2021秋、ファンケルは生理を迎える子どもたちの不安をサポートするとして、ジュニア向け吸水ショーツ「ジュニアプロテクション サニタリーショーツ」を発売した。

2022年2月には尿もれに悩む女性に向けた「デイリー吸水ショーツ」を販売し、同商品は完売した。

化粧品や健康食品などを手がける株式会社ファンケルが吸水ショーツを発売した狙いはどこにあるのか。新規事業本部 ニューライフ事業部商品企画グループの高野聖子氏に話を聞いた。

株式会社ファンケル肌着企画グループの高野聖子さん/photo by Misa Nishimoto

「モコモコが気持ち悪い」を解消するために

ーー 2021年にジュニア向け吸水ショーツが発売されました。開発経緯を教えてください。

企画がスタートしたのは2020年の春頃です。実は吸水ショーツを前提に考えていたわけではありません。

ファンケルでは大人向け肌着を展開していますが、その中でジュニア向けのサニタリーアイテムを展開することになり、子どもたちが使いやすいものはどういうアイテムかを考えました。

初めて生理を迎え、生理に慣れていないお子さんにとって、生理はお腹が痛くなったり、急に血が出てきたりと、決して快適なものでも楽しいものでもありません。

だけど、生理は大人の体になるステップであり、必要なものです。だからこそ、その過程での不安を減らして少しでも楽しんで欲しいという気持ちがありました。

生理における「不」の部分をどう解消すれば安心して自分の成長を喜んでもらえるのか。そう考えたときに、吸水機能がついたサニタリーショーツがあれば急に生理がきても安心だし、ナプキンに使い慣れていないお子さんでも使いやすいのではと考えました。

それで、最近のお子さん達の状況を知る為、ちょうど初潮を迎えるお子さんがいる社内のお母さんたちに「どういうものがあれば安心ですか?」といったヒアリングをして開発しました。

ーー こだわった点や苦労した点があれば教えてください。

ファンケルの肌着は肌あたりの優しさにこだわっています。吸水ショーツであっても着用感にはこだわりたいという想いがありました。

例えば、しっかりした水分量を吸水させようとすると、どうしても厚みが出てしまったり、後ろがもたついてしまう。

モコモコしているショーツを履いたときの違和感はすごく気になるので、いかに安心感を持たせながら着用感をすっきりさせるかに苦労しました。

ましてや生理ナプキンをつけた経験が少ないお子さんだと、普通のショーツと比べて違和感がないかというのが判断基準になります。

お子さんにもモニターしていただきましたが、やっぱりこのモコモコが気持ち悪い…と大人よりもたつきに対して敏感な印象を受けました。

ーー 子どもと大人では着用感も生活も異なるので難しいですよね。

そうですね。あとは、漏れを防ぐためにクロッチ部分に囲いを作る構造にしているので、普通のショーツよりも縫い合わせの部分が多く、縫い目があたって痛くないか気を遣いました。

肌あたりを維持しながら、しっかり吸水もするという両立が難しかったかなと思います。

ウエストのゴムも直接肌にあたらないように生地を折り返しにして、表面にゴムを載せる仕様にしている。サイドにはナプキンなどを入れるポケットも/photo by Misa Nishimoto
クロッチ部分の囲い構造/photo by Misa Nishimoto

ーー 生理サイクルを考えるとお子様のフィッティングも難しかったのでは?

通常の大人のフィッティングなら1度履いてもらえば、その場ですぐにここがダメとか感覚的な要望が出るんですが、お子さんに履いてもらう場合、履いた時は思わなかったけど半日履いてみたらここが痛かったということもあってフィッティング自体に時間がかかりました。

ーー 体育の時間など動き回ったりするので違和感を感じやすい環境ですよね。子どもの成長を考えるとサイズ展開はどのように考えられたのでしょう?

今回のショーツは、とりわけ初潮の不快感や不安な気持ちをサポートしたいという想いがあったので生理に慣れてきたお子さんではなく、ちょうど初潮を迎えるお子さんたちを対象にサイズ展開を検討しました。

事前に入手していた一般的なサイズ展開と、社内のちょうどその年齢にあたるお子さんをお持ちのお母さんから聞くサイズにずれがあったりして本当に悩みました。

 吸水することを考えると多少は重さがかかるので、ずり落ちる感じがしてしまうのではないかという懸念があり、優しい着用感でありながらフィット感のある仕様やサイズ感を検討しました。

ずり落ちそうな状態を気にするのは嫌だろうなと、フィット感はありながらもきつくない仕様を目指して、フィッティングを行い最終的に140、150、160のサイズ展開に決めました。

ーー実際に発売されて子どもたちからの反応はどうですか?

