生理にまつわる話題がタブー視される風潮の中で、直接的な表現を避けて婉曲表現を使うのは、万国共通のようです。

筆者も女子校時代、男子の目がないのに「女の子の日」「ペリー」といった隠語を友達との間で使っていたのを覚えています…。

フェムテックアプリ「Clue」が世界190カ国を対象に行った調査では、女性みずから使っている「生理の隠語」が世界中で5000語以上存在することが明らかに。なかなかに各国のお国柄が反映されている婉曲表現を比較してみます。

ソイヤ!セイヤ!祭りの日本

同調査によると、生理のことを最もオープンに話せると感じているのはプエルトリコ人。87%にものぼる人たちが「気まずさを感じる」と回答した日本は最下位となりました。そんな日本では、次のような婉曲表現が使われています。

  • 月のもの
  • 女の子の日
  • あれ
  • あの日
  • お客さん
  • 血祭り
  • ブルーデイ
  • 月一(つきいち)
  • ガールズデイ
  • ペリー来航

ランドリーボックス編集部内では、

  • トマト祭り
  • ダイナミックフェスティバル

などが挙げられました。血祭りにせよフェスティバルにせよ、「祭り」が入ってくるのが日本らしいです。

突然、平穏な日々に生理の困難が押し寄せる衝撃(ペリー来航)を、憂鬱に感じながらも(ブルーデイ)客観視して担いでしまうのは、国民性でしょうか。また、他国ではほとんど必ずみられる「赤」など直接的に経血を連想させる色が、あまり用いられないことも特徴です。

“親戚”、”友達”… 生理と仲良し?中国と台湾

  • 大姨妈 (おばさん)
  • 好朋友 (親友)/ 老朋友 (旧友)
  • m到 (Mが来た)
  • 例假 (いつものホリデー)
  • 倒霉 (運の尽き)
  • 来那个 (アレがくる)
  • 特殊情况 (ちょっとスペシャルな状況)
  • 不方便 (面倒なこと)
  • 小紅 (紅ちゃん)
  • 蘋果麵包 (りんごパン)
  • 血腥瑪麗 (ブラッディーメアリー)
  • 紅茶 

中国語では生理の存在を親戚や親友に例えたり、「赤」を連想させる食べ物を用いた表現が多く見られました。生理をネガティブに捉える表現は比較的少ない印象で、「いい友達」として付き合っている姿勢が見受けられます。

漢方の文化が根付いている中華圏では、生理のつらさを我慢せずうまく付き合っていく姿勢が一般的なのかもしれません。

・台湾の生理文化に関する記事はこちら

「魔法」を脱出、韓国

Clueが行った今回の調査結果に韓国は含まれていませんでしたが、韓国の日刊紙「ハンギョレ新聞」は「”その日”でもなく”魔法”でもなく “生理”です」と題した記事を公開しており、代表的な表現として以下の2つが挙げられます。

  • 마법에 걸린 날(魔法にかかる日)
  • 그 날(あの日)

近年韓国ではテレビCMなどにおける生理に関する婉曲表現の使用をやめようという動きが広がっており、すでに「魔法」は死語化しつつあるそうです。ちなみに、生理中の性行為は「トッポギ」と呼ぶそう…。

・韓国の生理意識改善に関する記事はこちら

・生理中のセックスの危険性についてはこちら 

生理でも光る詩的才能、フランス

  • La semaine Ketchup (ケチャップ週間)
  • C’est une scène de crime dans ma culotte (パンツの中の事件現場)
  • C’est la saison des fraises (いちごの季節)
  • Le Beaujolais nouveau est arrivé ! (ボジョレーヌーボーの到来!)
  • Les anglais ont débarqué dans ma culotte (パンツへの英軍の襲撃)*イギリス軍が赤い軍服を着ていたことになぞらえて
  • Le petit clown qui saigne du nez (鼻血を出している小さなピエロ)
  • Être en travaux (工事中)
  • Faire du boudin (黒ソーセージ生成中)
  • Les petits lutins rouges (赤い小さな妖精たち)
  • Les chutes du Niagara (ナイアガラの滝)

生理の表現に至ってもやはりフランスはフランス、そこはかとなく詩的な表現が使われています。

相手の察しを前提に使われる「アレ」が日中韓の東アジアに共通して存在していたのに対し、フランス語表現の直接さたるや!ケチャップ、いちご、黒ソーセージ… もはや生理を隠すのが目的じゃない気がしてきました。

