2021年に新語・流行語大賞にノミネートされた「フェムテック」。

トレンドだけに止まらず、女性の健康とウェルビーングを追求し、世界中で研究や新たな製品の開発が進められています。

2022年10月に六本木アカデミーヒルズで開催された、今年で3回目の開催となる「Femtech Fes!(フェムテックフェス)」をレポートします。

当イベントでは「月経」「妊活・不妊」「避妊」「妊娠」「産後」「婦人科疾患」「更年期」「尿漏れ」「セクシャルウェルネス」「メンタルヘルス」「その他ウェルネス」の分野で、世界中から200以上のプロダクトやサービスが紹介されていました。

過去開催時よりも規模も広がり、フェムテック市場の進化がうかがえました。

同イベントで実施されたトークイベントには、ファウンダーや起業家、産婦人科医、タレントなどが登壇。

フェムテック市場の最新動向やPMSとの向き合い方、更年期のメンタルケアなどのセッションが行われ、世界各国から集まった各分野のエキスパートたちと一緒に、ウェルネスを考える時間となりました。

オーガズム研究にまつわるトークセッションに参加!

筆者は、16日に開催されたトークセッション「最新セクシャルウェルネス事情 – 『Lioness』ファウンダーが語るオーガズム研究の最先端!」に参加。

同セッションでは、センサーでオーガズムを可視化するスマートバイブレーターを開発する「Lioness(ライオネス)」の共同設立者兼エンジニアリング責任者のAnna LeeさんとSexTech Analystの片山 晴菜さんが、女性のオーガズム研究の現状や、データをもとに見るオーガズムと心身の関係をテーマにディスカッション。

グラフでオーガズムを可視化。波形で性的興奮や快感がデバイスに記録できる。

ライオネスは、デバイスと連動して使用できる世界初のスマートバイブレーター。骨盤底筋と膣の収縮を計測し、オーガズムまでの動きをグラフ化して見ることができます。

目に見えない筋肉の動きまでバイブレーターがキャッチし、環境や時間、条件など、自分がより心地よいと感じるオーガズムのポイントを見つけられるのが大きな特徴です。

個人の体験だけでなく、医師や研究者と協力し、医療の分野でもデータが生かされているといいます。

他者の目線を通してオーガズムを考えることは多いものの、自分自身の性的な快感やセクシャルウェルネスを考える機会は少ない。

「実際にオーガズムのデータや自分の体の声を聞くことが自信につながる。オーガズムやセルフプレジャーの行為のあと、テクノロジーの力を使って自動的にデータをトラッキングし、記録することが自分の経験をよりよいものにするための糸口となると考えている」とAnnさんは話します。

「オーガズムってクールでしょ!」と話す、Ann Leeさん。

また、スマートバイブレーターは、パートナー同士のコミュニケーションのきっかけにもなるといいます。

例えば、「前戯にこのくらいの時間をかけると、オーガズムに到達できる可能性が高い」と、パートナーにスマートバイブレーターのデータ波形を根拠として見せながら語らうことで、2人でより良いエクスペリエンスを探ることができます。

実際にカップルのどちらかがバイブレーターを所有し、もう1人のパートナーがその存在を知っている、つまりバイブレーターの存在がお互いの共通認識となっているカップルは、そうでないカップルに比べて性的な満足度が高いという研究結果もあるそうです。

片山さんからは、女性のオーガズムにまつわるデータ収集の難しさについて言及がありました。

そもそも他の分野と比べて資金提供が少ない上に、男性の性機能に関するデータと比べて、女性、膣を持っている人の性機能に関するデータへのアクセスが難しい状況があります。

1982年に発表された11人の女性によるデータを、いまだに女性のオーガズムの代表として参照されることもあるそうです。

こういった現状からオーガズムの研究に貢献したい女性や膣を持つ人が多く存在し、ライオネスがセックストイの機能を超えたムーブメントを作っていることに、片山さんはおもしろさを見出していました。

大学院のエッセイで取り上げるほど、ライオネスが大好きな片山晴菜さん。

また、オーガズムと体の関係性について、Annさんが実際にライオネスを通じて起こったケースを紹介。

性体験の向上のため、長年ライオネスを愛用する女性アスリートの方が、ある日、オーガズムの波形がいつもと大きく変わっていることに気づいたそう。

そのときは、「バイブレータが壊れたんだ」と思っていたそうですが、病院で検査してみると実はスポーツしている間に脳しんとうを起こし、体がダメージを受けていた。

男性の性機能に関する研究は進んでいるため、たとえば勃起障害で医師に相談すると、心臓病を疑う医師が多い。それは、医学的に心臓病と勃起障害の関係性が証明されているからです。

一方で、女性のデータは圧倒的に少なく、体と性機能のわかりやすい因果関係が証明されていません。Annさんは、セクシャルパフォーマンスや体験の向上のためだけでなく、セクシャルデータから体全体の異常などを発見する糸口にもなりえると、データの重要性についても話していました。

また、人種や国によって性体験は違い、研究に必要なものも変わってくる。

Annさんは、こうした現状から、「今後のセックステック領域に対し、リサーチのサンプルにもダイバーシティとイノベーションを期待したい。サンプルの情報がより豊富でリッチになることが大切だ」といいます。

さらに、閉経後のライフスタイルが変わったり、自分の体を再発見している最中の50代以上の女性に向けて、必要な情報やソリューションの提供をしていきたい、と今後の展望を話し、セッションが締めくくられました。

