目指すは生理用品の無償化。「生理の貧困」と向き合うフランス

2019年11月18日大野 舞
2019年11月18日
大野 舞

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  • 世界の生理

    生理×貧困のダブルのタブーを越えるために。

    突然ですが、みなさん毎月の生理用品にいくら使っていますか?

    女性はだいたい10歳から14歳に初潮を迎え、50歳ごろの閉経を迎えるまで、平均しておよそ39年間生理があるそうです。それを踏まえて、フランスのル・モンド紙が独自に計算をしたところによると、鎮痛剤と生理用品だけで7.5ユーロ(900円)程度だそうです。これにはもちろん、産婦人科に通う費用や汚してしまう下着にかかる費用などは入っていません。

    たとえ月末金欠だったとしてもまさか節約のために生理用品を買わずに過ごすなど考えますか?

    しかし、実はこの生理用品の出費に苦しむ人たちは少なくないのです。それを「生理の貧困」と呼びます。これは私たちの身近な社会に存在しています。

    たとえば、ホームレスの女性、また一部の学生たちにとっても、深刻な問題になりうるのです。日本では「子どもの貧困」なども言われて久しいですが、そんな家庭の女の子たちあるいはシングルマザーたち。苦しんでいる人々は実はたくさんいるのです。

    もちろん日本だけではありません。イギリスでは10人に1人がこの問題に苦しんでいるそうです。そして彼女たちは、どうしても購入するお金がない場合、布切れやトイレットペーパーなどで手作りをしているということです。

    また、ある専門家の話によると、難民となった3000万人もの女性たちが生理用品不足に悩まされているそうです。

    なぜ私たちがこの問題について、あまり聞く機会がなかったのか。それはどこにいても生理はタブーであり、さらに貧困というタブーと重なり、プライベートの領域からなかなか出ることができない話題だからではないでしょうか。

    生理の貧困とフランスでの動き

    生理の貧困という問題に世界で最も早く対応を試みたのがスコットランドです。2018年8月に、スコットランド政府は小学生から大学生までを対象に生理用品の無償化を決めました。

    一方、フランスでは2015年に、ジョルジェット・サンドというフェミニスト団体とその署名活動により、生理用品の消費税は20%から5.5%に下がりました。もちろん、提案はスムーズに通ったわけではありません。

    男性議員が「男性の髭剃り用ムースの消費税も20%なんだ」なんて発言もし、炎上。これには女性たちも黙っていませんでした。「そもそも女性だって脇やら足やら剃っているんだぞ」と。それに「3日髭を剃らない男性とナプキンをしていない生理中の女性を想像してみてほしい」と。

    紆余曲折はありながらも2016年に晴れて「生活必需品」の仲間入りをしたのです。これ以降、社会が生理に関する話題に関心を持ち始めたようです。

    そして、無償化についてもようやく動き出しました。マルレーン・シアパ男女平等大臣のイニシアティブニより、パトリシア・シリンガー議員が生理用品無償化に関するレポートを作成。

    その中の重要な提案のひとつはホームレス、受刑者、若者、そして学生に対しての生理用品の無償化です。

    IFOPの調査によれば、フランスでは貧しい女性たちのうち3人に1人が生理用品の交換がきちんとできていない、あるいはお金が足りず、トイレットペーパーなどで凌いでいると回答。また、この女性たちのうち39%が生理用品不足に悩まされていると回答しています。

    このような生理の貧困が問題化しているフランスで、若いスタートアップやさまざまな団体が積極的に活動を始めています。

    生理用品ブランドとして環境と健康に取り組む

    この問題にブランドとして取り組んでいるのが、Dans  ma culotteです。

    「Dans ma culotteー私のパンツの中」というブランドは、フランス製で、お肌にも環境にも優しい生理用品というコンセプトで、オーガニックのものを提供しているブランドです。製造工程もしっかりと管理し、彼女たちの思いは質の良い生理用品を届けるということから、もっと生理について知ってもらいたい、という部分にまで及びます。

    そんな彼女たちの活動の中に、大学での生理用品の無料配布があります。資金面で苦労をしている学生たちに、月経カップや布ナプキンなど、生理用品の知識を広めることが目的だそうです。

    2019年9月にレンヌ第二大学で無料配布イベントが開催されました。ブランディング担当のマリオン・コンドミナさんによると、開始後わずか1時間で、用意していた900枚のオーガニックのコットン製布ナプキンがなくなったそうです。

    その直後にも、ナンテール大学でも同様のイベントを開催するなど注力しています。

    このブランドが掲げている価値観は、タブーレス、人道支援、有害物質ゼロ、責任ある製造です。「大学などで配布を行って、彼女たちと直接会話をすることで、タブーを無くしていきたいんです」とマリオンさん。

