性や恋愛に関する考え方は、世代や性別によってどう違うのか。

国際協力NGOジョイセフによる、SRHRの啓発プロジェクト『I LADY.』は、若者から大人まで約9,000人を対象にした、性と恋愛に関する意識調査結果を発表した。

本調査の公開にあわせて、ジョイセフでは医療従事者や研究者、若手アクティビストを招き調査結果をもとにSRHRに関するトークイベントを実施。調査結果とともに各専門家からのコメントを紹介する。

2025年の調査結果:https://ilady.world/survey2025/

2023年の調査結果:若者の7割以上がセックスに悩み。性的同意がとれているか自信がない SRHR調査レポート

トークイベントの様子(画像提供:ジョイセフ)

若者は「マッチングアプリ」での出会いが増加「経済的な不安」で結婚ができない現状

出会いの場は、若者・大人ともに「職場・バイト先・学校」が最多。次いで、大人世代ではの「人からの紹介」が2位となったが、若者世代(15歳〜29歳)では「マッチングアプリ」や「SNS」が上位に。

結婚や子どもに関する希望については、若者世代の7割が結婚を望み、6割以上が子どもを持ちたいと回答。

一方で若者世代、大人世代ともに「結婚できない」「子どもを持てない」理由のトップはどちらも「経済的不安」という結果に。

「結婚したいがしていない理由、子どもを持ちたくない理由は、ともに「経済的不安」が第1位となり、大人世代でもそれぞれ、上位に入っています。ずっと言われてきていることですが、結婚や子どもを持つことを希望する人がそれを選択できる社会環境の整備の必要性が、改めて浮き彫りになりました。言い換えれば、政府が行っている少子化対策とのズレが浮き彫りになったともいえます」(ジョイセフ理事 谷口真由美氏)

性やセックスに対する意識の違い

恋人やパートナーに気に入られるために自分を合わせてしまう人は、若者世代が7割以上、大人世代が6割以上。

「性別や世代を問わず、親密な関係であればあるほど相手に自分のありのままを理解してもらいたいと考えていたとしても、実態としては、本当の自分を出すことができず、相手に気に入られようと行動しているということを示唆しています。このことは、自分の生き方に関すること、自分の人生の自己決定権を、相手に委ねてしまうという傾向でもあるといえます」(ジョイセフプレスリリースより)

セックスに関して希望を話したことがある人は、若者・大人ともに約3割。

実際に「イヤなのに応じた経験」や「NOと言えなかった経験」がある人は、若者世代が35.1%、大人世代が52.4%。既婚女性では6〜7割に上った。

男女、結婚の有無の内訳は、既婚大人女性 67.2%、既婚若者女性 65.4%、未婚大人女性 61.5%、未婚若者女性 44.2%、既婚若者男性 42.7%、既婚大人男性 40.6%、未婚大人男性36.7%、未婚若者男性23.7%という結果に。

性的同意の重要性を「絶対に大事だと思う」と答えた人は約9割。しかし「具体的にどういうものか分からない」と答えた若者世代が約4割、大人世代も3割という結果に。

言葉として知っているだけでは不十分で、知識やスキルを学ぶ必要があると考えられる。

セックスのイメージは?

セックスのイメージは、男性は「気持ちいい」、女性は「スキンシップ」「愛が深まる」「子づくり」が上位となり、男女差があきらかに。

特に大人世代の女性では「気持ちいい」は17.7%で、5位以内にランクインしていない結果となった。

若者世代に浸透してきている避妊方法「低用量ピル」

避妊方法についてはコンドームが1位だが、若者大人世代ともに膣外射精という結果に。一方で、低用量ピルによる避妊は大人世代が約9%に対して、若者世代は約14%という結果に。

「避妊法については、全体的にコンドームが主流ですが、低用量ピルを使用したことのある若者は13.6%で、大人の8.9%より多くなっており、徐々に若者に浸透しているようで嬉しいです」(産婦人科医 宋美玄氏)

入手先は「クリニック・病院」が多く、若者世代の女性の約20%がオンライン診療を利用。便利に手に入れたいというニーズがあきらかに。

性に関する情報はどこで得てる?学校の性教育の課題

性に関する情報源は、「インターネット・Webサイト」が最多。若者世代の男性の約28%、大人世代の男性の約30%が「アダルトビデオ・サイト」と回答し、商業ポルノの影響が大きいことがあきらかに。

セックス自体を含めた性教育の充実や、大人も最新の知識を学ぶ機会が必要であることが伺える。

学校で受けた性教育は「役立っている」と回答したのは、若者世代が53.3%、大人世代が27.6%でした。

学校の性教育で「セックス」についてもっと学びたかったと回答した人は、若者世代が32.0%、大人世代が23.5%、「避妊」は若者世代が25.5%、大人世代が27.4%という結果になりました。

若者世代の女性の約5割が「名字を変えるつもり」と回答

自身の名字について、若者世代の男性の約42%は「変えるつもりはない」と回答。

その一方で、若者世代の女性では「変えるつもりはない」は約10%にとどまり、「変えるつもり」または「状況によっては変えてもよい」と答えた人が約50%に。

「結婚するカップルのうち約95%*で女性が改姓するという、性役割が残る現状を反映する結果となり、人生を相手に委ねてしまう傾向があるのは、男性より女性に多く見られる傾向とも合致します」(ジョイセフプレスリリースより)

*厚生労働省「人口動態統計」(2023年)

性に関する知識の普及、自分らしく生きられる社会づくりの重要性

2019年から4回にわたる本実態調査を通じて、ジョイセフは以下のように振り返る。

「調査結果は、性に関する知識不足だけでなく、根深いジェンダー格差、経済的制約、コミュニケーション不足、そして包括的性教育の欠如など、多岐にわたる構造的な問題の存在を明らかにしています。

特に注目すべきは、ジェンダー間、世代間、既婚・未婚といった様々な属性によって、性と生殖に関する体験や意識に大きな格差が存在することです。

男性の性の健康相談における孤立、女性の自己決定権の制約、若い世代の経済的不安による人生設計の困難など、それぞれが相互に関連し合いながら、個人の尊厳と選択の自由を制限しています。「少子高齢化」が進む現在の日本において、人口減少への対策が個人の基本的人権であるセクシュアル・リプロダクティブヘルス・ライツ(SRHR:性と生殖に関する健康と権利)よりも優先される傾向があります。

そのことに警鐘を鳴らすとともに、個人の尊厳と選択の自由を制限する「男/女らしさ」というジェンダー規範を取り払い、現在は異性婚カップルのみが受けられる社会的支援を、シングルペアレント、同性カップル、ひとりで生きる人なども家族形態によらず受けられる制度づくりを進めることで、真に誰もが自分らしく生きられる社会を実現することが、結果として少子化をはじめとする日本が直面するあらゆる課題の根本的解決につながると確信しています。

真の意味でのSRHRの実現には、包括的性教育の基礎教育への導入、ジェンダー平等の推進、そして一人ひとりが自分らしく生きられる社会づくりが不可欠です。

ジョイセフは今後も、この調査で明らかになった課題に真摯に向き合い、皆さまとともに誰もが自分の性と生殖に関する権利を享受できる社会の実現に向けて、より一層努力してまいります」(ジョイセフ)

<調査概要>

・調査期間:2025年5月16日(金)-5月19日(月)

・調査方法:Webアンケート調査

・調査対象:日本国内在住の15-64歳 ※高校生以上

・回答者数:9,018人 

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