不妊治療には高額のお金がかかります。そのため、子どもを望んでいるけど不妊治療をするべきか悩んでいる人がいるかもしれません。そんな人に知ってほしいのが不妊治療の助成金です。この記事では、不妊治療に関連する助成金の概要や申請方法について解説します。
不妊治療をとりまく状況
20~49歳までの夫婦を対象に行った調査によると、不妊治療を現在行っているもしくは治療の経験がある夫婦の割合は、結婚0~4年目が17.6%、結婚5~9年目で12.5%、結婚10~14年目では36.8%にのぼります。(※国立社会保障・人口問題研究所「第15回出生動向調査」より)
不妊治療にはいくつかステップがあり、一般不妊治療と高度不妊治療に分けられます。
●一般不妊治療
一般不妊治療とは、タイミング法や人工授精などのことで、費用は数千~数万円/回です。
●高度不妊治療
高度不妊治療は、体外受精や顕微授精などのことで、費用は20~60万円/回ほどです。
このように、不妊治療には多くの費用がかかります。そこで活用したいのが不妊治療に関する助成金です。
不妊治療の保険適用範囲と助成金について
不妊治療で保険適用されるのは、タイミング法と呼ばれる治療法のみ。人工授精や体外受精・顕微授精などは保険が適用されません。
そして、助成金は特定不妊治療を対象としています。地域によっては一般不妊治療が助成金対象となる場合があります。
不妊治療に関連する助成制度は、主に以下の3つがあります。
・特定不妊治療費助成制度
・各都道府県独自の助成制度
・市区町村独自の助成金
特定不妊治療費助成制度
特定不妊治療費助成制度は、特定不妊治療を行っていて条件に当てはまる夫婦に対して、助成金を給付する制度です。
●対象者
・特定不妊治療以外の治療法による妊娠の見込みがないか、極めて少ないと医師に診断された夫婦(事実婚は不可)
・治療期間の初日時点で、妻の年齢が43歳未満
※平成25年度以前から特定不妊治療の助成を受けている夫婦で、平成27年度までに通算5年間助成を受けている場合は助成対象になりません
●助成内容
・特定不妊治療1回につき初回は30万円、その後は15万円まで助成。通算助成回数は、初めて助成を受けた際の妻の年齢が40歳未満であるときは6回まで(40歳以上の場合は通算3回)まで助成する。
・特定不妊治療のうち精子を精巣又は精巣上体から採取する手術を行った場合は、上記に加えて1回の治療につき初回は30万円、その後は15万円まで助成する。
●所得制限
年収730万円未満であること(夫婦合算)
(東京都は、2019年4月より905万円未満に変更となっています)
都道府県独自の助成制度
一般不妊治療にかかる費用の一部を助成する制度を都道府県が実施しています。一例として、京都府の助成制度について説明します。
●対象者
・京都府内の市町村に引き続き1年以上住所を有する夫婦(事実婚含む)であること
・各種健康保険に加入している
・生活保護を受けていない。
・京都市内に住所を有している間に不妊治療を受けている。
●助成内容
・京都市内に住所を有している間に受けられた治療に要した医療費の自己負担額を2分の1助成。ただし、人工授精を伴う不妊治療に係る助成額については、1年度ひとり当たり10万円を限度とします。
市区町村独自の助成金制度
各市区町村独自で行っている不妊治療にかかる費用の一部を助成する制度です。対象となる不妊治療は市区町村によって異なり、一般不妊治療が助成の対象となる場合もあります。一例として、東京都港区・品川区の制度を紹介します。
●港区の助成内容
・特定不妊治療が対象
・対象者は厚生労働省の条件に加え、港区に住民登録していること
・助成金は不妊治療1年度あたりに30万円、男性不妊治療1年度あたり15万円
・所得制限なし
・令和3年度以前までは妻の年齢制限もなし
●品川区の助成内容
・一般不妊治療、特定不妊治療どちらも対象
・対象者は厚生労働省の条件に加えて、品川区に住民登録していること
・事実婚も助成金対象
・一般不妊治療の場合は5万円/回、特定不妊治療の場合は1回2万5000円~5万円/回
・所得制限なし
確定申告による医療費控除
助成金制度以外には、確定申告によって医療費控除を行う方法があります。
医療費控除とは、1月1日から12月31日の1年間に支払った医療費が10万円を超える場合、税務署に確定申告をすることで所得税が還付される制度です。不妊治療費だけでなくすべての医療費が対象です。
●対象者
不妊治療費を支払った方
●所得制限
医療費控除の対象となるのは、1年間に支払った医療費の合計額から保険金などで補てんされた金額と10万円を引いた額です。保険金で補てんされる金額のなかには、不妊治療費助成金や出産育児一時金が含まれます。(所得金額が200万円未満の人は10万円ではなく「所得金額×5%」の額が差し引かれます)
医療費控除=不妊治療の総額-不妊治療助成金-10万円 |
この医療費控除は、所得税と住民税が決まる要因となる「所得」から控除されるため、医療費控除を行うと所得税と住民税が安くなる可能性があります。(ふるさと納税や住宅ローン控除などを利用している場合は、税負担が変わらない可能性もあります)
助成金を申請するための準備
不妊治療の助成金を申請するためには、まず自分がどんな助成金を受けられるのか確認した上で、申請に必要な書類を調べておきましょう。住んでいる地域によりますが、申請に必要な書類は、領収書のコピー、住民票。戸籍謄本、住民税課税証明書などです。
助成金は申請してから審査があるため、助成金をもらえるまでに時間がかかります。そのため、必要な書類を早めに揃えておくといいでしょう。
今回紹介した助成金制度は2020年9月時点の情報です。今後、対象となる年齢や助成額などの見直しが行われる可能性もあります。まずは、お住まいの都道府県や市区町村にどんな助成制度があるか確認してみましょう。
■参考文献