コロナ禍で仕事や子育て、日々の生活が感染の恐怖と隣り合わせのなか、不安定な暮らしを余儀なくされた人も多かった2020年。ニューノーマルな生活になんとなく慣れたような気がしていても、積もり積もった精神的負担は大きいのではないだろうか。
そんな中、メンタルヘルスケアの需要が高まっている。AI搭載のメンタルヘルスケアアプリ『emol(エモル)』を提供するemol株式会社は、「国内メンタルヘルステック カオスマップ2021」を公開した。
2020年版に比べ、一般向けのサービスが増えて、多様化が進んでいる。とくに「AI」「カウンセリング」「マインドフルネス」「CBD」といった分野で新たなサービスが登場している。
2016年に調査された世界精神保健日本調査セカンド総合研究報告書によると、心に悩みを抱えていながら専門機関を受診していない人が多い結果になっている。メンタルケアを必要とする人が、気軽に利用できるサービスへの需要が高まっているようだ。
オラクルの調査によると、78%の人がコロナ禍においてメンタルヘルスの悪影響を感じているということがわかった。またメンタルヘルスのサポートを、人よりもロボットに頼りたいという回答は82%にものぼる。オンラインシフトが進んだ影響もみられる。
医療機関受診の、ワンクッションに
コロナ禍におけるメンタルヘルスケアの重要性と業界動向について、emol株式会社、代表取締役 千頭沙織さんに、話を聞いた。
——2020年版と比較したカオスマップの変化について教えてください。
2020年版は、企業向けのメンタルサーベイや産業保健領域のサービスが多く、コンシューマー向けは少ない傾向にありました。今回コンシューマー向けサービスが一気に増え、マインドフルネスや、オンラインカウンセリング、CBDといったカテゴリーに注目が集まっています。メンタルヘルスの領域は国内では市場がまだ小さいのですが、これから盛り上がってくる気配を感じています。
——コロナ禍におけるメンタルケアの重要性をどのように捉えていますか?
家にこもりっきりという人には、セルフケアが必要だと感じます。仕事や学業など、自覚しやすいストレスを感じていた場合、自発的にストレスを発散をしたり、クリニックや専門家に相談したりと、対処しやすい傾向があります。ですが、コロナ禍では、無自覚のうちに状態が悪くなり休職せざる終えなくなった、というようなケースも見聞きします。
在宅勤務により仕事とプライベートのメリハリが無くなり達成感を得られづらくなったり、外出時に罪悪感を感じたり、家庭内でひとりの時間を確保できなかったり……。自覚しづらいストレスが蓄積されて、気づいたときにはかなり心が疲弊している、そんな状況に陥る人もいるのではないかと思います。
だからこそ、自分自身の心の状態や変化を察知して、対処できるようなサポートが必要だと感じています。
——欧米などと比較すると日本ではメンタルクリニックやカウンセリングの利用が少ないと言われています。
私自身もそうなのですが、メンタルクリニックに行くことに抵抗を抱く人が多いように思います。「弱い自分を見せてはいけない」「もし病気と診断されたらどうしよう」とネガティブに考え一歩を踏み出せないという声も。
emolでは「人に話せないならAIに話してみたら?話すだけでも心が軽くなるかもよ?」という思いでAIとチャットで会話してメンタルケアするアプリを開発しました。
欧米に比べて、日本では心の不調でクリニックへ行くことが、体の不調でクリニックへ行くことよりもかなりハードルが高いように感じます。そのハードルを下げるための、ワンクッションとしてemolのようなサービスを使う人が増えたらいいなと感じています。