「子宮発育不全」は正確な病名ではなく通称です。子宮発育不全の原因は先天性と後天性があります。今回は子宮の形の異常症状や原因、治療法について解説していきます。
子宮の形の異常の症状
いわゆる「子宮発育不全」は、先天性(生まれつき)のものと後天性(生まれたあと)のものがあります。
先天性の子宮発育不全は、子宮奇形や子宮低形成とよばれます(*)。子宮の形が正常とは違っていたり、膣や機能できる子宮そのものがなかったりする状態です。
*子宮奇形は医学用語では子宮形態異常と言います。
後天性の「子宮発育不全」は、子宮の大きさが同年齢と比較して小さい状態のことをいいます。
先天性か後天性かに関わらず、自覚症状はないことが多いです。症状が出る場合は以下のような症状が出ることがあります。
- 無月経
- 過少月経
- 月経不順
- 激しい生理痛
- 流産/早産を繰り返す
子宮の形の異常となる原因
子宮の形の異常となる原因は、先天性か後天性かで異なります。
先天性の原因
子宮は、お母さんのお腹の中にいるとき(胎児期)に形成されます。その際に何らかの問題があると、子宮が正常に発達せず先天性の子宮発育不全になることがあります。正常な子宮と形が違うことから、子宮奇形とも呼ばれます。
先天性の子宮奇形は、子宮の形によって以下のような種類があります。
1.重複子宮
重複子宮とは、子宮が左右に2つずつある状態のことです。子宮内が狭いため着床しにくく流産しやすかったり、出産が難しくなったりすることがあります。しかし、重複子宮であっても妊娠・出産をしている人もいます。
2.双角子宮
双角子宮とは、子宮の入口がふたつあったり子宮がハート型になっていたりする状態のことです。あまり症状が出ないことが多いといわれています。
3.中隔子宮
子宮内に壁があり、分断されている状態のことです。不育症と呼ばれる方に多く見られる子宮奇形の形です。双角子宮と形は似ていますが原因は異なります。
4.弓状子宮
弓状子宮は子宮が少しくぼんでいる状態のことです。子宮発育不全の中では軽症で、妊娠や妊娠継続にはあまり影響がないといわれています。
5.単角子宮
単角子宮とは子宮が半分しかない状態のことです。正常な子宮より狭いため、流産のリスクが高まるといわれています。
後天性の原因
後天性の原因では、以下のような理由で女性ホルモンが低下することにより起こると考えられています。
- 思春期以降で卵巣が正常に機能しない期間が長かった
- 過度なストレスやダイエットなどで女性ホルモンが十分に産生されない
- 抗がん剤の使用
- 膠原病や自己免疫疾患などに伴う早発閉経、など
子宮発育不全の治療法
先天性の子宮奇形の場合、状態によっては手術によって妊娠が成立しやすくなったり、妊娠継続率が上がったりすることがあります。ただし、状態によっては必ずしも手術ができるわけではないので、婦人科を受診して医師に相談しましょう。
後天性の場合は女性ホルモンの産生量が少ないことが原因であるため、ホルモン治療などを検討します。
子宮の形は人それぞれ
「子宮の形が正常ではない」と聞くと驚きますが、人それぞれ子宮の形は違うため、症状がなければあまり心配はいりません。
ただし、妊娠・出産に子宮の形が大きく影響することもあります。そのため、生理がこなかったり、生理の痛みが強い・出血が多いときは産婦人科の医師と相談するようにしましょう。
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。