「仏教の教え」。それは大昔から日本人に根づき、大災害などで不安な時代にも心に平穏をもたらしてきました。現代のわたしたちの環境も、コロナ禍や仕事・家事、生理・PMSなど、ついつい不安に感じてしまう要因が年々増していますよね。そんな不安を感じやすい現代のわたしたちの心の悩みについて、落語家であり、天台宗の僧侶である露の団姫(つゆのまるこ)さんにアドバイスをもらいました。

真の「自立」とは「共生」のこと。周囲に頼ってみましょう

--生理前になると注意力散漫になって、仕事で普段やらないミスを連発…。どうしたらよいでしょうか。

仕事には多少の無理はつきものですから、「無理する時期」をコントロールしてみましょう。生理前に無理をするのではなく、生理前の前の段階で仕事を片付けるようダンドリしておくのです。また、自分のダンドリでは仕事が片付かない職種であれば、家事の仕方で調整しましょう。生理前までに作り置きのおかずを作っておいたり、冷凍食品やお惣菜を活用したり、仕事以外のことをなるべく簡素にして、睡眠時間を確保します。さらに、信頼できる同僚にダブルチェックをお願いするなどして、ミスを減らす工夫をしましょう。一人で何でもこなそうとすることは「自立」ではなく「孤立」です。真の「自立」とは「共生」のことですから、お互いに支え合って仕事をすすめていきましょう。

--「共生」についてもう少し詳しく教えてください。「人に頼ること」と理解すればよいのでしょうか。

自分の得意不得意を客観的に認め、得意なことは率先して行い、不得意なことは上手に人を頼ることです。大切なことは、あくまでも感謝の気持ちを持って、敬意を持って「頼る」のであって、決して人を便利使いしないことです。

上司や同僚に、PMSのことをさりげなくプレゼンしてみましょう

--PMSやPMDDを上司や同僚にどう説明したらよいですか?サボっていると思われているのではないかと疑心暗鬼になってしまっています。

生理に関することは、会社の同僚や上司はもちろん、ときにはパートナーにも話しにくいデリケートなものです。しかし、PMSやPMDDの症状に後ろめたさを感じる必要はありません。後ろめたさを抱えたまま上司や同僚に説明すると、それこそ、サボっている印象を与えてしまいます。だからこそ、わかりやすいサイトの情報なども見せながら、プレゼンをするように説明してみてください。

--落語の世界も男性が多い環境ですよね。露の団姫さんなら、どんなふうに上司にプレゼンをしますか?

上司の妻や娘に共感するような形でさりげなくプレゼンをします。「最近、妻がカリカリしててな〜」という話題でも、「更年期障害は、30代からはじまる方も多いですし…わたしもすごく奥さんの気持ちがわかります」や、「娘がバイトをよく休んでいるみたいで…」と言われていたら、「PMSというのがあって、しんどいんですよ。世代、関係ないみたいです」など、上司の身近な話題に自分も共通することを放り込んでいきます。

あなたが勇気を持ってPMSへの理解を職場に求めることで、救われる女性がたくさんいます。PMSの理解は「わたしの問題」ではなく「わたしたちの問題」です。PMSをタブーとしない環境を作ることで、みんなが過ごしやすい職場になりますよ。

スマホを置いて、情報の取り入れ方を切り替えましょう

--コロナ禍で人と会う機会が減り、いったん落ち込むと落ち込んだままになってしまいます。

落ち込んだときは、一度、インターネットから離れてみましょう。現代人は一人になるとすぐにスマホを見てしまいがちですが、コロナ禍の今、いつも以上にスマホにはネガティブな情報が溢れています。しかも、スマホから得られる情報は家族で見るテレビとは違い、自分一人で受け取らなければいけないものですから、落ち込む気分に拍車をかける場合も少なくありません。

--そう言われても…ついつい見てしまいます。どうしたら気持ちを切り替えられますか?

「気持ちを切り替える」ためには、まずは「情報の取り入れ方を切り替える」ことを心がけましょう。また、スマホを見てしまう代わりに、例えば、自分の好きな本を開く、好きな音楽を聴くなどの新しい習慣を作れば、負のループから抜け出すことができます。

ストレスが溜まっているときこそ、簡素な食事に

--仕事のストレスで常に寝た気がしません。眠りが浅くて翌日ぐったり…。仕事も非効率で困っています。

「生活習慣を変える」という余裕がないほどの生活スタイルが見受けられます。このままでは、心も体も不調をきたしてしまいますので、一度、医師に相談してみることをおすすめします。病院にかかることに抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、深刻な事態になる前に相談することが大切です。

また、ストレスが溜まるとつい暴飲暴食をしがちですが、こういうときこそ簡素な食事にしてみてください。胃が休まると、眠りやすくなります。「ストレスをなくして眠る」ことは理想的ですが、今、目指すべきことは、逆です。睡眠をとることでストレスは軽減されますので、まずは安眠できることを目標にしてみてください。

感謝は求めるものではなく、相手が自発的に思うもの

--周りのママや仕事仲間と比べて自分はできない…と思ってしまいます。どうしたら自分に自信がもてますか。

このお悩みの根底には、「家族から感謝されない自分」への寂しさがあると思います。ただ、感謝とはこちらから求めるものではなく相手が自発的に思うものですから、まずは家事を手伝ってもらいその大変さを知ってもらいましょう。そうすれば、自然と家族も感謝の気持ちを覚えます。

--「家族に感謝を求めすぎてはいけない」ということでしょうか。

恋愛もそうですが、人間は求められると逃げたくなるものです。だからこそ、「感謝して」と要求することは逆効果になるため、感謝の元となる「大変さを知ってもらう」という行動が鍵になります。

--仕事仲間と比べてしまうことへのアドバイスはありますか?

阿弥陀経というお経には、「青い花には青い光、黄色い花には黄色の光、赤い花には赤、白い花には白…」と、それぞれの花がそれぞれに光輝いて素晴らしいという教えがあります。青い花は黄色の花と自分の色を比べませんし、比べても意味がありません。だからこそ美しいのです。比べることやめれば、自分の色がでてきて、きっと自信を持てるようになりますよ! 

お話を聞いた方

露の団姫(つゆのまるこ)

落語家・天台宗僧侶。兵庫県尼崎市在住。高座の他にもテレビ・ラジオで活動中。小さい頃からの「死」に対する恐怖をきっかけに仏教を学びはじめ、高校在学中に人生指針となる法華経に出会う。高校卒業を機に初代・露の五郎兵衛の流れを組む露の団四郎(だんしろう)へ入門。3年間の内弟子修行を経て、主に古典落語・自作の仏教落語に取り組んでいる。
2011年、天台宗で得度。2012年、比叡山で四度(しど)加行(けぎょう)を受け正式な天台僧となる。2020年、兵庫県尼崎市に「道心寺」を開山。年間250席以上の高座と仏教のPRを両立し全国を奔走する異色の落語家。著書『プロの尼さん』(新潮社)、『女らしくなく、男らしくなく、自分らしく生きる』(春秋社)。

公式HP

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ランドリーボックス では特集「#わたしをいたわるメンタルケア」をはじめました。

世界中で大変なことが起きた2020年も、ようやく終わりを迎えます。

おうちで過ごす時間が増えた今、自分の心やからだと向き合う時間にしてはいかがですか。

たくさん悩んだり、不安になったりして疲れてしまっているあなたのからだと心のために、専門家からもらったアドバイスをぜひ、参考にしてみてください。

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