仕事の休憩中につまむお菓子やドリンクは、私たちにとって欠かせない存在だ。

小腹を満たし、喉を潤してくれるだけでなく、気分転換やモチベーション維持、「集中したい時に」など、さまざまな役割があるように思う。お気に入りの飲み物やお菓子をデスクに忍ばせて日々頑張っている人もいるはずだ。

最近では健康意識の高まりから「プロテイン配合」、「睡眠の質をあげる」といった機能的なアイテムも豊富に揃う。
そんな中、明治の『フェムニケアフードα-LunA(アルファルナ)』は「生理に、わたしに、プラス」というキャッチコピーを掲げ、女性に寄り添った商品を展開する。

α-LunAシリーズは顆粒、ミルクチョコレート、ドリンクなどのラインナップで、女性の健康課題を”おいしく”応援してくれる。

さらには、学生向けに女性のカラダにまつわる啓発プログラムにも取り組んでいるという。一体なぜなのか。

フェムニケアフードのブランド担当、吉田菜々絵さんに、ブランド立ち上げから啓発の取り組みに至るまでの歩みを聞いた。

「生理はニッチじゃない」理解を得るための試行錯誤と、驚きの変化

——フェムニケアフード事業の立ち上げには、どのような経緯があったのでしょう?

吉田さん(以下、同):もともと社内で女性の「健康・美容」について議論していたとき、少し行き詰まってカフェで息抜きすることにしたんです。私が「今日生理で大変なんだよね」と話すと、他のメンバーも「私もなんです」と生理の話題になりました。

あらためて社に戻って話してみたら、みんな生理にまつわる痛みやイライラ、眠気などさまざまな症状に悩んでいることがわかりました。普段一緒に仕事をしている同僚も、実は生理がひどかったという人もいてこれまで我慢しながら過ごしていたんだなと、びっくりしました。

これは大きな社会課題なのではないかと考えたんです。明治としてしっかり取り組みたいと思いました。実際に調査をしてみると、幅広い年齢の女性が悩んでいるものの、「病院に行った」という人は少なかった。「婦人科に行くことに抵抗がある」、「時間がない」、「お金がかかる」などの理由からでした。
悩んでいる人も、どうにかしたいと思っていて「実際に何をしたらいいかわからない」という声も多かったです。婦人科を受診する必要性もきちんと啓発しながら、お菓子メーカーとしては、美味しく楽しくサポートできるものを提供できればと商品開発を始めました。

—— 生理をテーマに。周りの反応はいかがでしたか?

男性社員からは「生理というニッチなものをやるの?」という反応がありました。生理ってニッチだと思われているんだ……とショックでしたね。生理のある人からすると、毎月くるし、生理期間の一週間だけじゃなくて、その前後も大変なことが多いですよね。

でも、男性からしたらそうではないので、理解が追いつかないのもわかります。まずはそこから変えていかなければと思いました。

生理に関するデータを明示する際、経済的損失にも言及し「社会課題」と捉えてもらえるようにしました。困っている人が、こんなにたくさんいるのだから取り組むべきだと。

生理について話していくと男性社員も「そういえば妻が大変そうだ」と話してくれるようになったんです。なんとなく感じてはいたけれど、これまでちゃんと学ぶ機会がなかっただけなんですよね。

徐々に「子どもたちの未来のために、いい社会を作っていきたい」と発言する男性も出てきて、前向きな変化がありました。

続けやすさと、美味しさへのこだわり

—— 社内の理解が深まることでポジティブに開発へ進めたんですね。α-LunAのラインナップはどのように決めたのでしょう?

例えば弊社のブランド「VAAM」はドリンクだけでなく顆粒タイプも一定の支持者がいます。水なしで飲めて、持ち歩けるメリットがある。「α-LunA 顆粒 レモンミント風味」は、その剤形を活用しています。

日々の生活に交えて召し上がっていただきたい商品なので、チョコレートやドリンクなど、さまざまな生活シーンに取り入れてもらえるようなラインナップを揃えました。

—— 健康食品=あまり美味しくないイメージもありますが、α-LunAはちゃんと美味しいところがいいですよね。

明治の定番商品であるお菓子や食品と、同じ研究者・開発者が担当しているので味にはかなりこだわっています。開発に約4年かかっています。続けていただくためにも美味しく召し上がっていただきたいです。

パッケージに込めた思いと、ある「仕掛け」とは?

