毎年フランスで開催される、世界最大級の広告関連フェスティバル「カンヌライオンズ」。

今年は、イギリスの生理用品ブランド「Bodyform」の「#WOMBSTORIES(子宮の物語)」という作品が、フィルム部門をはじめとした計4部門でグランプリを受賞し、大きな注目を集めた。

この記事では、「#WOMBSTORIES(子宮の物語)」をはじめとして、近年発表されている海外の生理にまつわるCMや広告を5つ紹介したい。

#WOMBSTORIES(子宮の物語)「どの体験も真実であり隠されるべきではない」

3分18秒の映像では、子宮にまつわるさまざまな女性たちの物語が描かれている。

妊娠。出産。セックス。お気に入りの下着を履いたときにやってくる生理。生理痛の痛みに悶える姿。レズビアンカップルの不妊治療。更年期のホットフラッシュ。流産。そして、子どもを欲しいと思う気持ちと欲しくないと思う気持ちー。

これらは、実写とアニメーションが織り交ぜられながら軽快な音楽で進んでいく。

作品は「#WOMBSTORIES(子宮の物語)」と名付けられた、子宮にまつわる体験談を募るキャンペーンの一貫で昨年公開されたもの。

キャンペーンサイトで一貫されている姿勢は、「これまで可視化されることがなかった生理や子宮にまつわる体験は、決して単純ではなく複雑なものであること」、そして「どの子宮の物語も、真実であり隠されるべきではない」ということだ。

特に「複雑さ」の観点で言えば、1分10秒以降の生理の描写が象徴的だろう。

「子どもを欲しくないと思う女性」が、生理を迎えた瞬間に浮かべる安堵の表情。そして、その直後に映し出されるのが、病院で流産を告げられ涙する女性の姿。これは、生理も人によってその存在の意味が大きく異なることと、女性の生き方や考え方が多様であることを示唆しているのではないだろうか。

キャンペーンサイトで「お互いを知り助け合うためには、私たちの子宮の物語を共有し、耳を傾ける必要がある」と記されている通り、作品は「私たちの#WOMBSTORIESを聞かせよう」で終わる。

より現実に近い生理を映し出した、#Bloodnormal

イギリスの「Bodyform」が生理や女性の体をタブー視する風潮に疑問を呈すのは、今回の「#WOMBSTORIES(子宮の物語)」が初めてではない。

2017年には、「#bloodnormal」と打ち出したキャンペーンの広告において、経血のような赤い液体を使用した。そして、広告(上記の動画)では「生理は普通のことであり、そのことを示すのも必要だ」と呼びかける。

「生理用品はぜいたく品?」消費税の格差に注目したタンポンブック

ドイツの企業「The Female Company」の「タンポンブック」も、カンヌライオンズ2019のPR部門でグランプリを受賞した企画だ。

ドイツでは2019年まで、タンポンには19%の消費税がかけられ「ぜいたく品」に指定されていた。ちなみに、日用品の課税は7%だった。こうした状況に抗議すべく、同社が企画したのが1冊の本にタンポン15個を付録として付け販売した企画だ。

これは、本に適用されている消費税が7%であることを逆手に取ったもの。

同社が発表した広告(上記の動画)でも、「タンポンはぜいたく品?生理はぜいたく品?」という言葉が印象的だ。

“生理のリアル”を伝えることで共感を呼んだ韓国のCM

次は、以前ランドリーボックスでも取り上げた韓国のCMを紹介したい。

イギリス発の生理用品メーカー「ナトラケア」が2018年に発表したCMでは、ナプキンのコマーシャルで多用される「あの日」という言葉にうんざりした女性たちの様子や、「何もしたくない」「イライラする」と生理時のつらさを吐露する女性たちが登場する。
こうした生理のリアルを伝えるCMは、日本のSNS上でも注目を集めた。

重々しい雰囲気がまさに生理、インドのCM

最後は、2020年にインドの生理用ナプキン「RIO」が発表したCMを紹介したい。

同CMでは、女性が持つ赤い風船から赤い液体がポタポタと流れたり、突然ドバッと出てくる様子が重々しい雰囲気で映されている。そして、「量が多いとき、細くてスリムなナプキンは役に立たない。もっと丈夫なナプキンが必要だ」(意訳含む)というセリフが告げられる。

これらの広告に抵抗感を覚えた人もいるだろう。もちろん、生理や体のことを当事者が隠したいか隠したくないかは尊重されるべきだ。

しかし、当事者のリアルをタブー視せずに伝えていくことが、非当事者にとっては正しい認識で当事者に手を差し伸べられること、そして当事者にとっては助けを求められやすい環境にも繋がるのではないだろうか。

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