世界各国のフェムテックプロダクトを紹介

200を超えるプロダクトを見ていると、女性のライフスタイルにおける課題が見えてきます。フェムテックフェスに集まったプロダクトのなかから、気になるアイテムをピックアップして紹介します。

Aquavit – Aquavit(イスラエル)

イスラエル発のアクアフィットは、女性のためのセクシャルウェルネスプロダクト&AIセルフケアサービスです。

ダイレーターといえば、シリコンで作られたものが一般的ですが、アクアフィットのダイレーターは、特殊特許を取得したジェルで作られており、挿入の痛みをやわらげます。

また、ウェブスペースを開放し、自身のセクシャルウェルネスに関するデータを記録することが可能です。

Careife – Careife(日本)

チームリーダーを務める前田瑞歩さんが、自身が受けた性被害の経験から「もう誰も、こんな思いをしてほしくない」という想いから開発が進められている歩行用ドライブレコーダー。

キーホルダーのようにカバンに装着できるカメラで撮影し、映像で証拠を残すことができます。咄嗟の出来事で声を上げられなかったり、証拠がなく泣き寝入りするしかない現状に目を向けたアイテムです。

IUB(Intra Uterine Ball) – OCON Healthcare(イスラエル)

子宮内に装着する、3次元スマートドラッグデリバリーデバイスのIUB。立体的な膣に対し、従来のT字型子宮内避妊器具ではフィットしにくい可能性も。

一方でIUBはテグスのような糸に小さなボールが通った避妊ボールで、膣のサイズに合わせて立体的な形を作ることができます。近日中に日本に上陸予定。

Loness Vibrator 2.0 – Lioness(アメリカ合衆国)

トークイベントにも参加した、ライオネスのスマートバイブレータ。

バイブレータとデバイスを連携し、性的な興奮やオーガズムをグラフとして可視化することができます。

オーガズムは、コーヒーを飲んだ量や、アルコールの摂取によって、性的な興奮の感じ方も変わります。データによる記録が、よりよい体験の探求の助けとなるでしょう。

Vee Starter Kit – Freya(アメリカ合衆国)

あまりにも「バイブレータ」っぽい形をしたプレジャーアイテムを部屋に置くのに、抵抗がある方もいるのでは?

 Vee Starter Kitは、カミソリとバイブレータが一体となったハンドル付きカミソリ。カミソリを取り外して、6つの振動モードを搭載したバイブデータとして使用できます。女性のセルフプレジャーやオーガズムに対するタブー視を払拭し、個々の人生経験を通じた美しくパワフルな自己表現をサポートします。

PlusOne – Beacon Wellness Brands(アメリカ合衆国)

手軽な値段で初心者向けのトイを展開する同ブランド。中でも、ヒダがバタバタと羽ばたくこのトイはクリトリスをやさしく刺激することで、パートナーからのオーラルプレジャーの感覚を模しているそうです。

Recycled Swimwear One Piece – Modibody Pty Ltd(オーストラリア)

吸水機能が備わった、ワンピース型のスイムウェア。一見、通常のスイムウェアと同じようなデザイン。

サステナブルを意識し、使い捨ての選択肢を減らせます。

Teena – Vally Electrronics GmbH(ドイツ連邦共和国)

ティーンエージャーのために設計された、世界初の生理を記録するデバイス&アプリ。

Z世代が楽しく生理の準備ができるよう周期の管理ツールなどを備え、女の子たちが自分の体と心のつながりを実感できるような、よりよいツールを目指しています。

Embr Wave – Embr Labs(アメリカ合衆国)

2025年には更年期を迎える女性が世界で11億2,000人と言われています。

Embr Waveは、更年期によるホットフラッシュなどの症状をやわらげるため、温度調整を行うデバイスです。腕時計を着けるように手首に装着し、自分が心地いいと感じる体感温度に合わせて、冷感・温感を調整することができます。ホルモン剤を使わずに即効性を実現したアイテムです。

Anti-Flush Shor Sleeved T-shirt – Become(イギリス)

皮膚の表面から汗の水分を吸収し、暑くなったら熱を放出する特許取得済みの衣類。更年期による、寝汗やホットフラッシュに悩む女性をサポートします。汗が引いたあとは肌を温めて、冷え対策ができます。ニオイを抑え、毎日を過ごしやすくするアンダーウェアです。

女性の課題を可視化し、解決に導くフェムテック

年齢やライフステージによって、ライフスタイルの変化や体の悩みはさまざま。

プロダクトのひとつひとつを見ていると、世界にある女性の体と心にまつわる多くの課題が見えてきます。

ティーンエイジャーに向けられたものから、更年期の症状を和らげるものまで紹介されているアイテムと出会うことで、「これからこんな症状が起きるかもしれない」「あのとき、このアイテムがあればよかったな」と、自分の体と向き合うきっかけとなりました。

女性の活躍が推進される現代で、心地よく毎日を過ごすためにサポートするフェムテック。

吸水ショーツをはじめ、フェムテックが日常に浸透しはじめていますが、今回のトークイベントでオーガズムが単なる快楽だけに止まらないことを知り、自分の体と心の健康の可能性をポジティブに考えられるようになりました。

タブー視されがちな女性のセクシャルウェルネスの追求を開放してくれる本イベントは、自分の心地よさを安心して見つめ直す空間でした。

日々を生活しているなかで抱いた違和感を当たり前にせず、そのモヤモヤの正体を探ることが自身の心と体の健康につながることを改めて認識しました。

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