生理前に関節痛を感じることがある人は、PMSの症状である可能性があります。PMSとは生理が始まる3~10日程前に訪れる身体と心の不調のことです。ほかにも、更年期に差しかかる年齢の場合は更年期症状である可能性も。この記事では、関節痛の原因や対処法について説明します。
PMSの原因
PMSが起こる原因としては、以下の要因があると言われています。
・生理周期によるホルモン変化
・脳内の神経伝達物質の変化
PMSのおもな症状
PMSの場合は、関節痛以外に以下のような心身の不調を感じることがあります。
●PMSによる身体の不調
・身体全体や一部がむくむ
・胸が張る
・食欲低下・過食
・頭痛
・腰痛
・下腹部痛
・眠気、など
●PMSによる心の不調
・気持ちが落ち込みやすくなる
・怒りっぽくなる
・感情が不安定になる
・集中力が続かない、など
PMSを緩和する方法
PMSを緩和する方法としては、以下の方法があります。
食事に気を配る
PMSの症状は、以下のような栄養素を摂取することで改善すると言われています。
・複合炭水化物
全粒粉のパン、パスタ、シリアル、大麦、玄米、豆類などに多く含まれています。
・ビタミンB6やカルシウム
また、脂肪や糖質、カフェインのとりすぎはPMSの症状が悪化しやすいと言われているので、控えましょう。
ストレスを溜めないようにする
PMSは、ふだんより心身が不調な時期です。生理予定日から逆算するとPMSの時期がわかるので、あらかじめ無理なスケジュールにならないように気をつけましょう。
そして、ストレスはPMSの症状を悪化させると言われています。なるべく自分がリラックスできるように湯船にゆっくりつかったり、好きな音楽を聞いたりするなど、穏やかな気持ちでいられる習慣を取り入れましょう。
関節痛は、更年期症状の可能性もある
関節痛を感じる場合、更年期症状である可能性もあります。更年期症状とは更年期になって卵巣の機能が低下し始めることで、女性ホルモンの分泌が不安定になりさまざまな不調が起きることです。日常生活に支障が出るほど症状が重い場合は、更年期障害と診断されます。
更年期になると、関節痛のほかに以下のような症状を感じることがあります。
・首や肩のこりがひどくなる
・疲れやすくなる
・頭痛
・ホットフラッシュ(のぼせ・ほてり・発汗)
・腰痛
・不眠
・イライラ
・動悸・息切れ
・気分の落ち込み
・めまい
・腟の乾燥や違和感
・性交痛
更年期は生理が止まる「閉経」の前5年、後5年の10年間のことを指します。日本人の閉経の平均年齢は約50歳ですが、閉経の時期には個人差があります。
生理前などの定期的なタイミングで関節痛を感じる場合はPMSの症状の可能性があります。一方で、更年期に差しかかる年齢の場合は更年期症状の可能性もあります。
自己判断することは難しいので、生理のタイミングや閉経近くに関節痛が重い場合は婦人科でも一度相談してみましょう。
婦人科での治療
婦人科では、原因に応じて以下のような治療が行われます。
PMSの場合
PMSの場合は、漢方や低用量ピルを使って症状を和らげます。低用量ピルは排卵を起こさないようにする作用があり、女性ホルモンの変動が少なくなります。PMSによる身体の症状を和らげる効果があります。
更年期障害の場合
更年期症状が重く、更年期障害と診断された場合は、減少する女性ホルモン(エストロゲン)を補うホルモン補充療法(HRT)や、漢方薬による治療が行われます。
生理前の関節痛はPMSの症状である可能性があります。一方で、閉経前の関節痛は更年期症状のこともあります。関節痛が重い場合は整形外科を受診して相談しながら、婦人科でも一度相談してみましょう。
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。