*「生理」というタイトルだけで読むのをやめる男性の方は多いと思いますが、身近に大事な女性がいたらぜひ一読してほしいです。もしかすると、彼女達の役に立つかもしれません。今回は女性はもちろん、男性が読むことも考慮して書きました。
生理を知っているだろうか。そう、女性を3週間おきに襲うアレだ。
1カ月じゃない、3週間おきだ。来るのは大体1カ月に1回だが、1週間続くから、実際は3週間おきだ。
人によって症状はさまざまで、「眠気」「だるさ」「肌荒れ」「生理痛」「食欲増加」「イライラ」「落ち込み」「情緒不安定」などが、生理前から生理中にかけて襲ってくる。生理前の期間も入れたら、10日以上。私の場合生理痛はないが、生理前には鬱になって涙がボロボロ出てくるし(これをPMSという)、生理が始まればダルすぎて眠すぎて1日使いものにならない。本当に、女って損だと思う。
そんなわけで、私は生理が死ぬほど嫌いだった。
我が子を産んだ後も別に生理に感謝することもなく(毎月という頻度、どんだけ子供を作らせたいのか)出来るものなら消し去りたいと思っていた。
数々の不調はもとより、股から血が予測不能に出てくるのが面倒くさい。不調が一切ない人も、そこは絶対に同じだ。軽やかにコーヒー淹れてても下でドロっとするのが分かるし、会議しててもドロっとする。気になる。まぁ、会議とかしたことないので想像だが。
世の中には色々な生理用品がある。今回は馴染みのない男性にも分かりやすいように、一般的に手に入るメジャーなものをまとめてみた。知っといて損はない(と思う)
①ナプキン
日本で1番メジャーなやつ。安いが、かさばる。昼用、夜用、多い日用、など何種類もあり、それを使い分ける。トイレに行くたびに変えなきゃいけないのも面倒だし、常に替えを持って移動しないといけないことも面倒。
②タンポン
日本だとちょっと高い。そこまでかさばらないし、装着さえしてしまえば楽だが、常に圧迫感があるのが不快。ナプキン同様、替えが必要。バックアップとしてナプキンを同時使用することも多い。
③月経カップ
再利用できる、タンポン的存在。とてもエコ。折りたたんで、膣に入れるのに慣れる必要あり。ほとんどのナプキン/タンポンが石油由来で身体には良くない一方で、これはシリコンなので安心。日本ではそこまで浸透していないが、個人的にはこれが1番。タンポン同様、ナプキンもつけてバックアップしたりする。
こんなものだった。ずっと。
しかし最近、海外でにわかに人気になってきている新しい生理用品がある。
そう、
④吸水ショーツ/Period Underwearだ。
海外で人気、という宣伝文句は毎回どうかと思うのだが、これに限っては仕方ない。
なぜなら、日本は生理や女性の性に関する分野で圧倒的に他国(ここでは主に欧米)に遅れているからだ。泣けるくらい。
日本で性や生理の話を家族や男女間でするのは未だタブー感があるし、話は少し逸れるが、低用量ピルも未だにビックリするほど浸透してない。例えばオランダの女性のピル服用率が40%なのに対して、日本はたったの4%だ。
別にピルが良いというわけではなく、何十年経っても性/生理に対する意識が変わらないことが問題なのだ。ピルが浸透しない理由としては値段が高く、処方されるまでのハードルが高いことなどがあるが、1番はピルに対する世間一般のネガティブなイメージじゃないだろうか。
私自身、数年前当時彼氏だった夫に「ピルはなんかイメージ的に嫌だ」と言われて愕然としたことがある。なんだそれは、と。
ピルは避妊したい人以外にも生理痛やPMS(月経前症候群)の軽減のためにも役立つんだ。人によって、合う合わないはあるが(私は超絶合わなかったので、口内炎が10個できたところで止めた)避妊力はすごいので、ここオランダでは親がお泊まりする娘に「ちゃんとピル飲みなさいよ」と言ったりするらしい。
さらに言うと、今欧米ではIUDという膣に直接埋め込むだけで数年間有効な避妊具が人気で、何ならピルすら時代遅れ感が出ている。オランダ人女性の15%がIUDを装着している一方で、日本では予想通り1%未満だ。まだまだサガミとかオカモトは売れる。
話が大幅に逸れた。
そうそう、吸水ショーツの話だ。こういう話なると、ついつい熱が入ってしまう。
これ、見た目は普通のパンツなのだ。
ちなみにこれは昔からある生理用パンツ“サニタリーショーツ”とは全くの別物だ。サニタリーは「ナプキン付けやすいですよ」「もし血がついても洗うの楽ですよ」という、見た目ダサめなパンツであり、別に水分を吸収してはくれない。
