日本の30代以上の女性の30%が性体験がないと言われています。

48歳まで処女だった私が自分の経験を公の場で書きたいと思ったのは、同じように性体験がない30代や40代の女性に「性体験がないことは特別なことではない」と伝えたいという強い思いからでした。

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48歳まで「処女」だった私が、男性経験がないことで悩む人に伝えたいこと

しかし、実際にコラムを書いて発信しても同じような経験者の声を聞くことができず、少しもどかしい思いがありました。

そこで、ランドリーボックス編集部の協力を得て、「性体験がない」、「長い間処女だった」という人の中から取材に協力いただける方を募集。10月にインタビューを実施し掲載したところ、大きな反響がありました。同じように心の中に抱え込んでいる人がいるのだと実感しました。

インタビュー記事はこちらから40代・処女だけど焦りも恥ずかしさもない。経験はただの人生の通過点

でも人それぞれいろんな価値観があると思うので、もう少しいろんな人から話を聞きたいと思ったのです。そこで再び、編集部の協力を得て声を集めました。

その中で今回は30代で初めての性体験をしたHさんからお話を聞くことができました。産婦人科での仕事に就いているというHさんの口から出たのは、意外な事実でした。

「女性らしくあること」に違和感を抱いていた。ボーイッシュだった中高生時代

photo by Mubariz Mehdizadeh on Unsplash

ーー現在、30代とのことですが、中高生時代はどのように過ごしていましたか?

私は自分で言うのもなんですが、経済的にも環境的にも恵まれた家庭で育てられました。私立の中高を卒業し、有名大学で学んだ後に就職をしました。そのような環境でしたが、すごく厳しく躾けられたわけではありません。

セックスについては、多くの人と同じく学校の性教育で知りました。好きな人ができても、付き合ったり、その先に性行為をすることには、全く興味がありませんでした。

中高生時代は、自分が“女性らしくなっていく”ことが嫌で、髪の毛をショートカットにして、ボーイッシュな格好をしていました。それもあって、女性にモテることの方が多かったですね。

ボーイッシュな格好をしていたのは、“女の子らしさ”や“日本の女性像”が自分に合っていないと思っていたからで、性別に違和感はありませんでした。

ーー当時、親とは性に関する話はしていましたか?

性に関する話を親とすることは全くありませんでした。暗黙の了解で恋愛や性について話すのはタブーのような雰囲気があったと思います。

実は、学生の頃に仲の良かった男友達と遊ぶことになったとき、母親からは「軽々しくそういうこと(性行為)はするな」と厳しく言われました。女性として身を守ることに対して教育的な母親でしたし、私も母親の言葉を受けて軽々しく性行為をしてはいけないものだと思っていました。

「処女喪失は早いほうがいい」という風潮に疑問があった

photo by Scott Warman on Unsplash

ーー中高生くらいになると周囲にも性体験をした人もいると思いますが、焦りはなかったのですか?

先ほど話したように、母親の性行為に対する教育もあり、男性と簡単に性行為をする関係になりたいとは思いませんでした。

周りの友人たちが恋愛をして性行為を経験していく中で、自分は処女のままでしたが、別に焦りはなかったし、早く処女を卒業したいという気持ちも全くありませんでした。むしろ、早く処女じゃなくなるのがなぜいいとされているのかもわからなかったですし、早く処女喪失することにそんなに意味があるのだろうか?と疑問に思っていましたね。

ーー好きな人はいましたか?

実は、20歳頃にとても大切に思っていた男友達がいましたが、その人とは結果的に一緒になることができなかったんです。その喪失感を知ってからは、大切な人を失うのが怖いという思いが強く、恋愛に積極的になれなかったのかもしれません。

ーー大切な人となら性行為はしてもいいという気持ちはありましたか?

そうですね。自分がしたいと思った相手なら、性行為はしたいです。性行為に興味はなくても、最初にするなら好きな人としたいと思っていました。

「処女喪失は早いのがいいこと」という日本の風潮がありますが、私はそれに疑問があったんです。

処女喪失を早くしたいからって、自分が好きでもない人と性交渉をして処女を卒業することが幸せなのか?と思うんですよね。

ただ、不特定多数の人と恋愛感情なしでセックスしたり、セフレがたくさんいる人を否定するつもりはないです。それはその人の価値観ですから。ただ、自分はそういうタイプではないというだけです。

ーーなぜ「処女喪失が早いことがいいこと」という風潮があると思いますか?

