普段、当たり前のように使っている言葉も、ふと気づいた瞬間から違和感を感じるようになることがある。
私がその言葉に疑問を感じたきっかけは次女の発したひと言からだった。
生理中に何度も一緒にお風呂に入ったことはあるのに、その日、私の経血をみて次女(当時6歳)が嫌そうな顔をしながら「汚い!!」と発したのだ。
次女からすればうんちやオシッコと同類のように思えたのかもしれない。でもいわれた私は大げさかもしれないが何かを否定されたように感じ、そして落胆した。生理中のママは娘にとって汚いものなのか、と。
長女は「この血は元々赤ちゃんのベッドになるための栄養分なんだよ。だから大事なもので汚いものじゃないんだよ」と伝えた。私の娘に似つかわしくない、なんともできた長女である。
なぜ「汚い」と思うのか?
その後しばらくモヤモヤしていた。なぜ汚いと思うのだろう。そして恥ずかしながら、実は私も経血は汚いと思っていた時期があった。それはなぜなのか。
ふと思い出したのが実家のトイレ。うちのトイレの壁には「備え付の紙以外はご使用にならないで下さい。生理用品等は備え付の‘汚物入’にお捨て下さい。」と書いてあるプレートが貼ってあった。
25年以上前に父がトイレが詰まらないように警告のために貼ったと思われるのだが、私はトイレに入ると、ついついそれを読んでしまっていた。
そう、私がずっと違和感を感じていた言葉の正体が判明した。「汚物入」という言葉である。
汚物……おぶつ……。
経血のついた生理用品は汚物。いや、確かに汚物かもしれないけれどもそういわれるとなんだか嫌な気持ちになるのは私だけだろうか。
サニタリーボックス、世界の呼び方は?
ちなみに英語ではSanitary box(サニタリーボックス)という。Sanitaryは「衛生の、保健衛生上の、衛生的な、清潔な」という意味なので「汚物(英語ではFilth)」という言葉は全く入っていない。
最近は日本でもサニタリーボックスと呼ばれるようになってきたけれど、飲食店のトイレの貼り紙等で「汚物入れ」と書かれているのをときどき見かける気がする。
しかも前述のプレートも調べてみると未だに同じものが全く同じ文言で販売されている。25年以上も経つのに!
試しにハンガリー人の夫にハンガリー語で何というのかをたずねてみると「Sanitary box」と同義の意味の「Egészségügyi doboz」(発音が難しすぎて聞き取れなかった笑)というらしい。
「日本では‘汚物入れ’っていわれることもあるよ」と夫に話すと、
「汚物入れ!!あり得ないネーミングだな!!」と驚いていた。
他の国では何という名称なのか気になってきたので外国人の知り合いに聞いてみた。
・中国語
「衛生棉盒=サニタリーコットンボックス」または「衛生棉收納盒=生理用ナプキン収納ボックス」
・フランス語
「boîte sanitaire=サニタリーボックス」
・ポルトガル語
「cesto de produtos de higiene feminina=女性用衛生用品のバスケット」
・ポーランド語
「Kosz na odpady sanitarne=衛生ゴミ箱」
すべての国を調べたわけではないが、知人のいる国では「衛生」という言葉が使われていることが多かった。日本のように「汚物」という単語は一切使われていない。
「汚物入れ」というのを「サニタリーボックス」といい換えるだけ、そんなことは些細なことかもしれないし、気にすることではないかもしれない。
でも私は「汚物入れ」とは呼びたくないし、娘たちには近い将来、そして長い間付き合うことになるであろう経血を「汚物」と感じてほしくない。
本当に小さな違和感かもしれないがこういうことを話し合ってみるのも、生理をポジティブに捉えらる小さなきっかけになるのかもしれない。
余談だが、夫に聞いてみると男子トイレには普通のゴミ箱は置いてあることもあるが、サニタリーボックスというものは置かれていないらしい。
尿もれパッドとかつけている男性もいると思うのだけれどそれはどう処理しているのだろうと疑問に思った。