—— パッケージにはどのような思いが込められていますか?

色使いやデザインは男女関係なく、フラットな印象になるように意識しました。そして、そばに置いておきたいと感じる親しみ感や温かみをイメージしています。

2022年10月に発売し、より商品価値を分かりやすくお伝えするために2023年9月よりキャッチコピーを「生理に、わたしに、プラス」に変更したパッケージへリニューアルしました。

パッケージに関する調査では、キャッチコピーの変更について、約97%の人が「パッケージと商品コンセプトが合致する」と回答。新パッケージの購入意向は約70%で既存パッケージの購入意向を大きく上回る結果となりました。

工夫した点でいえば、チョコレートのチャック袋の開封後は「生理」の文字が見えなくなることです。

このアイデアを出してくれたのは男性なんですが「チョコレートは外出先で食べる方も多いと思うから、気にされる方に配慮したい」と言っていて、私も「なるほど」と思いました。

開封後はキャッチコピーの生理の文言が切り取られる。購入時はわかりやすく、購入後は気にする人に配慮した仕様。

勉強会をきっかけに起きた変化

—— 女性特有の健康課題に対し、どのように啓発活動に取り組んでいますか?

まず、社内の理解を深めたくて、社長を含む全社員に向けて生理の勉強会を開きました。

また「女性活躍」を推進している、人事部D&Iチームと連動するかたちで実施した社内セミナーで、さまざまな部署の女性たちの意見収集をしました。セールスの女性からは「営業同行をしているときや、会議が長引いたとき経血が漏れてしまって嫌だった」という意見がありました。

工場勤務の女性からは、「工場ではトイレ休憩の時間が決められているから、生理用品を取り替えられる回数が少なくて困った」という声も。そうした悩みを抱えていることを男性社員が初めて知って、生理用品を工場のトイレに配置したりと、生理に対して配慮する工場が増えてきました。

また会社主催のスポーツイベントでも、一般のお客様向けにトイレに生理用品を設置したという報告を受けました。勉強会をきっかけに、男性社員の行動に変化が現れ社内でのムーブメントが見えてきて、こうやって少しずつ世の中が変わっていくんだなと実感しました。

学生向けの啓発活動に注力するわけ

—— 学生向けの啓発活動にも取り組んでいるそうですが、どのようなきっかけでしょうか。

試しに大学生向けに生理のセミナーをしてみたところ「もう少し早く知りたかった」という声を多く聞きました。そこで中高校生にヒアリングしたら、生理の情報源として、ネットで調べているという人が多かった。ただネットだと必ずしも正しい情報に辿り着けるとは限りません。きちんと正しい知識が得られるようにしたいと考えたのがきっかけです。

早いうちから男女ともに学ぶことが重要で、それがタブー視しない雰囲気に繋がると思っています。現在は学生向けの啓発プログラムを準備中です。

—— 中高生にヒアリングしてみて印象的だったことはありますか?

自分自身もそうだったように、自分の体のことなのに生理についてあまり知らない女の子が結構いました。保健室に行くとそのぶん授業に遅れちゃうから行かずに我慢していたり。学生ならではの声もたくさん聞きました。

一方で、私が話を聞いた男の子たちは「生理についてもっと理解したい」と話してくれました。どんなことを知りたい?と聞くと「どれくらい痛いのか知りたい」と。「お腹にボールをグッと当てたときみたいな痛みだと聞いたことがあって自分で試してみた」という子までいました。

「お腹痛いときに温かい飲み物がいいって聞くけど、何度くらいがいいんですか?」「何をしてあげたらいいんですか?」と質問してくれた子もいて、熱心だなあと感心しました。

身近な男性(生理のない人)がしてあげられることって学校の授業では習わないですよね。そういうことも教えてあげられるといいんだろうなと思いました。

—— 子どもの純粋な気持ちに触れると、世の中が変わりそうな希望が湧きますね。

そうですね!大人が、まだ早すぎるんじゃないかと思って伝えていないだけで、子どもはちゃんと自分で考える力を持っています。大人がちゃんとした知識を得て、それを子どもにも与えてあげなくては、とより強く感じました。

—— 中高生向けに生理の啓発活動を行う中で、何か気をつけていることはありますか?

