海外では同性婚を認めている国もありますが、日本ではまだ認められていません。その代わりに、結婚制度とは異なりますが、一部の地方自治体では「同性パートナーシップ制度」があります。この記事では、同性パートナーシップ制度や導入している地方自治体について説明します。
同性パートナーシップ制度とは
同性パートナーシップ制度とは、戸籍上の性別が同性であるカップルを公的に承認する制度のこと。お互いを人生のパートナーとして生活を共にしている、またはこれから共にすることを約束している同性カップルに対して、地方自治体が独自の証明書を発行します。
同性パートナーシップ制度は異性カップルの婚姻のような権利保障はないですが、同性カップルの想いを尊重する自治体が、同性カップルのパートナー関係を証明するものです。
同性パートナーシップ制度の内容
日本での同性パートナーシップ制度のはじまりは、東京都渋谷区と世田谷区が同性パートナーシップ制度を開始した2015年11月5日です。
東京都渋谷区の同性パートナーシップ証明制度
渋谷区は「同性パートナーシップ証明制度」という名称で運用しています。その特徴は、「渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」に基づく条例であること。条例は法律よりも法的拘束力は弱いですが、違反した場合に罰則が課されることもあります。
■条件
- 渋谷区に居住し、かつ住民登録があること
- 20歳以上
- 配偶者がいない、相手以外のパートナーがいないこと
- 近親者でないこと
■申請方法
以下の書類を提出
- 各自の戸籍謄本または戸籍全部事項証明書(3ヶ月以内に発行)
- 公正証書(「任意後見契約公正証書」と「合意契約公正証書」)の正本または謄本
- 本人確認書類
くわしく知りたい方は、渋谷区Webサイト内の「パートナーシップ証明に関するよくあるご質問」をご確認ください。
東京都世田谷区の同性パートナーシップ宣誓
世田谷区は「同性パートナーシップ宣誓」という名称で運用しています。渋谷区との違いは条例ではなく「要綱」によって定めた制度であること。要綱とは、区役所の基本的な、または重要な内部事務の取扱いについて定めたもので、法的な拘束力はありません。
■条件
- ふたりが区内に在住であること(ひとりが区内在住でもうひとりが区内への転入を予定、もしくはふたりとも区内への転入を予定している)
- 20歳以上
- 配偶者がいない、相手以外のパートナーがいないこと
- 近親者(直系血族又は三親等内の傍系血族)でないこと
■申請方法
宣誓したい日の3日前までに、人権・男女共同参画担当課に連絡し、相談の上決定します。
くわしく知りたい方は、世田谷区Webサイト内の「同性パートナーシップ宣誓」をご確認ください。
同性パートナーシップ制度のある地方自治体の一覧
同性パートナーシップ制度を導入している、ほかの地方自治体は以下の通りです。(※2020年12月7日時点)
●北海道
札幌市
●新潟県
新潟市
●茨城県
全域
●栃木県
栃木市、鹿沼市
●群馬県
大泉町
●埼玉県
さいたま市、川越市、坂戸市、北本市
●千葉県
千葉市、松戸市
●東京都
渋谷区、世田谷区、港区、文京区、中野区、豊島区、江戸川区、府中市、小金井市、国分寺市
●神奈川県
横浜市、川崎市、相模原市、横須賀市、鎌倉市、小田原市、逗子市、葉山町
●静岡県
浜松市
●愛知県
西尾市、豊明市
●三重県
いなべ市、伊賀市
●京都府
京都市
●大阪府
全域
●兵庫県
尼崎市、芦屋市、伊丹市、宝塚市、川西市、三田市
●奈良県
奈良市、大和郡山市
●岡山県
岡山市、総社市
●徳島県
徳島市
●香川県
高松市、三豊市
●福岡県
北九州市、福岡市、古賀市
●長崎県
長崎市
●熊本県
熊本市
●宮崎県
宮崎市、木城町
●沖縄県
那覇市
日本では同性婚が認められていないため、同性パートナーシップ制度は、法律で認められた婚姻関係とは異なります。そのため、同性カップルには配偶者控除や遺族年金などの権利はないのが現状です。今後は、こうした課題をどう解決していくかが、議論されていくことになるでしょう。