はじめに
私は医師の資格を持っていますがあくまで専門は内科であり、この記事に書いてあることは一個人の体験談とその感想にすぎないことを申しあげておきます。
かれこれ20年程度生理とは付き合いがあったのですが、このたびお別れしたのでレポを書いておきます。
きっかけは出産です。授乳期間も含めると1年程度は生理がストップしていました。
私は母乳ではなくほぼミルクで娘を育てたので、産後2カ月くらいで生理が再開しました。初回は久しぶりの再開ということもあって、おお、こんな感じだった、と妙な懐かしさすら覚えたのですが、問題は2回目以降でした。
思春期の頃から生理痛が強く、鎮痛剤が手放せない生活を送っていました。初日や2日目は鎮痛剤を3回は内服しないとまともに勉強できず、仕事が始まってからはもっと頻繁に内服するようになりました。
痛みに耐えながらやるには医者の仕事はきつすぎたので、必然的に鎮痛剤の量は増えていきました。仕事中は痛みをなるべく感じたくないので、効果が切れる前に追加で内服をしておく有様でした。
生理痛はなんとか抑え込めても、眠気を吹き飛ばすために鎮痛剤をコーヒーで流し込んでいたせいで胃がしくしくと痛み、これは絶対に体に悪いよなあと思いながらも辞められない、私の生理痛との付き合いはそんな感じでした。
そして産後、明らかに生理は重くなりました。子どもを産んだら軽くなる人もいるよと聞いていたので、そして、産後初回の生理は生理痛がほとんどなかったため、2回目以降の生理の重さにはがっかりしました。
出血量も増え、貧血の症状は重く、生理が終わった後も疲れが残ってぐったりしているような状態でした。数えてみると、1カ月のうち10日くらい、つまり人生の1/3くらいは生理のせいで体調が悪いことに気づきました。
初潮を迎えてから妊娠するまでは生理となあなあで付き合えていたのですが、1年ほど顔を合わせていないうちに、私はその不快さに耐えられなくなっていたのです。正気に戻ったと言えるかもしれません。
いざ産婦人科へ
とはいえ産後は色々と忙しく、婦人科を受診したのは娘が1歳になった頃でした。
まずは子宮と卵巣にがんや、感染症などの病気がないかどうかの検査を受けて、それらをクリアすればミレーナの挿入が可能となります。(参考記事:ミレーナって何?)
医師の考え方も色々なので、私が受診した際には選択肢としてピルを提示されました。日本ではまだミレーナの症例数が少なく、慣れていない病院ではピルなどの選択肢をかなり強めに提示される可能性もあります。
もちろん、ピルにはピルの良さがあると思います(専門領域ではないため詳しい言及は避けます)。(参考記事:ピルの基礎知識)
抱えている症状や疾患によってもメリットやデメリットがあると思うので、信頼できる医師とよく話し合うのが望ましいです。私は以前、旅行と生理期間が被りそうだった時にピルを服用し、嘔気が強かったこと、また、血栓リスクが高まることからピルは希望しない旨を伝え、医師もあっさり納得してくれました。
月経困難症や過多月経の診断がついていればミレーナが保険適応となり、負担は1万円程度で済みます。他に検査や診察もあるので、トータルの負担はもう少し増えるのですが…。ただ、ピルを飲み続ける場合、1年間で3万円程度の負担になるそうなので、一旦挿入すれば5年間は効果が続くとされるミレーナの方が圧倒的に安く済みます。
ミレーナには避妊作用もあります。避妊目的での挿入は保険適応にはならず、自己負担は3万円程度だそうです。私には娘がひとりいるのですが、もうひとり子どもを産んでから挿れた方が良いのではないか等、余計なお節介をされたら徹底抗戦するつもりでしたが、その点については特に触れられず、ほっとしました。いずれにせよ、妊娠を希望すればミレーナは簡単に抜去することができるので、その点も安心です。
いざ挿入
痛みがどの程度あるのかについては、事前にGoogleで調べておきました。経腟分娩の経験者はあまり痛みを感じずに済むという情報が圧倒的に多かったので、心を強く持って病院に向かいました。
結論としては、鈍痛程度で大したことはなかったです(痛みに対する耐性や医師の手技による個人差があると思います)。子宮頸癌検診で感じる程度の痛みとそう変わりはなく、処置自体も内診台にあがってから15分もかからなかったと思います。
鎮痛剤と抗生剤を処方されて帰宅しました。痛みが強くふらふらになりながら帰宅したという情報もあったので恐怖していたのですが、幸いにして、すたすた歩いて帰ることができました。
ちなみに、会計に呼ばれてみたらミレーナの代金が自費扱いになっており、保険適応のはずだが…と指摘して無事修正してもらえました(悪意によるものではなく、単純に間違えただけだったようです)。病院側のミスですが、損をするのはこちらなので、しっかり確認しましょう。
薔薇色の生活
ミレーナを挿入したのは生理2日目だったのですが、初回の生理から効き目を感じました。出血量が明らかに少なく、早速恩恵に預かることができました。ミレーナ最高!と思いつつ、挿入による鈍痛は感じていたので、鎮痛剤を飲みながら生活していました。
もともと生理痛がひどい方だったからか、気になる痛みではありませんでしたが、人によっては辛く感じるかもしれません。この痛みは段々と弱くなり、1カ月以内には消失しました。
ミレーナ挿入後に認める不正出血ですが、これは確かに鬱陶しいです。生理5日目くらいの出血がだらだらと続きます。中途半端な出血なのになかなか止まらず、一時的にナプキン代がかさみます。
鬱陶しい不正出血も、数カ月で消失するケースが多いようです。現在挿入後3カ月程度が経過しているのですが、出血量が明らかに減ってきているのが分かります。
PMSには効果がないとされるミレーナですが、私個人としてはメンタル面でも恩恵を受けています。
生理前の鈍痛を合図に、これから1週間は身体が使い物にならなくなるなというあの嫌な予感がなくなりました。貧血による動悸、厚いナプキンを着けている不快感、血液が漏れていないか常に心配で着たい服も着られない、そういう有象無象から解放されるのは最高です。
自分の身体がいつでも思い通りに動くのって素晴らしい。痛みを我慢しなくて済むなんて素晴らしい。こんなことなら早く挿れておけば良かった、今の気持ちはそれに尽きます。
生理で消耗する必要はあるの?
男女平等が叫ばれる時代に、女性だけが生理という巨大なハンデを背負って生きていくのは明らかに理不尽です。
痛みが強かったり、出血量が多い女性は、まず婦人科を受診することをお勧めします。私もこの歳になるまで知らなかったのですが、鎮痛剤を内服しないとやりすごせないような生理痛というのは異常だそうです。実際、私も婦人科を受診して初めて、自分が婦人科疾患を複数抱えていることを知りました。
ミレーナ挿入に抵抗がある方には、ピルという選択肢もあります。実際、私の友人にも月経困難症や過多月経でピルを内服している女性はたくさんいます。
生理で体調を崩すのは当たり前で、それをなんとか隠すために鎮痛剤を飲んで誤魔化してきました。でも、そういう時代はだいぶ前に終わっていたようです。あなたの痛みは婦人科を受診すれば解決するかもしれません。
私は30歳を過ぎて初めてピルやミレーナについて真剣に検討しました。望まない妊娠のリスクを下げるため、生理中もパフォーマンスを落とさずに済むために、もっと若い世代にもピルやミレーナの存在について知ってほしいと思います。
本記事は、2020年5月21日note掲載記事を一部改変し転載したものです