ひとりでウェディングドレスや白無垢を着て写真撮影や結婚式を行う「ソロウェディング」のサービスは数年前に生まれました。
当初は「寂しそう」という世間の声もありましたが、近年ではサービスを利用してさまざまに楽しむ人がいます。
最近ソロウェディングの撮影をしたという福岡県在住のYさん(20代)は、「これでもう結婚について何も後悔することはない」と晴れ晴れとした表情で、撮影の様子を話してくれました。
そんなYさんも、20代半ば頃には「結婚したほうがいいのかな?」と悩んでいたそうです。ソロウェディングを通して、どんな気持ちの変化があったのでしょうか。
Yさんにくわしく話を聞きました。
憧れのプリンセス気分を味わえたソロウェディング
--ドレスと着物のお写真を拝見しました。表情がとても晴れやかで、幸せそうです。ソロウェディングをしてみていかがでしたか?
最初に和服、次にドレスを着たのですが、和服のときはまだ緊張していました。でも、ドレスのときには緊張もほぐれて「プリンセス気分を味わおう」「ドレスをよく見せよう」と、ドレスアップした自分の姿をたくさん残そうと思って楽しめました。
衣装を選ぶのも楽しくて、私の選んだウェディングドレスは会場の人からも褒められたんです。
--写真から楽しんでいる様子も伝わってきます。そもそも、なぜソロウェディングをしようと思ったのですか?
1〜2年ほど前に、姉から「ソロウェディングっていうのがあるよ。やってみたらどう?」と言われてソロウェディングの存在を知りました。
最初は「自分ひとりだけを撮影するウェディングってあるんだ!」という驚きでしたが、徐々に興味がでてきました。
そのうちに「これをやらなきゃ人生後悔する」と思うほど、人生でいつかやりたいことのひとつになっていたんです。
そして30歳を目前にしたこのタイミングに、住んでいる福岡からたまたま上京する予定が入ったので、それに合わせてソロウェディングをすることにしました。
ひとりでソロウェディングをするのも勇気が必要で、やりたいと思っても会場やドレスなどをひとりでは探しきれなかったので、姉にプロデュースしてもらっていい機会になりました。
親からの「結婚しないの?」プレッシャーを感じていた数年前
--いいきっかけをお姉さんからもらえたんですね。Yさんは結婚願望はあるのでしょうか?
正直なところ、今後は結婚するともしないとも決めていません。でも、8:2くらいの割合でひとりで暮らしていく可能性のほうが高いのかな?と自分では思っています。
私が20代半ばのときに姉が結婚し、「私も結婚したほうがいいのかな、しなきゃいけないのかな」と葛藤している時期もあったんです。
親からも、直接言われはしないけれど「姉に続いて結婚してほしい」と言われているようなプレッシャーを感じていて…。
--親からの無言のプレッシャーは感じますよね。本当は自分の気持ちで決めていいのに。
そうなんです。だから、今回ソロウェディングをして「結婚しなくても、結婚式したよ」と親に言えるくらいの区切りをつけられたのは本当によかったと思います。
他にも「ドレス姿の花嫁さん」に憧れがあって、若いうちに着てみたいとも思っていたので、きれいな姿を写真に残すことができたこともよかったです。
母や姉も当日立ち会ってくれて「アンタきれい〜」「すてき〜」とベタ褒めしてもらったり、家族で一緒の写真を残せたりと、思い出にも残りました。
--ご家族も素敵な笑顔ですね。お父様はどのような反応でしたか?