特に生理が始まる第二次性徴の時期は、「性の不一致」に悩んでいる子もいると思います。だから私たちが実施する勉強会が、子どもにとってネガティブに働くことのないよう気をつけています。

例えば「生理は赤ちゃんを産むための準備です」といった表現は、違和感を与えたり、傷ついてしまう子もいるかもしれません。どう伝えたらいいのか当事者の声も踏まえて考えたいので、LGBTQの啓発活動をされている団体の協力のもと、アドバイスをいただいています。

生理はあくまでも身体に起こる“現象”と捉え、女性/男性ではなく「生理がある人/ない人」というフラットな表現を心がけています。言葉の表現、伝え方については今も勉強中です。

未来の「過ごしやすさ」のために、フェムケア市場を盛り上げ、根付かせたい

—— 啓発活動に力を入れることは、経済的な負担をともなうと思いますが、明治としてはどのような捉え方をしているんですか?

もちろん事業である以上、売上の成果をあげなければなりません。ただ弊社の場合、上層部も以前から女性特有の健康課題を社会課題として捉えているので、α-LunAに関しては「問題解決に向けた啓発活動をしていきましょう」という考えです。

今の中高生たちは、未来の社会を担う存在です。もし今すぐ売上に繋がらなくても、彼らが将来大人になったときに、明治を選択してくれたらいいですし、他の選択肢も含めて過ごしやすい日本を作ってくれたらいいなと考えています。

—— フェムテックのムーブメントとともに、さまざまな企業がフェムテック事業に参入していますが、収益がともなわずサービスを閉じてしまうケースも少なくありません。

私たちはフェムテックというブームに乗ってこの事業を立ち上げたのではなく、まずイシューがあって、それを解決するために商品作りをはじめたので、スタート時の視点が違うのかもしれないですね。

もしブームに乗るかたちで始めたとしたら、きっと売上げばかりを求められてしまうと思います。この事業は社会課題の解決を第一の目的としているので、早々に辞めるということはありません。

—— 社会課題の解決のためには、商品を提供するだけでも難しいし、啓発だけでも難しいです。その両輪に取り組む覚悟が伝わってきました。今後、力を入れたいことはありますか?

商品だけではなく啓発とセットで、相互理解を広げ、この市場を根付かせたいです。現時点でもさまざまな企業・団体と協業していますが、最近ではドラッグストアにフェムケアの棚を提案しています。

機能的な食品や吸水ショーツなどさまざまな商品がありますが、他の商品と比べて価格がやや高いこともあり、同じように並べても価値が伝わりにくいです。消費者も気になっていても「高いから失敗したくない」と手が出しづらかったり。

メーカーも店舗もどう売ったらいいかわからず苦労していますが、興味を持っていただいているのに、棚からこぼれ落ちてしまうのはもったいないですよね。

そこをなんとか解決したくて、明治が率先して「フェムケアアイテムに特化した棚を作ってはいかがでしょう?」「こういう売り場つくりませんか?」と具体的な提案を始めています。

私自身も使ってみて便利なアイテムがたくさんあることを実感しているので、弊社の商品に限らず、各社のフェムケア商品の良さを知ってもらいたいです。

明治としては、女性特有の健康課題は生理だけではありませんので、今後は幅広く展開できたらいいなと思っています。

啓発活動は、少し遠回りだと思いつつも絶対に必要なことなので、今はその土台づくりのためにパイプを敷いていっています。

明治フェムニケアフード α-LunA 

写真:川しまゆうこ

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