
今、フェムテック領域で注目を集めているのが、「尿もれ」にまつわるケアです。アメリカの研究では50歳以上の女性の50%以上がこの課題を抱えていても未治療の状態であると言われています。
今回は、タブー視され、女性が我慢していた「尿もれ」の領域に切り込むフェムテック企業を紹介します。
尿もれのケアとは?
フェムテックが取り扱う女性の性と生殖の健康領域は、ニッチだと思われていた課題に光を当てて、ニッチではないことを明らかにしていきます。
尿もれにまつわる課題は、50歳以上の女性の50%以上が抱える悩みと言われていますが、19歳から44歳の女性の13%が心因性頻尿と呼ばれる症状を発症していると米医療系メディア大手Healthlineは発表しています。また出産後の骨盤底筋のダメージで尿もれに悩む女性も多いと言われています。
尿もれは「ニッチ」ではなく多くの女性が抱える課題であり、「タブー」ではなく生理や更年期同様に語り合いたい人同士が語り合って我慢せず解決していくものでしょう。
尿もれに特化したスタートアップ
28歳の若きCEOのPeony Liは尿もれケアに特化したスタートアップ「Jude」を立ち上げました。
Judeが拠点を置くイギリスでは女性の3人に1人、1400万人が悩みを抱える問題です。Judeは「イギリス最大のタブーの1つを打ち破り、膀胱ケアをオープンに話せるようしたい」と訴えます。
多くのフェムテックブランドと同じく、資金調達のための投資家への説明で男性からの共感が得られず苦戦したそうですが、40〜60歳の「見えない顧客層」が存在していることを示し200万ポンドを調達。急成長する女性の健康市場でタブーを打ち破ることを使命として、革新的で手頃なソリューションの開発を進めています。

問題提起するインパクト大の広告
フェムテックの代表的ブランドであるElvieは、女性の尿もれにまつわるタブーに問題提起する屋外広告を発表しました。
Elvie社のゲーム感覚で骨盤底筋を鍛えるトレーニングデバイス「エルビートレーナー」のPR広告は、ロンドンの街角で通行人に「おしっこ」を模した水をかける演出がされています。
強烈なインパクトのこの広告は、とあるバズ動画から着想を得て作られました。
SNSで女性のインフルエンサーがダンベルを持ち上げている際に失禁した動画がバズり、数多くの偏見に満ちたコメントがつけられました。
それを見たElvieの最高マーケティング責任者は「悩みを抱える女性たちが共有を恐れて正しいケアに辿り着けなくなるのではないか?」という問題意識を感じたそうです。
モデルには尿路結石症を抱える28歳の2児の母のフィットネスインストラクターのMegan Burnsが起用されています。
今回の広告では、あえてショッキングな表現をすることで、タブー視していた事実を明らかにしてオープンに話すことを促しています。
語り合うために
尿もれにまつわる課題は、女性特有の課題と高齢者の課題のグラデーション上にあります。
最近の吸水ショーツブランドは、生理だけではなく産後の悪露や尿もれに対応しているものも増えてきています。
以下の医師監修の記事にある通り、泌尿器科やウロギネ科(女性泌尿器科)などを受診する選択肢があることはもっと知られたほうがいいのではないでしょうか。
治療可能な場合もある問題を「恥」と捉えて我慢するのはQOL (クオリティ オブ ライフ)を損ねることにつながり、残念なことです。
参考記事:
骨盤底筋が弱まると尿もれしやすい?弱まる原因とトレーニング(医師監修)
尿もれの原因や対処法について。女性の2人に1人は尿もれを経験(医師監修)
デリケートな問題なのでオープンに語りたくない人がいて当然ですが、ケアの選択肢があることが「当たり前のこと」として周知される世の中になっていくことを願います。