日本の30代以上の女性の30%が性体験がないと言われています。
48歳まで処女だった私が自分の経験を書きたいと思ったのは、同じように性体験がない30代や40代の女性に「特別なことではない」と伝えたいという強い思いからでした。しかし、コラムを書いて発信しても同じような経験者の声を聞くことができず、少しもどかしい思いがありました。
そこで今回は、ランドリーボックス編集部の協力を得て、「性体験がない」、「長い間処女だった」という人の中から取材に協力いただける方を募集。今回は40代で現在も処女であるMさんからお話を聞くことができました。
インタビューで見えてきたのは、悩みながらも「性体験ははただの人生の通過点」と語る、前向きな姿でした。
深夜番組でセックスを知った中高生時代
今回インタビューを受けてくださったMさんは、40代後半の女性。性に関しても特に厳しい家庭ではなかったと言います。
ーーセクシャルなことに対しては、タブーではないご家庭だったとのこと。幼少期から10代では性についてどのような価値観を持っていましたか?
親とは性に関する話をオープンにすることもありませんでしたが、とくに干渉されることもありませんでした。テレビを見ていてセクシャルなシーンが出てきても、スルーでしたし、子どもの頃から自室を与えてもらっていたので、テレビ番組などは自分の部屋で見ることが多かったからかもしれません。
性に興味を持ったきっかけは、中学生のときに読んだ山田詠美さんの『放課後の音符(キイノート)』という小説でした。この小説が好きだったんです。内容は性に奔放な女子高生たちの話。「セックスってこんな感じなんだ。男性と付き合うってこんな感じなんだ」と、新たな世界を知れたことが印象に残っています。
ーーセックスという行為についてはどのように知りましたか?
ちゃんと知ることになったきっかけは、自分の部屋で見ていた深夜番組でした。今はそうでもありませんが、私が中高生のころの日本の深夜番組は、露骨にエロいシーンを流したり、AVを普通に紹介していたんですよね(笑)。その中で「セックスってこういう行為をするんだ」と知りました。
ーー当時、恋愛はしていましたか?好きな人とセックスしたいと思っていましたか?
中学生になってから好きな人ができました。でも、恋愛に夢見ているというか、「付き合う。その先は結婚」という単純なイメージでしたね。
好きな人と付き合うことに憧れはあったけど、その先の性行為には興味がなかったという感じでしょうか。正直言って、自分がセックスをすることを想像したことがなかったです。
深夜番組でセックスシーンを見ても、過剰に演出された映画やドラマの世界の話で絵空事のようでした。そのようなシーンを見てドキドキはするけど、自分がその行為をするのか?とは考えなかったですし、自分ごとに置き換えられなかったのだと思います。
転機になった、ある人へのカミングアウト
ーー処女であることの悩みはありましたか?
だんだん成長していくにつれて、周りからは「男性とお付き合いして性体験を済ませた」という話もでてくるように。「男性とお付き合いしたことがない自分は遅れているのではないか?」と、「彼氏いない歴=年齢」に焦りやコンプレックスを抱くようになりました。正直30代に突入するまでは、処女であることが恥ずかしくて仕方なかったですし、誰にも言えずにいました。
さらに、仕事もつらいことが多く重なり、体調を崩してしまい、自分に自信が持てなくなっていきました。正直、恋愛なんてできる状況ではなく、生きていくだけで必死でしたから。
そんな中、転職した先で知り合った年下の男性同僚と仲良くなったんです。彼とは性別は関係なく気楽に話せる仲でした。
ふとしたきっかけで、彼に「自分は男性とお付き合いしたことがなく処女だ」とカミングアウトし、「処女であることが恥ずかしい」と伝えたんです。すると彼は「好きな人だったら処女であることは気にしない」と言ったのです。
その言葉を聞いて、「なんだ、私が悩んでいたことはそんなもんなのか」と、これまで私を縛り付けていた「誰とも付き合ったことがない処女=恥ずかしい」というしがらみがす〜っと消えていったのです。
それまでは付き合った経験がないことを恥ずかしくて言えずにいましたが、このことをきっかけに、仲良くなった人にも「今まで誰とも付き合ったことがないんだ」と言えるようになり、とても気が楽になりました。
ーー彼の言葉は、「これまで経験がない。恥ずかしい」という自分のコンプレックスを溶かしてくれたんですね。
それからは、「自分はこれでいいんだ」と思えるようになって、自己肯定感が高まりました。それまでは「セックスしない自分は一人前ではない」という思いがありましたが、彼に話したことで「別にセックスはしてもしなくてもいいし、経験することはただの人生の通過点でしかない」と思えるようになったのは、大きな転機でしたね、
今も処女ですが、もう昔のような焦りや恥ずかしい思いはありません。「これが私」なので。
今はセルフプレジャーで満足
ーー好きな人がいたらこれからセックスをしたいと思いますか?
今は好きな人はいませんが、好きな人がいたらその先の関係として、セックスはしたいと思いますね。でも、「何がなんでもセックスしたい!しなきゃ!」というわけでもないです。
ただ、自分以外の他人と肌を触れ合うことには興味があります。それはやっぱり一人では体験できませんから。女性向け風俗に興味を持ったりもしましたが、やはり躊躇してしまって、踏み出せてはいません。
そういう意味では、セックスという行為に対して、昔ほど執着をしていないのかもしれませんね。
でも性欲はあるので、セルフプレジャーで満たしている感じです。大体週1回くらいのペースでしていますが、今はセルフで満足できている部分はあると思います。
恋愛するよりも一緒に過ごせるパートナーがいたらいい
ーー今はパートナーを探していますか?
恋愛はしてみたいという思いはあるけど、その反面「自分は他人を愛せるのか?」という思いもあるので、積極的には探していません。
最近は「恋愛ってなんなんだろう?」と考えたりするんです。もしかしたら自分の相手は男性じゃないかもしれないし、恋愛じゃなくて友達に対する好きな気持ちの「友愛」でもいいんじゃないかと。そもそも恋愛に対する「好き」ってどういうものなのかな?と考えることもありますね。
ーーこれからどんな人生にしていきたいですか?
恋愛をすることや、誰かと付き合うことは積極的に考えてはいませんが、人生のパートナーは欲しいと思っています。その相手には、性別や恋愛感情はそれほど求めていません。セクシュアリティ関係なく、人として一緒にいたいと思える人がいたらいいなって思いますね。
日本は結婚して戸籍に入ることで家族になるという考え方が一般的ですが、人それぞれのパートナーシップの形があると思うんです。時代とともにそういう流れになってきていますよね。
私はさまざまな事情があって子孫を残せないので、いわゆるステレオタイプな家族を作ることはできないと思うのですが、いろんな人に会って、さまざまな生活スタイルを見ていくなかで、「結婚=ゴールじゃない」と思えるようになりました。
だから、今は自分が楽しければいいと思うし、自分を大事にしなきゃいけないと思っています。いろんな体験を通して成長し、その小さな積み重ねが未来を作ると思います。し
最終的には、「自分が死ぬときに後悔しない人生」を歩めたらいいですね。自分の長い人生の時間軸の中に、「パートナーがいてくれたらいいな〜」って、そんな気持ちです。