【吸水ショーツ】を買って、私の生理人生が変わった。それが素晴らしすぎて、この感動を伝えたいがために筆を取った。
何が素晴らしいのか。
そう、この吸水ショーツ、水分を吸ってくれるのだ。
「…吸う?」
吸水ショーツを買って、あまりの良さにテンション高めで語る私に、夫が静かに質問する(ちなみに今まで散々PMSや生理のことを包み隠さず半ば強制的に彼に伝えてきたので、夫はこういう話に全く抵抗がない。)
「え、どういうこと?水分を吸うの?」
『吸うの』
「滲みないの?」
『滲みない。消える』
「….き、消える?!」
『正確には、色だけ残してドライアウト(乾燥)する』
「え、どういうこと(2回目)水分はどこに行くの?どうやって洗濯するの?」
『洗濯は、そのまま洗濯機に入れればいい。手洗いも不要』
「それ普通に乾くの?」
『乾く。普通に乾く』
そうなのだ。ドロっと出たものも、すぐにカラッとするのだ。生理は地味に臭いが気になるが、消臭効果もすごい。結構、大丈夫。
ちなみに夫との会話が最初はビビるくらい噛み合わなかったのだが、その理由は夫が「どれくらいの血が生理で出るのかさっぱり見当がつかなかった」からだ。普通にコップ1杯の水が、バシャーって出るのかと思ってたらしい。嘘やん。それは流石に吸収できないわ。
実際はそんなことはなく、「あ…今出たな」というときでも大体5ml程度じゃないだろうか。一回の生理(3〜7日間)を通して、女性の平均が20〜140mlらしいのでそれくらいの話だ。だからすぐに乾く(参考程度にショットグラスが30mlだ)
想像してみよう。
生理期間中に(ほぼ)普通のパンツで、心地よく過ごせるのだ。
サニタリーショーツのごわつきや、ナプキンの気持ち悪さや、タンポンの圧迫感から解放されることを。最高か。最高や。生理用ナプキンのCMもびっくりの爽やかさだ。
いまいち使い方の感覚が分からないという人の為に、実際の私の使用方法を書いてみる。ちなみに量は普通〜少し多めレベルで、生理は5-6日続くタイプだ。(使用している吸水ショーツは、約40ml吸水するタイプ)
【生理1日目】
吸水ショーツ+月経カップ(または吸水ショーツのみ使用、途中で1〜2回履き替え)
【生理2日目】
吸水ショーツ+月経カップ(または吸水ショーツのみ使用、途中で1回履き替え)
【生理3〜6日目】
吸水ショーツのみ
という感じだ。
今は在宅ワークの人も多いので、替えさえあれば履き替えが一番エコだし快適だと思う。月経カップがない人は、とりあえずタンポンでもいい。
要はこの吸水ショーツ、“見えないナプキンが付いたパンツ”だと思えばいい。生理が始まりそうなときから履いていれば、朝ベッドを汚すこともない。もし勘が外れても、ナプキンのように「地味に無駄になった」がないのだ。ベッドが汚れるよりマシだが、あれはちょっとガッカリする。
ちなみに「履き替えとか、洗濯めんどくさすぎでしょ…」と思った人、これは本当に洗濯が楽なのだ。
この吸水ショーツは、多少予洗いしてからまた普通に使える。
(ちなみに調べたら日本のNagiというブランドには、なんと105mlもの水分をホールドできる商品もあるらしいので、それを履いていれば履き替えすらなくて良いかもしれない。)
この快適さ/楽さ加減が面白くて幸せで、吸水ショーツを手に入れてからというものどういうわけか私は生理が楽しみになった。
単純だが、そんなもんだ。
私が買った吸水ショーツは(吸水レイヤーの部分以外)100%コットンなのでとても快適だ。生理が始まって15年経つが、こんなことは初めてだった。
さようならナプキン、さようならありがとう。
もちろん吸水ショーツは高い。高級ランジェリーくらい高い。安いやつでも一枚4000円はする。高いやつは7000円近くする。
ただこのパンツ1枚で、毎月のナプキン/タンポンにかける出費がなくなると考えたらどうだろう。面倒だが計算してみた。
ナプキン(普通の日用)の最安をヨドバシ.comで検索したら、17枚入り約290円だった。1枚17円として、20枚を1回の生理分(3〜7日分)で使うとすると、年間17x20x12カ月=4080円だ。
値段だけ考えても、1年ほどで元が取れる。お得だ。しかも300倍心地いい。ちなみに吸水ショーツの寿命はメーカーによるが、2〜5年と言われている。個人的には2年で捨てる理由はないと思うが。下着って捨て時が分からないよね。
