PMDDという言葉を聞いたことがあるでしょうか?
PMDD(premenstrual dysphoric disorder)は日本語で「月経前不快気分障害」という名の女性特有の病気です。PMS(premenstrual syndrome:月経前症候群)なら知っているけどPMDDは初めて聞いた人も多いのではないかと思います。
今回は今も毎月のPMDDと闘う当事者の1人として、私の具体的な症状や自分なりの対処法などをお話しようと思います。
PMSとの違いは精神症状の強さ
女性の多くは毎月の生理前に何かしらの身体的・精神的に不快な症状を抱くと言われています。これらはPMSと呼ばれ、症状の程度には大きな個人差があります。
月経前の症状は100種類とも200種類とも言われており、それほど症状もさまざまです。病院に行くほどではないけれど、「生理前はすぐイライラしてしまう」「生理前はからだが怠くて何もやる気が起きない」などの症状がある方も多いのではないでしょうか。
PMDDもPMSと同様、月経が始まる数日前から現れるさまざまな症状です。
ですが、PMSと大きく違うのは「精神症状の強さ」。
PMSに比べてイライラ、抑うつ(気分の落ち込み、無気力など)、情緒不安定などの精神的な症状が非常に強く、日常・社会生活や人間関係に大きな支障をきたしてしまうことが特徴です。PMDDは精神疾患の一種であるため、一人で頑張りすぎないで、医療機関を受診して相談することをおすすめします。
参考記事
・PMSとPMDDの違いとは?生理前に強い絶望感や不安を感じるのはPMDDのせいかも(医師監修)
わたしの場合の症状
PMDDの症状が現れる時期は人それぞれ異なりますが、私の場合は毎月生理が始まる約14日前(排卵の時期)から始まります。
私はイライラや怒りっぽさよりも抑うつ感・不安感・情緒不安定(気分のアップダウンが激しくなる)・涙もろさ・些細なことに傷つく・自責感(何もかも自分が悪いんだと思ってしまう)・自己卑下(自分なんてしょうもない人間だと思ってしまう)等の悲観的な思考が強くなり、これといった理由もなく突然「この世からいなくなりたい」と思ってしまう希死念慮(きしねんりょ)という症状も頻繁に現れます。
腹痛・腰痛・頭痛・倦怠感・食欲増進(特にジャンクフードや甘い物が欲しくなる)・眠気・便秘・乳房の張りや痛みなどの身体的な症状も同時にありますが、私は精神症状の方がとても強く現れます。
少なくとも毎月の半分はPMDDによる症状に振り回され、自分の感情を上手くコントロールすることが困難な状態です。普段は明るい性格で考え方もわりとポジティブな私ですが、月経前だけは何もかもネガティブ。まるで「自分だけど自分じゃない」といった状態になってしまいます。
PMDDの自分と元気なときの自分を分ける
PMDDの症状が現れたときに行っていることとして、具体的な症状や感情など、自分の今の状態をSNSやメモに書くことをしています。
自分の症状を目に見える状態にすることで、「これは病気の症状であって本来の私ではないのだ」と客観的に捉えることができています。「PMDDの自分」と「元気なときの自分」を分けることは、私にとって最も大切な対処法です。
また、私の場合は生理前に人の声や音に敏感になるという症状があります。そのため、自宅にいるときはできるだけテレビをつけずに静かな環境を心がける、外出するときは必ずイヤホンを持ち歩くなど、自分が快適に過ごせるような工夫をしています。
そしてほんの少しでも「今日は調子が悪いかもしれない」と感じたら、とにかく無理をしないことを心がけています。自分のできる範囲で、症状が現れないような工夫を取り入れて生活することがとても大切です。
PMDDは毎月同じような時期にやってきます。症状が現れるたびに、「今月も来ちゃったか…」という気持ちになってしまうのは否めません。
ですが、私は専門の医療機関にかかった上で、「どうしたらPMDDをなくすことができるか?」よりも「どうしたらPMDDと上手く付き合っていけるか?」に重きを置いています。月経前の症状がなくなるのはもちろん理想的なこと。私も長年治療を続けており、いつ改善するのだろうかという思いもあります。ですが、そんな中でも「自分らしく生きる」ことを常に大切にしています。
頑張っている自分を褒めてあげて
PMDDはまだ社会的な認知が低い病気です。
そのため、職場や学校といった場だけでなく、家族やパートナー、友人といった身近な人からもなかなか理解されないという悩みを抱える人も多くいます。
「自分の心が弱いからいけないんだ」と自分自身を責め、孤独な気持ちで生理期間を過ごしている人もいると思います。
PMDDは生理周期にともなう女性ホルモンの変動をはじめとするさまざまな要因が影響する病気です。決して自分が弱いからといった理由でなるものではありません。
どうかつらいときこそ、生理前でも頑張っている自分を労わってあげてください。
よく頑張ってるね!とたくさん褒めてあげてください。
PMDDに悩む方の心が少しでも軽くなりますことを願っています。
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。