たぶん、“恋愛の先に性交渉がある”という先入観がその風潮に拍車をかけているのだと思います。ある程度の年齢を超えても性交渉がないと、“人として変”だとか”未熟”だとか言われてしまうこともありますよね。それが焦りを助長してしまうのかもしれません。

でも、性交渉の年齢が早ければ幸せなのか?と言ったらそうではないですよね。

ーー「処女喪失が早いことがいいこと」は男性的な意見なのかもしれません。

そう思います。女性としては処女をどの年齢で喪失しようとあまり関係ない気がします。

処女であることに悩む必要はない

photo by Sam McNamara on Unsplash

ーーHさんがそう感じる一方で、今も処女であることに悩んでいる人もたくさんいると思います。

私は処女であることに悩んだことはないですが、なぜ悩むのかを突き詰めて考えてみるといいかもしれませんね。

例えば、処女喪失を早くするのがいいというのは、自分の価値観ではなく、他人や世間の価値観ではないのか?とか、マジョリティの意見に引っ張られているのか、本当に自分がセックスしたいからなのか?とか、じっくり内省してみるといいと思います。

初めてのセックスをどの時点でするのか、あるいはしないのかは、年齢は関係ないんです。自分が大切にしているものと合致していたら、別に処女でもいいんですよね。

産婦人科の仕事で、肌で感じた処女の割合

photo by Samantha Gades on Unsplash

ーーHさんは産婦人科に勤めていますが、驚いたことがあるとか。

はい。実はこの仕事をしていて驚いたのは、性交渉経験がない女性が想像以上にいるということでした。

これまで調査結果で「日本の未婚女性の30%が性体験がない」「女性全体で10%前後の人が性体験がない」というデータは見てはいましたが、「本当にそんなにいるの?」と思っていました。

でも、病院に来る患者さんを見ていると、データとさほど乖離がないと感じます。

実際に勤務しているともう少し低いとも感じますが、産婦人科にかかる理由がとくになく病院に来ない人もいたり、性行為をしたことがないのに“した”と問診で回答する人もいるかもしれないので、その人たちを加味するとおおよそデータのパーセンテージ相当だと思います。

ですので、日常診療ではよく出会いますし、40代で性交渉未経験も全く珍しくありません。

ーーそんなに多いんですね。なんだかすごくリアルですね。

そうですね。産婦人科に来る患者で処女は珍しくないと感じます。

「周りはもう性行為をしているのに自分だけまだ処女で恥ずかしい」と思っている人も多いかもしれませんが、私の肌感覚ではかなりいると思いました。

だから、自分に性体験がないからといって悩む必要はないし、処女だということを産婦人科では素直に伝えてほしいですね。別に恥ずかしいことではないのですから。

今の彼に出会ったことで恋愛観が変わった

photo by Samantha Gades on Unsplash

ーー今はパートナーはいますか?

今はマッチングアプリで知り合ったパートナーがいます。処女喪失は、今の彼とでした。

これまで恋愛にもセックスにも興味がなかったのですが、彼に出会って「この人ならいいかな」と心から思えたんです。私の価値観を受け入れてくれて、常に私の価値観や考えを尊重してくれる大切な存在です。

ーー処女だったことも受け入れてくれたんですね。

これまで処女だったことや、私の仕事のことなども含めて、全部受け止めてくれます。本当にありがたいです。

今までは子どもをもうけることも考えていなかったんです。子どもを産み育てるという重たい責任は私には持てないと思っていました。でも彼に出会った今は、彼との間に子どもが欲しいと考えています。

ーーそれは素晴らしいですね!将来はどんなふうに生きていきたいと思いますか?

これからも自分自身を大切にして、とにかくハッピーに生きていきたいですね。

処女であることに悩んでいる人は、そのことに傷つかなくてもいいんですよ。自分自身を大切にして、自分が「今なら大丈夫」と思えたら、その時にセックスをしたらいいと思います。もちろん、したくないならしなくてもいい。

悩むことにエネルギーを使うのではなく、自分を高めることにエネルギーを使ってハッピーに生きて欲しいです。

ランドリーボックスでは、「処女」という言葉の違和感や考え方について掘り下げています。

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同じ悩みを持っていたライター・miraeさんが、インタビューします。

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