複雑な気持ちだったみたいです(笑)。私が今後結婚しないって決めたわけじゃないから気にしなくていいのに。
プロデュースしてくれた姉はもちろん、母もノリノリで、衣装に合わせて髪飾りを当日買いに走ってもらったりと女子会のように3人でキャッキャしながらコーディネートや撮影を楽しんでいました。
ウェディングドレスは何回着てもいい
--家族で女子会の雰囲気とは、楽しそうですね。
今回私が行ったことは「『結婚』や『結婚式』をひとりでするソロウェディング」という重い意味では捉えていないんです。
「ウェディングドレスも何回着たっていい」「自分や家族が楽しければいい」という、軽いノリでした。
実際私はとても楽しかったし、母も姉も成人式以来の私の晴れ姿を喜んでくれました。
普段私はメイクアップもあまりしないほうなので、プロの手にかかって本当にきれいにメイクも撮影もしてもらってありがたかったです。
だから、ドレスアップして写真を撮ることがもっとカジュアルになってもいいと思うんですよね。
結婚や子どもに対する自分の価値観に、より確信を持てたのがソロウェディング
--結婚や結婚式は重く捉えている人が多いと思いますが、Yさんのようにカジュアルに楽しむのも素敵です。
私はそもそもひとりで過ごすのが苦ではないんです。
姉からは「友達とかそんなに多いほうじゃないけど、人生楽しそう」って言われます。
自分で稼いだお金で飛行機に乗って推し活に励んだり、料理にハマったり好きなことをして暮らしています。
やっぱり誰にも振り回されずに自由にひとりで暮らすって気楽だし、そんな暮らし方が私には合っていると思うんです。
逆に、姉は結婚して子どもを産んでいて、全く別の人生を歩んでいます。そんな生き方を近くで見ていて「私には子育ては向いていないかな」とも思いました。
--それはなぜでしょうか?
自分の思う通りに動くことが大人よりも少ない子ども相手で、私だったらイライラしたり、ムキになったりしそうなんですよね。
子どもを育てるのが自分には怖くてできそうになくて…。
小学生くらいで芽生えた結婚への憧れ、思春期に入って「彼氏・彼女いいなあ」という気持ち。そんなふうに結婚や子育てに憧れはあるんですが、30歳を目前にして理想と現実は違う、と実感することも多くなりました。
ニュースや同年代を見ていても、素敵だなと思う結婚もあれば早く離婚する人もいるんだなというのが最近の感覚。
だから、私は無理に結婚することもないし、ひとりで生きていったっていい。もちろん、結婚したくなったら、そのときにすればいい。
そんな結婚や子どもに対する自分の価値観に、より確信を持てたのが今回のソロウェディングでした。
--周囲のプレッシャーや空気を感じて葛藤していたけれど、ソロウェディングを機に自分の気持ちがより明確になったのですね。
私の人生でやるべきことがひとつ達成された!という感覚が大きいです。
もしも今後の人生をひとりで暮らすとなった場合でも、何も後悔することはない。
心残りがあるような人生は好きじゃないから、今回ひとつ区切りをつけられて晴れ晴れとした気持ちです。
--人生を生き生きと楽しんでいることが伝わってきます。今後はどのような人生を歩んでいきたいですか?
楽しみがひとつ終わったら、次の楽しみを探す。
そうやって、毎日楽しんでいられるように「楽しむことの計画」を立てて生きていたいですね。
これから、モーニング娘。の推しのメンバーが卒業するまでは見届けたいし、趣味の野球観戦も続けたい。料理も運転技術も磨きたいんです。
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晴れ晴れとした表情で、ソロウェディングについて話をしてくれたYさん。
友人や大切な人はミニマムな人数でも、自分で楽しみを次々と見つけてひとりで幸せそうに暮らしている姿が印象的でした。
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ランドリーボックスでは特集「#ひとりのわたし」をスタートしました。
性別に限らず、私たちには様々な「役割」があります。
ですが、その「役割」をまっとうすることだけが自分の人生ではありません。
私たちには様々な役割と同じように、様々な価値観や欲求が存在しています。
あらゆるジェンダー規範に囚われることなく、一度きりの人生、わたしの人生を謳歌してほしい。
わたしを謳歌するということは、自分で選択し、自分の足で前に進むということでもあります。
女として、妻として、母として、子供としてではなく、ひとりの「わたし」として。
ただ、それは決して、ひとりきりであるということではありません。
そんな想いをこめて、ランドリーボックスでは、それぞれの「ひとりのわたし」に関するコンテンツをお届けします。
目の前に続いていく道が、「ひとりのわたし」たちが手を取りあえる未来に繋がりますように。