日本人の筆者からすれば、「生理」というより、「赤い小さな妖精たち」と言ってしまうほうがむしろ恥ずかしく感じます。

でも、隠そうとせず、ウィットに富んだ表現で生理について話しやすくする。これも新しい形の「生理ポジティブ」なのかもしれません。

フランス政府は今年2月、全学生に生理用品を無償で配布すると発表しました。その歩みはこちらの記事でまとめています。

とにかく赤い。直接的なドイツ

  • Erdbeerwoche (いちご週間)
  • Rote Tante (赤いおばさん)/ Besuch von Tante Rosa (ローズおばさんの来訪)
  • Rote Welle (赤い波)/ Auf der roten Welle surfen (赤い波でサーフィン)
  • Rote Armee (赤軍)*旧ソビエト軍を指す
  • Mens (”Menstruation”:月経 の略) 
  • Emma (エマ)*人の名前
  • Alarmstufe Rot (赤アラート)
  • Die rote Pest (赤い疫病)
  • Besuch aus Rotenburg (ローテンブルクからの来訪)
  • Ins rote Meer stechen (赤い海への入水)
  • Tomatensaft (トマトジュース)

フランスと同様、ドイツ語でも「赤」の使用が多くみられます。”Mens”に関しては月経というそのままの言葉を略したなので、隠語としての婉曲表現にカウントされるのかどうかも微妙なところです。

生理アプリのClueなどフェムテックの分野をリードするドイツでは最近、タンポンを触らないための手袋を開発した男性フェムテックグループPinky(ピンキー)が「ピリオドシェーミング(period-shaming)」に加担しているとして広く批判されました

この盛り上がりは裏を返せば、「生理=恥ずかしいこと」として捉えるのが間違っているという認識が社会で浸透しはじめていたからこそだったと言えます。

ネガティブな見方が残る、ポルトガル語

  • Chico (フランシスコ:男性の名前 のニックネーム)
  • Naqueles dias (このごろ)
  • Joga o Benfica (ベネフィカの試合)*旗が赤いポルトガルのサッカーチーム
  • O tempo do més (月の時期)
  • Monstra (ミス・モンスターちゃん)
  • Vermelho (レッド)
  • De Visita (ザ・訪れ)
  • Coisas de mulher (女性のモノ)
  • Sinal vermelho (赤信号)
  • Estar de bode (悪い状態)
  • Estar de Boi (牛の生け贄)
  • Quebrou bacia (壊れた洗面器)
  • Time (チーム)
  • Ta vindo, ta descendo (あれがおりてくる)
  • Chovendo na horta (農場に降る雨)

仏独二カ国に比べて、表現が少し遠回しな印象です。また「悪い状態」や「壊れた洗面器」などの表現には、生理に対するネガティブな見方が顕在化していると言えます。

「牛の生け贄」は、日本ではなかなか思いつかなさそうな表現。

アジアとヨーロッパの中間?ロシア語

  • Эти дни (このごろ、最近)
  • Критические дни (重要な日)
  • Дела (ビジネス)
  • Красная армия (赤軍)
  • Красный день календаря (カレンダーの赤い日)
  • Гости (из Краснодара) (クラスノダールからのゲスト)
  • Праздники (ホリデー)
  • Красные Жигули (レッド・ジグライ) *ロシアのブランド車
  • Монстры (怪物)
  • Месики (”mensies”:月経ちゃん)

東アジアの遠回しさと、ヨーロッパの直接さの中間といった感じでしょうか。

「赤」という言葉を使用している一方、「ビジネス」や「ホリデー」など、プライベートとされることの明示的な表現を避けるために隠語を使うのは、日本や韓国と近いものがあります。

共同調査を行った国際女性健康連合の会長 フランソワーズ・ジラード氏コメント

“We need to do a lot more to make sure women and girls know and are comfortable speaking about their sexual and reproductive health and their rights.”

Reuters より

(女性が自分のリプロダクティブ・ヘルスや権利について知り、安心して話せるようにするためには、今よりももっとたくさんの努力をしなければなりません。)

ClueのCEO アイダ・ティン氏コメント

“It’s unfortunate that so many people feel they aren’t able to be open about their periods, and, in many regions, this is even the case within families. We’re hopeful that with increased awareness and education about the importance of female health, we can move this discussion forward on a global scale.” 

Reuters より

(残念なことに、多くの人が自分の生理についてオープンにできないと感じており、多くの地域では家族の中でさえそうだと言われています。私たちは、女性の健康の重要性についての認識と教育が高まることで、この議論が世界規模で前進することを期待しています。)

生理現象をタブー視することでうまれる弊害もある

今年4月、国際NGOプラン・インターナショナルの調査によって「生理=恥ずかしい」という認識が日本ではいまだに根強く、それが女性の教育的・社会的機会の損失につながっていることが明らかになりました(くわしくはこちら)。

月経のある・経験した人口は世界の半数を占めるにも関わらず、この生理現象が社会的にタブー視され、悩みや困りごとを話せない風潮は健康問題だけにとどまらず、女性が生きていく上でさまざまな弊害を生み出してしまいかねません。

生理の婉曲表現はその形式や程度に差はあれど、世界中に存在していることが明らかになった今回の調査。各国の文化や慣習を踏まえた上で、少しずつでも生理に関するスティグマが減っていくことを願ってやみません。

みなさんは生理や生理の日をどう呼びますか?「今は生理だけど、昔はこんな表現使ってたなぁ」など、よかったらコメントで教えてください。

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