生理の経血量が少ない場合、女性ホルモンバランスや子宮の形の異常などの可能性があります。しかし、無排卵周期症や甲状腺機能異常などの可能性もあり、放置していると妊娠しにくいこともあります。ここでは、正常な生理の量や過少月経の症状、原因を説明します。
正常な生理日数、経血量
正常な生理は日数が8日以下で、出血量は1周期あたり総出血量が20~140mLとされています。思春期や更年期の女性の場合はホルモンバランスが揺らぎやすく、正常範囲内に収まらないこともあります。
しかし、生理が安定している20~30代の女性で、生理の出血量が20ml以下の場合は「過少月経」の可能性があります。目安としては、ナプキンが必要ないくらい出血量が少ない状態です。
また、これまでは生理の期間や出血量が正常範囲だったのに、急に短くなったりした場合は注意が必要です。
過少月経の原因について
過少月経は、以下のような原因が考えられます。
- 女性ホルモンバランスの乱れ
- 無排卵周期症
- 黄体機能不全
- 甲状腺機能異常
- 婦人科系の疾患(子宮の奇形、内膜異常など)
- 妊娠による着床出血
女性ホルモンバランスの乱れ
過度なダイエットやストレス、睡眠不足などによって、正常に女性ホルモンが分泌されなくなり、月経不順・不正出血・過少月経になることがあります。
無排卵周期症
無排卵性周期症は、月経のような出血はあるものの排卵を伴っていない状態のことです。月経周期が不順で、月経期間が短くなり出血量が少ないこともあります。
黄体機能不全
黄体機能不全とは、女性ホルモンの分泌不全により排卵後も子宮内膜が変化しなかったり、完全に剥がれ落ちずにダラダラと出血が続いたり不正出血がでる状態です。
甲状腺機能異常
甲状腺の機能異常がありホルモンバランスが崩れている状態です。月経異常や不妊、流産・早産の原因になることもあります。
婦人科系の疾患(子宮の奇形、内膜の異常など)
先天的な子宮の奇形や子宮内膜の異常があると、女性ホルモンの分泌が行われているのに子宮内膜が厚くならず、生理日数が短くなったり出血量が減ったりすることもあります。子宮の奇形については「子宮の奇形と月経不順や重い生理痛など」の記事でくわしく説明しています。
妊娠による着床出血
生理予定日の1週間前から生理予定日ころに、少量の出血が数日あった場合、着床出血の可能性があります。着床出血かどうかの自己判断は難しいため、妊娠の可能性がある場合は、生理予定日1週間後以降に妊娠検査薬で調べたり、産婦人科を受診したりして確認してみましょう。
過少月経の治療法や対処法
生理の出血が少ないからといって必ず治療が必要とは限りません。しかし、原因によっては治療が必要です。女性ホルモンバランスの乱れが原因の場合は、女性ホルモン剤の投与や低用量ピルなどの治療が行われます。
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生理の経血量が少ないと、生理の不快感が少なくていいと思う人もいるかもしれません。ただ、なにかしらの病気が原因の可能性もあります。更年期ではないのに、急に経血量が少ない生理が続く場合は婦人科で相談するようにしてください。
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。