生理痛など、日常生活に深刻な支障をきたしてしまう生理時の不調を総称して「月経困難症」といいます。この月経困難症の原因で多いとされている病気のひとつには子宮内膜症があり、月経痛や下腹部痛がひどいことが特徴です。

月経困難症と子宮内膜症の治療には、低用量エストロゲン‧プロゲスチン配合剤(以下、LEP製剤とする)では、という保険適用のピルが使われます。

このほど、2022年9月7日にバイエル薬品株式会社が行ったプレスセミナーでは、LEP製剤の服用によって月経時の痛みや不快症状が改善するという研究結果のほか、月経がもたらす生活面やキャリア面への悪影響が報告されました。

月経困難症や子宮内膜症が与える深刻な影響

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日本における月経困難症の患者数は、推定800万人以上と言われていますが(*)、バイエル薬品によると、実際に婦人科などを受診し適切な治療を受ける人は年間90万人程度に過ぎず、非常に少ないと説明しています。

*参考:日本子宮内膜症啓発会議「子宮内膜症 Fact Note」2013年11月20日発行

しかし、月経に関連する病気を治療せずにそのままにしておくと、体にはさまざまな不調が生じます。例えば、子宮内膜症は、強い月経痛や排便痛、性交痛、過多月経、吐き気、不妊症などを引き起こすと言われています。

*子宮内膜症の主な症状はこちら。

子宮内膜症の原因と症状、治療法について。生理痛が重い人は要チェック(医師監修) | ランドリーボックス

また、月経痛に関して、山梨大学医学部産婦人科准教授・吉野修氏(以下、吉野氏)によると、月経時に感じる痛みを10段階で表したとき、月経困難症や子宮内膜症を患っていない人が4〜5であるのに対して、月経困難症や子宮内膜症を患っている人は8程度の痛みを経験しているといいます。

バイエル薬品プレスセミナーより

このように月経に関する病気は体に深刻な負荷を与えますが、日常生活やキャリアにもその影響が及んでいることが同セミナーで報告されました。

例えば、月経困難症や子宮内膜症を患っている人が訴えた悩みは「人間関係」が多かったといいます。同セミナーで報告された10カ国のデータをまとめた研究によれば、14歳〜67歳の子宮内膜症患者931人のうち、67%が「パートナーとの関係に悪影響」、19%が「離婚の原因」、46%が「友人との関係に悪影響」、22%が「子育てが困難」と回答したといいます。

バイエル薬品プレスセミナーより

また、吉野氏の報告では、年代別では以下のような悩みを患者は抱えていることが分かりました。

9〜24歳は学業に悪影響が出ている

オーストラリア人女性を対象にした研究によると、35人の子宮内膜症患者のうち3分の2が、子宮内膜症に伴う疼痛によって通学や勉強に集中することが困難だと訴えている。

また9〜18歳のトルコ人学生1274人に調査した研究では、月経痛の痛みが強い学生の方が成績不振だと示唆するデータが示された。

バイエル薬品プレスセミナーより

生理時の痛みによる、就労への悪影響

スイスやドイツ、オーストリアなどの505人の子宮内膜症患者を対象にした調査によれば、生理時の痛みによって、欠勤や就労時間の短縮、離職を余儀なくされるケースがある。また、同調査では、子宮内膜症患者は、そうでない女性に比べて希望の職業に就けなかった割合が1.8倍高いことがわかった。

35歳以上の人は、特に金銭面での悪影響を挙げている

オーストラリア人女性を対象にした研究によると、35歳以上の子宮内膜症患者は、治療にかかる医療費の負担や、疼痛に伴う収入の減少を訴えている。

LEP製剤がもたらす月経時へのポジティブな効果

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では、月経困難症や子宮内膜症の治療薬として使われるLEP製剤は、月経時の痛みや不快症状、生活の改善にどのような効果があるのでしょうか。

同セミナーでは、LEP製剤(月経困難症や子宮内膜症の治療のために処方される低用量ピル)による治療、非LEP(漢方薬や、非ステロイド性抗炎症剤つまり痛み止め)による治療だと月経時の症状の改善にどれほどの違いがあるかという、原発性・続発性月経困難症の患者397人(日本のみ)を対象にして行われた研究について吉野氏が報告しました。

なお、効果の程度は、治療前・治療後60日目・治療後120日目の3つに基づいて評価されました。

痛み、むくみ、負の感情といった月経に伴う不快症状に対する効果

月経時の不快症状は「MDQスコア」という尺度を用いて表し、このスコアが高ければ高いほど不快症状がひどいことを示します。

<効果測定の結果>

・LEP治療:LEP治療開始後の120日間でMDQスコアの低下が見られ、LEP治療をおこなうことにより月経時の不快症状が改善されることが分かった。

・非LEP治療:治療開始後の120日間において、MDQスコアの低下はあまり見られなかった。

社会生活を送る上で欠かせない「健康関連QOL」に対する効果

健康関連QOL(Health-related Quality of Life; HR-QoL)とは、健康が日常生活に与える影響や、本人が感じる健康度を定量化したもの。

健康関連QOLは、「SF-36」と呼ばれる尺度で表されます。SF-36は、「あなたの健康状態は?」や「仕事や普段の活動する時間を減らしたか?」といった36の質問によって8項目のQOLの尺度が導き出されます。

この8項目には、「身体的機能」「日常生活機能(身体)」「身体の痛み」「全体的健康観」といった身体的側面のQOLと、「活力」「社会生活機能」「日常生活機能(精神)」「心の健康」といった精神的側面のQOLがあります。

それぞれの具体的イメージとしては、例えば、身体的側面の「日常生活機能(身体)」は「仕事や普段の活動をしたときに身体的な理由で問題があったか」、精神的側面の「社会生活機能」は「身体的あるいは心理的な理由で、人間関係が妨げられなかったか」などを指します。

<効果測定の結果>

・LEP治療:身体的・精神的側面どちらでも改善が見られた。特に、精神的側面の4つのQOLはすべて改善を示し、吉野氏は、LEP治療は精神的な側面での効果が期待できると説明した

・非LEP治療:QOLの改善の傾向はあまり見られなかった。

仕事の効率・パフォーマンスに対する効果

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仕事の能率・パフォーマンスは、下記の4つのスコアに基づき評価されました。

・アブセンティーズム…痛みがひどくて仕事にいけない状態
・プレゼンティーズム…仕事に行くことはできるが効率が落ちている状態
・全労働への障害率
・活動性障害

これらのスコアが高いほど、仕事の効率が落ちていることを示します。

<効果測定の結果>
・LEP治療:60日目あたりから、4つ全ての項目においてスコアの低下が見られた。
・非LEP治療:スコアにあまり変化は見られなかった。

 *

重い生理痛や、生理時の体調不良には月経困難症や子宮内膜症などの疾患が隠れている可能性があります。気になる症状がある人や、生理時の重い症状に悩む人は一度病院を受診することをおすすめします。

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