    貧困と生理というダブルのタブーをなくすためには、このような活動が必要不可欠なのです。

    毎月くる生理。環境と健康を大切にしようというモットーを掲げているこのブランド。彼女たちの取り組みはフランス国内に止まりません。さまざまなアソシエーションとパートナーシップを組むことで、世界中にDans ma culotteの製品を届けています。

    ナプキンを寄付して届ける。「生理の貧困」をサポート

    フランスで最初に生理の貧困に取り組んたのが「Règles élémentairesー基本ルール(生理)」という団体です。

    フランス語で、規則やルールという言葉と生理という言葉は同じです。それをかけて「基本ルール(生理)」という名前の団体があります。設立者はフランス人ですが、イギリスに留学をしていたときに生理の貧困という問題を知り、フランスで何かできないかと考え、立ち上げたそうです。

    この団体の活動の柱は2本。
    1. 生理用品の回収
    2. 生理に関するタブーを壊す

    まずは回収について。

    フランス全国で生理用品を回収し、必要としている人たちの元へ届けています。

    具体的には、街中のお店や市庁舎内などに回収用ボックスを設置。そして、誰でもそのボックスにナプキンなどを寄付できるという仕組みです。

    私もパリの12区の庁舎内に設置してあるボックスに数枚の生理用品を入れてきました。

    入り口のすぐ目立つところに、赤×白の柄のボックスがあり、簡単な説明が案内されています。あとは持参したナプキンやタンポンを入れるだけ。とってもシンプルです。
    そのほかにも、オーガニックスーパーなどとも提携をし、回収ボックスを設置しています。さらに、地域のイベントや若者が集うフェスティバルなどでも実施しているそうです。

    ただし、広報のマリオン・クルゼさんによると、この団体はあくまでボックスの設置と中身の回収までを担当しているとのこと。そのあと、実際にホームレスの女性たちの手元に届けるのは、彼ら・彼女らとの関わり方を最もよく知っている、それを専門としている団体や組織に託すそうです。

    単にばら撒けばいいというわけではなく、本当に必要としている人たちに必ずいい形で届けられるよう配慮しているのです。

    次に2本目の柱である、タブーを壊すということについて。

    この団体は、取り壊し予定前の元病院の場所をオフィスとしています。たくさんのアソシエーションや難民受け入れのシェルターなどが入っている場所なのですが、そこでさまざまなイベントを開催しています。

    基本的に誰でもウェルカム、そして無料です。イベント中にもちろん回収ボックスを設置し、説明しますが、それだけではなく、DJを呼んで、食べたり飲んだりする、とにかくみんなにとって楽しいイベントだそうです。

    この11月でちょうど4年目を迎えるので、それを機会に年末にはまたDJイベントを予定しているとか。このように、楽しいオープンな雰囲気のイベントを通して、さまざまな人に生理や生理の貧困について知ってもらうというのもこの団体の大切なミッションの一つです。

    (インスタEmbed:https://www.instagram.com/p/B3FMJh4itI1/

    もちろん「生理の貧困」という問題は草の根の活動も大切ながら、政治への働きかけも大切、とマリオンさんは言います。目指しているのは、生理用品が社会保険で返金されること、あるいは生理用品の無償化です。

    そのために、すでに政府の支出法案に関して公聴会に呼ばれるなど、積極的に政治から変えていくべく、活動をしています。

    マリオンさんは、4年間の活動を通して、少しずつ、とくに若い世代の意識が変化していることを感じると言います。

    たとえば女子高生たちが、学校での発表の自由テーマに生理を選ぶなど10年ほど前にはまだ考えられなかったようなことが起きているそうです。

    一方で、生理用品の無償化や生理の貧困に関して、それが本当に最優先事項なのか、と批判されることも。しかし「生理の貧困とそこから派生するさまざまな問題は、衛生面、そして人の健康に直接関わる問題なのだから、誰がなんと言おうと最優先事項のひとつであることは間違いありません」とマリオンさんは言います。

     *

    生理の貧困とはまだまだ知られていない社会問題のひとつ。

    当たり前だけれど、生理というのは生理用品を使わなければ乗り越えられないことなんだと改めて痛感させられました。たくさんの人々がこの生理と貧困というダブルタブーに苦しまされているのが現状です。

    でも驚いたのが、生理の貧困に取り組む人たちのその明るさです。まさしく、彼女たちがタブーに光を当てている、と感じました。まずは身近から、そして政策まで。その道のりは長いですが、今回の取材を通して、望みがあるのではと、ちょっと明るい気持ちになりました。

    大野 舞
    6歳の双子の母。出産前は生理は一年に数回のみ。産後ようやく毎月生理がくるようになる。なので、30代半ばだが、生理経験は浅い。フランス在住。

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