2025年6月30日、あすか製薬から「経口避妊薬 スリンダ錠28」が発売されました。これは日本で初めて承認されたエストロゲン成分を含まない経口避妊薬です。どのようなものなのか解説します。
経口避妊薬「スリンダ」とは?
経口避妊薬「スリンダ」は、エストロゲンを含まない国内初の経口避妊薬です。エストロゲンを含まない経口避妊薬は、一般的に「ミニピル」といわれています。
これまでも日本ではエストロゲンを含まないプロゲスチンのみを配合した経口薬はありましたが、それらは月経困難症などの治療薬として承認されているものであり、避妊薬として承認されたものではありませんでした。
エストロゲンを含まない経口薬は、血栓症のリスクが低いとされており、特に片頭痛のある方、40歳以上の方や喫煙をする方、高血圧や肥満などのリスクがある方にも使いやすいと考えられています。
これまでの経口避妊薬とのちがいは?
これまでの国内で認められている経口避妊薬と大きく違うのは、「エストロゲンが入っていない」という点です。
従来、国内で承認されていた経口避妊薬は、「エストロゲン」と「プロゲスチン」という2つの女性ホルモンを組み合わせた混合型の低用量ピルです。
しかし、エストロゲンを含む低用量ピルは、静脈血栓塞栓症(VTE)のリスクがあるため、片頭痛のある方、35歳以上で喫煙している方や、肥満、高血圧などの持病がある方には使用制限があります。
今回承認されたプロゲスチン単独の経口避妊薬は、WHO(世界保健機関) の指針でも、混合型の経口避妊薬と比較して血栓症のリスクが低いとされています。
しかしながら、副作用が全くないというわけではありません。不正出血、下腹部痛、月経異常(過少月経、過多月経、不規則な月経など)、頭痛、腹痛が報告されていますので、気になる点は医師または薬剤師に相談するようにしてください。
保険適応になるの?
「スリンダ」だけでなく、経口避妊薬(ピル)は、保険適用外のため自費となります。
費用は医療機関によって違いますが、おおよそ1シート3000円前後で処方されています。
避妊効果は?
他の低用量ピルと同じく、正しく服用すれば99.6%の避妊効果が期待できます。
エストロゲンを含まない経口避妊薬も選択肢のひとつに
今回承認されたエストロゲンを含まない経口避妊薬「スリンダ」は、これまで年齢や体質の理由でピルを使いづらいと感じていた方にとって、新たな避妊の選択肢となる可能性があります。
多様な避妊法の中から、自身のカラダやライフスタイルにあった適切な避妊方法を選ぶための参考にしてみてください。
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。