと思う。

作品の中では、生理中の女性は“生理ちゃん”を抱えて生活しなくてはいけない。考えるだけで憂鬱になってくる(一応、男性には「性欲くん」や「童貞くん」がつきまとうが、あんなのは生理ちゃんに比べれば軽いものだ)。

(C)吉本興業 (C)小山健/KADOKAWA

いや、いままでだってそりゃあなんとなく、ツライらしいってことは情報としては聞いていたけど、実写映画でデフォルメされた生理ちゃんを見ると、また違う響き方をする。

しかし残念なことに(そして予想通りだけど)、映画の中の男性たちは生理ちゃんを背負った女性のことをまったくケアしようとしない。だって男性には生理ちゃんが見えないのだから。

(C)吉本興業 (C)小山健/KADOKAWA

生理中の女性部下に、心無い言葉を浴びせる男性上司。ものすごくわかりやすいステレオタイプな男性像で、少しがっくりくる。そんなやつが生理ちゃんに腹パンを食らって「下腹部が痛い〜」とのたうち回る姿には思わずスカッとしてしまった。

まったく他人事じゃないのに。

たぶんリアルの世界では、僕も生理ちゃんが見えないわけで、このおじさんとたいして変わりはないはず。それでも映画を観ていてあのシーンにスカッとしてしまった。それなら今後はもっと想像力を働かせないといけない。

(C)吉本興業 (C)小山健/KADOKAWA

ハイライトのシーンはそんなところではなかった。二階堂ふみ演じる主人公の青子は、「病気で亡くなった前妻との間に11歳の娘がいる男性」と交際している。男性からプロポーズされたが、年頃の娘はまったく心を開く気配がない。

青子は11歳の女の子と心を通わせることができるのだろうか……?

そんなストーリーの縦糸を、よりによっておじさんのバイブル『島耕作』に似たようなエピソードがあったのを思い出しながら観ていた(実は島耕作のなかでも生理がしっかり描かれている話がある)。

そして最後は生理がつなぐ女性同士の絆にやっぱりホロリときてしまう。じんわりと心に染みるいいストーリーだった。

(C)吉本興業 (C)小山健/KADOKAWA

映画が終わって、まわりを見回してみると、20代の若いカップルが多いようだった。どっちからこの映画に誘ったんだろうか。このあと2人でどんな会話をするんだろう。映画館にいる男性陣で反省会をしてみたい。

あの残念な男性上司は、短い映画の中で生理の大変さと周りの無理解をわかりやすく表現するために登場したはずだ。とても大事な役割を担っていたと思う。

でもこの映画がヒットすれば、そのステレオタイプな男性像そのものが世の中から消えるきっかけになる。実際には女性が思っているよりも、生理を理解したいと考えている男性はいるはずだ。

ちょっと笑えて、泣けて、意義深い映画。生理ちゃん。

映画でも観たい気分だけど、2時間半もある超大作は気が重いという人には、ぜひおすすめしたい。

ランドリーボックスでは特集「#ボクとわたしの生理」を始めました。
ボク?男性に生理は関係ない?そう、生物学的な「男性」に生理はありません。
だけどみんなで社会を築いていく。
そう考えたら、それぞれがお互いを知る必要があるのかも。
生理に向き合う多様な人たちの声を集め、性について考えていきたいと思います。

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