モニターに協力してくれたお子さんに出来た商品をプレゼントしましたが、「やっぱりこれがいい」と言ってくれたり、フィッティング時はまだ月経が始まっていなかったお子さんも始まったときには「これ使いたい」と言ってくれたりして、作って良かったと感じています。

高野さんご自身も2歳の娘さんがいらっしゃるそう/photo by Misa Nishimoto

高齢の女性だけじゃない。尿もれに悩んでいるけど尿もれケアはしていない

ーーその後、20222月に尿もれに悩む女性用として「デイリー吸水ショーツ」を発売されましたね。

もともと尿もれの不安を軽減する骨盤底筋のケアショーツを販売していて、この商品がすごく人気なんです。

そこから、「尿もれ対策の吸水ショーツが欲しい」という声や、子ども用の吸水ショーツを作った際に「大人用も作ってほしい」という声が社内でも多く、新たに開発しました。

ただ、大人用吸水ショーツを作るにあたってファンケルのサイトで尿もれについてアンケートをとったら40代の方を含めて多くの方が尿漏れ経験があると回答されました。

尿もれは高齢の女性に限らず幅広い年齢の方が経験しているけれど、尿もれ対策はしていないという回答も多かった。なので吸水ショーツがあればその悩みをケアできるのではないかなと。

ーー 子ども用吸水ショーツとはこだわった点も違うのでしょうか?

優しい着用感へのこだわりは同じですが、大人用ショーツはしっかりお尻を包み込むように3枚生地の立体構造にしています。子ども用吸水ショーツは違和感がないように普通の構造にしています。

あとは、お腹周りを気にされる方もいらっしゃるので股上を深くしお腹をすっぽり包み込む形にしています。

立体構造でお尻を包み込むデザイン
腰の部分のゴムは伸縮性と高い生地で完全に覆われつつベルト幅が広いのでお腹をサポートする安心感 /photo by Misa Nishimoto
大人用はパッドやナプキンが貼りやすい構造になっている

日常的に使いたいからこそ、お客様から想定外の声が

ーー ファンケルのメイン商材である化粧品と比べてお客様の反応はいかがですか?

弊社のサイトやカタログをご覧になってご購入される方が多いんですが、お客様の関心が高い分野だと実感しています。

大人用の吸水ショーツは思い切って商品の数を潤沢にご用意しましたが、早いタイミングで完売してしまいました。

SNSの反応も、ご覧いただいた数が通常の投稿とは桁違いに多かったです。

普段ファンケルの化粧品は購入しているけど、肌着は購入したことがなかった、という方にもご購入いただき、肌着の購入が新規であるお客様も多くいらっしゃいました。

このアイテムが起点となって、他の肌着にも関心を持ってもらえればと思っています。

ーー 利用者からはどのような声が届いていますか?

2月に発売したばかりなので履いた感想はこれからなのですが、「本当にこういうのを待っていた」という声が寄せられています。あとは「サニタリーにも使えますか?」という声も届きます。

これまでの尿もれ吸水ショーツはちょっともたつきのあるものも多い印象なので、デイリーに履いても違和感がないかどうかにこだわったので、このような反応は嬉しいです。

ただ、想定外だったのは、こんなに色の希望が来るとは思いませんでした(笑)

ーー 色ですか?今回はディープグレー1色で展開されていましたがどのような声が?

ベーシックで汚れが目立ちにくいカラーを考えたんですが、いろいろな意見が届きました。

デイリーに使うものなので、「ベージュが欲しい」という声は想定していましたが「もっと華やかな色がいい」という声やブラジャーとセット使いできる色がいいという声もありました。

両極端な声が集まっているので今度どのカラーを販売しようか悩みどころですね。

ーー 尿もれ用となると毎日履くものなので好みも分かれそうですね。再販の予定は?

考えていますが、着用感に関するお客さんの声がまだ上がってきていないので、どこか気になるポイントがあれば、その声を反映して、改良した商品を作りたいと思っています。

おそらく、クロッチ部分を洗い替えたいという声は想定されるので、そのときは取り外しができる布ナプキンとセットにするなどを検討したいと思っています。

ーー 販売後もお客様の声を元にすぐに改良に取り組んでいるんですね。お客様の声はどのようにして集めてらっしゃるんですか?

公式サイトで口コミを投稿してくださったり、電話で伝えてくださる方もいます。

弊社の場合、ネット注文だけでなくお電話で注文をくださる方もいらっしゃいます。

電話注文のときに話してくださる方もいますし、購入後の改善点などを別途お電話くださったり、その声を弊社のコミュニケーターさんが拾っています。

ーー 御社として、今回のようなフェムテックアイテムは今後も注力されるのでしょうか?

あえてフェムテックを進めていこうと思っているかというとそうではありません。どちらかというと「不」を解消することが重要だと思っています。

弊社の創業理念は「正義感を持って、世の中の『不』を解消する」です。毎日の生活の中で、ちょっとした不満を感じている事を解消していくということに今後もこだわっていきます。

女性の体は年齢とともに外側も内側も変化し、いろいろな状況に対応していかなければならない。

その変わっていく環境で、商品を通じて、女性の体に対してできるだけ不快や不安なものを取り除き、楽しく生活できるようにしていきたいというところが根幹です。

そういう意味で、吸水ショーツやそれにまつわるアイテムに関しては、お客様からの反応も良く、注目のアイテムであることが見えてきたので今後も販売をしていこうと思っています。

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