「IUS」(ミレーナ)は、女性ホルモンである黄体ホルモンの放出機能のついた子宮内避妊器具です。避妊だけでなく、過多月経や月経困難症の治療にも使用されます。
海外ではユーザーが増えてきているIUSですが、日本ではまだまだ認知度がが低いため、IUSのことをくわしく知らない人がほとんどです。この記事では、IUSの避妊効果、使用するメリットや費用、注意点についてお伝えします。
IUS(ミレーナ)とは
IUSはIntra Uterine Systemの略であり、子宮内に入れておくことで黄体ホルモンを放出し、主に子宮内に作用する器具です。
IUSから放出される黄体ホルモンは子宮内膜の増殖を抑える働きがあるため、子宮内膜が厚くなりにくくなります。そのため、生理の量が減り、生理痛を軽くする効果があります。
また、子宮入り口の粘液を変化させる働きがあり、腟内から子宮内への精子の侵入を防ぐことで避妊効果を発揮します。
IUS(ミレーナ)を使用するメリット
IUSを使用するメリットは、以下の5つです。
1.避妊効果が高い
IUS(ミレーナ)の避妊効果は99.9%と非常に高く、その効果は5年間持続します。
2.月経困難症や過多月経を緩和できる
IUSには子宮内膜が厚くなるのを抑える効果があるため、生理の出血量が減り月経困難症や過多月経の症状が改善します。
日本や海外のガイドラインで、IUSは過多月経の治療法としてすすめられており、世界約130カ国、延べ約3,900万人の女性が使用しています(※ミレーナのHPより)
3.女性主体の避妊ができる
IUSは女性主体の避妊方法です。一方、コンドームは男性主体なので、相手が避妊への意識が低い場合にリスクがあります。またコンドームは破れたり外れたりして避妊に失敗するケースもあります。
4.ピルを服用できない人が、IUSは使用できることもある
IUSは、ピルを服用できない人も使用できる場合があります。ピルには血栓症のリスクがあるため、40歳以上の方、肥満体質、喫煙している方はピルを内服できないことがありますが、こうした方々でもIUSの装着は可能です。
5.避妊効果が長いので、長期的に見ると経済的
施設によって違いますが、IUS(ミレーナ)を装着する費用はおよそ4万円前後です。月経困難症や過多月経の治療で装着する場合は、保険が適用され、3割負担となるため約1万2,000円になります。
生理が重い人や、長期で避妊を希望する人、医師やアスリートなど生理が負担になる職業の人にとっては、ピルを服用し続けるよりコストがかからず重宝されています。
また、IUSと同じように子宮内に装着する避妊器具として、「IUD(避妊リング)」があります。IUDは効果が避妊のみのため、生理痛が重い、月経困難症の症状があるという人は、IUSを選んだ方がよいでしょう。
IUSとIUDの違いをくわしく知りたい人は、「IUS(ミレーナ)とIUDの違いを比較。避妊効果や生理痛の改善、費用は?(医師監修)」の記事をチェックしてください。
IUSを装着するときの注意点
出産経験がなくてもIUSの装着はできますが、痛みを感じる場合があります。
また、以下に当てはまる方は、IUSを挿入できない可能性があります。くわしくは婦人科の医師に相談してください。
・子宮筋腫
・子宮内膜症
・子宮の形がIUSに適さない
・妊娠している可能性がある
なお、IUSはHIV感染(エイズ)や性感染症を防ぐ効果はないので、これらを防ぐためには、性交渉の際にコンドームを使用しましょう。
IUS(ミレーナ)装着の流れ、費用、取り出す場合
IUS(ミレーナ)を装着する際は、婦人科で医師に相談しましょう。
病院やクリニックにより金額は異なりますが、挿入時にかかる費用はおよそ4万円です。
(月経困難症や過多月経の治療の場合は、保険適用となり3割負担の場合で約1万2,000円です)
IUS(ミレーナ)は、妊娠していないことが確実である「生理が始まって7日以内」に挿入することが勧められています。生理の量が多い1~3日目に入れると、出血と一緒に出てきてしまうリスクがあるため、生理が終わる頃(4~7日目)の装着がお勧めです。
そのため、ミレーナの挿入を希望される方は、生理が始まる前に産婦人科へ連絡し、挿入するタイミングについて医師と相談するといいでしょう。
クリニックによってタイミングは異なりますが、IUS(ミレーナ)の挿入位置が正しいかを確認するために、挿入後の1カ月後、3カ月後、6カ月後、1年後にエコー検査をおこない、その後は毎年1回の定期検診を受ける必要があります。
妊活をする場合は、IUS(ミレーナ)を取り出せば避妊効果はなくなります。取り出す場合は医師に相談してください。取り出す費用は1~2万円ほどかかります。
IUS(ミレーナ)の副作用
IUSを入れて数日間は出血、下腹部痛、腰痛などの症状が続くことがあります。装着して数カ月間は、不正出血(少量の出血)を何度か経験する方もいらっしゃいます。個人差があり1カ月ほどでおさまる人もいれば、半年くらいの間、何度か出血がある人もいます。
ごくまれに起こりうる副作用としては、骨盤腹膜炎、子宮外妊娠、子宮穿孔などがあります。IUSを装着する際は、医師からの注意事項をきちんと確認しましょう。
IUSは過多月経や月経困難症の治療にも用いられることがあり、避妊効果が高い女性主体の避妊方法です。一方で、装着後の不正出血などの副作用も少なからずあることを知っておきましょう。
生理痛や生理の量が多くて悩んでいる方、確実な避妊法を探している方は、IUSについて婦人科の医師に相談してみてください。
(本記事は2019年8月5日に公開した記事に情報を追記し、改訂したものです)
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。