吸水ショーツには国内外数多くのブランドがあるが、世界で一番有名なブランドはおそらくNY発のTHINXだろう。ちなみに同じ会社で、ティーンやトゥエーン(=10代前半の子)向けの、姉妹ブランドもある。種類も多いし、海外ぽいデザインが好きな人には良いかもしれない。
個人的には、吸水ショーツは4枚以上あると便利だと思う。こだわる人は(多少履き心地も違うと思うので)日によって吸水力が違うものを選ぶのが良いと思うが、面倒だったら私のように全部吸水力高めなやつを買って毎日同じものを履けばいい。
ついでに、私と同じように感動しているWIREDの記事があったので紹介したい。吸水ショーツのことを調べ始めて、多くの女性が本気で感動しているのを沢山読んできた。英語だが、興味があればGoogleの自動翻訳かDeepLを使って読んでみてほしい。人生が変わったんだってよ。
WIRED「生理用パンツによって人生が変わった。もう戻れない。」
*
最後の昭和生まれの私は、母親が誰にも見られないところに生理用品を隠していたのを見て育った。生理というのは声を小さくしてヒソヒソ話すものだと無言で教えられてきた。1度、自分の部屋のピアノの上にナプキンを無造作に置いていた時に、母親がそれを発見して慌てて「こんなところに置かん!恥ずかしい…」という反応をしたことがある。なかなか強烈だったので、実際の一語一句は忘れているが、その光景はよく覚えている。よく分からないが、すごく恥ずかしかった。
そんな私も母になった。娘はまだ1歳だが、十数年経って彼女に初めて生理が訪れた際は、赤飯は炊かずとも子供用のおしゃれな吸水ショーツをプレゼントしたい。君はいい時代に生まれたぞ、こいつは快適だぞ、と言いながらプレゼントボックスに入れて渡すのだ。小学生や中学生の時は、個室でナプキンの袋を破る音が響くのが恥ずかしくて嫌だったりする。もしかしたらその助けになるかもしれない。
今でも日本の女性にとって、生理は隠すものだという精神は根強い。彼氏の家に泊まって、使用済みナプキンを捨てれずにそのまま持ち帰った経験はないだろうか。当たり前だが男性はそんなこと知らない。誰も教えてくれないからだ。
義家に行くときも同じだ。関係性にもよるが、多くの女性が使用済みナプキンを人知れず持ち帰っているのではないだろうか。生理中に出るゴミは、簡単に捨てれないのだ。くさいのに。捨てたいのに。赤ちゃんのオムツのように「いいよ〜ゴミ箱捨てといて!」という言葉を、ナプキンには期待できない。
そんなときに、吸水ショーツなのだ。
世間の意識や環境を変えるには時間がかかるとしても、5000円払えばこの「ナプキンどこに捨てよう…」のストレスはとりあえず解消するのだ。本当に、おすすめする。
もちろん吸水ショーツを履いたからといって、生理痛や眠気、だるさがなくなるわけではない。そりゃそうだが、ストレスが減るのに越したことはない。
一生のうち6年9カ月も股から血を流し続ける生理という存在は、それだけでストレスなのだ。
そういうわけなので。
とりあえず、皆も吸水ショーツを手に入れよう。
いったん、ね。
とってもハッピーになるかもしれないし、ちょっとハッピーになるかもしれない。ハッピーにならなくても、まぁあって困ることはないか、ってなるかもしれない。
参考までに日本で買える吸水ショーツのブランドを紹介する。
【あとがき】
急に書こうと思い立って、8時間くらい集中して書いてしまった。私は何を。でも誰かがこれを読んで、「買ってみるか」「嫁にプレゼントしてみるか」と思ってくれたら嬉しい。多分、後悔はしないと思う。したらごめん。
ちなみに私が買ったのは、オランダの極小スタートアップ企業 Coolieaの吸水ショーツだ。ウェブサイトのデザインや写真はひどいが、対応は早くて真面目で熱意があって、何よりTHINXとほぼ同等の吸水量(40ml)を誇るのに安いのだ。69ユーロの4枚セットを買えば、1枚2250円。ありがたい。デザインは可愛くないが、履き心地は最高だ。
ちなみにこの吸水ショーツ、産後にも使えるし、海外のユーザーレビューを読んでいると尿もれに悩む高齢女性にも人気があるらしい。大人用おむつがプライドの問題で無理な女性にも良いのではないか。最近うちの祖母がオムツが必要になりはじめたと聞いてびっくりしたが、このパンツはもしかしたら役に立てるかもしれない。
そんなことを思いながら、今日も吸水パンツを履く。
よっこらしょ。
(おわり)
【本記事は2021年4月17日公開のnote「あれほど嫌いだった生理が楽しみになった話」を一部編集し、転載したものです】