ボイストレーナーの遠藤舞と申します。

25歳まで「アイドリング!!!」というアイドルグループで活動していましたが、現在は芸能界を引退し、アイドルさんたちに唄のレッスンをしております。

今回、「ピル」についてお伝えします。

「ピル」とは「低用量ピル(OC)」と言われるもので、中高生のときに保健体育の授業では「経口避妊薬」として教わった人が多いのではないでしょうか。

私は元々、卵巣嚢腫を患っており毎月の生理がつらく、現役アイドルの頃は貧血と痛みに耐えられず握手会を早退してそのまま病院に直行したり、家にいても救急車で運ばれたり、ホルモンバランスの乱れによる肌荒れに悩まされていました。

生理によって体調、見た目、メンタルに不調が出て仕事に影響が出てしまうため、26歳くらいの時に婦人科の先生に相談。治療目的で低用量ピルをすすめられ、ピルの服用を開始しました。

ピルを飲んでいることを周りに伝えると、なんとなく聞いてはいけないことを聞いてしまったような顔をされてしまうことがあります。

ネットで「ピル」を検索したら、下記のような体験談が投稿されていました。

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生理のたびに悩まされる月経痛や倦怠感をなんとかしたくてピルを服用し始め、飲み忘れを防ぐために職場の机の上に置きっぱなしにしていたら、同僚から「ピルを机の上に置くことはコンドームを机に置いてるようなものだからやめてほしい」と言われて悔しくて泣いてしまった
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ピル服用中の現役女子高生ですが、保健の授業で先生が「みなさんの中で飲んでいる人はいないと思いますが」と前置きしてからピルの説明を始めた。教師がすすんで生理が辛い女の子の肩身を狭めないでほしい
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このようなエピソードを見て、少しずつ理解が進んできたとはいえ、いまだに日本は偏見バリバリの低用量ピル後進国なんだなぁと、悲しくなりました。

とはいえ保健体育の授業で【ピルの役割=避妊】と習い、避妊以外の効用を教えてもらえなかったので、婦人科の先生の説明を受けるまでは、ピル=なんとなくいやらしくっておおっぴらにするのはタブー、みたいな偏見を私自身も持っていました。

現在は仕事や年齢、ライフスタイルの変化にともない、月経痛や経血の多さが以前より改善されたためピルの服用はしていません。

でも20代後半からピルに助けられたことが非常に多く、もっと早くその存在を正しく認識して取り入れていれば、あの時あんな思いせずに済んだかもしれないと感じています。

少しでも生理で苦しむ女性が減ったり、また男性にも理解が得られるといいなと思っていますが、やはり低用量とはいえホルモンに影響を及ぼす薬であることは間違いありません。今回は、副作用等も調べた上で、ピルについて改めて書いていきたいと思います。服用経験があるので、実際服用して感じたことも絡めて書いています。

ピルの基礎知識

Photo by Reproductive Health Supplies Coalition on Unsplash

1. ピルは毎日決まった時間に飲む

毎日同じ時間に飲むことで効果が得られます。ライフスタイルに合わせて、飲み忘れにくい時間を決めましょう。私は常にピルを持ち歩いて、スマホのアラームで夜7時にセッティングして時間を守っていましたが、夜7時だと普通に仕事をしていたり、誰かとご飯に行ってたりすることが多かったので、その場にいる人に「こんな時間になんのアラーム?w」としょっちゅう聞かれてめんどくさかったです。突っ込まれるのがダルい人は朝イチとか寝る前がいいかもです。

2.ピル飲んでいても生理はくる

ホルモンの含まれていない偽薬期間(休薬期間)に血は出てきますが、量も少ないし生理痛も軽いです。

3.必ず病院で処方してもらう

ほしい!と思ったらお近くの婦人科にいきましょう。そこからの流れは婦人科医さんが進めてくれます。とりあえず、血液検査をすることが多いと思います。

4.料金

私の場合、自費診療だったので処方せん料を含めて¥3,000〜¥4,000くらいでした。半年に一度血液検査も必要となります。月経困難症、子宮内膜炎の治療のために処方する場合には保険適用となるそうです。

5.将来の妊娠に影響はない

ピルを飲んだからといって妊娠しづらくなることはないそうです。

低用量ピルを飲むことによって得られる効果

1.避妊効果

正しく飲むことによって99.8%以上の避妊効果があります。女性が女性自身で避妊をすることができるというところも利点です。

2.月経痛が軽くなる

これは私もだいぶ助けられました。立てない、というかのたうちまわる程の痛みで、痛み止めも効かないくらいつらかった生理痛ですが、軽く腰や下腹部あたりに鈍痛があるかな程度の痛みに軽減されました。快適そのもの!(注:個人差あり)

3.経血の量が減る

これもすごく助かりました。ナプキン1枚が30分で満杯(?)になることもあり、タンポン+ナプキンの合わせ技も無意味。ロケ中などトイレになかなか行けない時に漏らしてしまい(衣装だとスカート一択で漏れガードが無理)ロケ先のレストランの従業員さんに紙ナプキンを持ってきてもらったり、舞台本番中に漏らして衣装を汚してしまった時は別衣装で私が出演中に衣装さんに血のついた衣装を洗っていただいたり……それはそれは大変でしたが、体感だと3分の1以下に減りました。血が出ている日数も短くなりました。(注:個人差あり)

4.周期が安定するし生理をずらすこともできる

生理周期が安定するので、ナプキンを予定日のだいぶ前から持ち歩いて、くるかなこないかなとソワソワせずにすみます。旅行やプール、大事な仕事のときに生理を少しずらすこともできます。

5.生理前のイライラ軽減

生理前のあのやり場のないイライラ感が少なくなります。精神衛生も保てるのですね。(注:個人差あり)

6.ニキビ・多毛症に効果あり

男性ホルモンの産生、活性を抑制するため大人ニキビに効果があるとのことです。私は長年頰やフェイスラインのニキビに悩んできましたが、ピルで!ほんとに!治りました!!(注:個人差あり)

7.生理痛の原因となる子宮内膜症の予防ができる

8.子宮体ガン、卵巣ガン、大腸ガンの予防が報告されている

ピルの副作用・服用時に気をつけなければいけないこと

1.毎日決まった時間飲まなければ効果がない

(ので、ズボラすぎるさんにはちょっと厳しいのかもしれない。)

2.服用はじめてすぐのころは、軽い吐き気、頭痛、胸の張り、不正出血などがあるかも

私も不正出血以外は全部あったけど、気づいたら治っていました。

3.太るの?というよくある疑問について

現在のピルは低用量なので太ることはないと言われています。が、正直な話、ピル服用中にダイエットを試みましたが、何をしても体重が落ちず、ピルをやめた途端にストンと4キロ体重が落ちた経験はあります。たまたまかもしれませんが、むくみやすくなることはあるかもです。あとは、ピルの種類と服用する人の体質の相性もありそうです。なんともいえん。

4.血栓症のリスクがある

女性ホルモンは血栓ができやすくなる作用があるそうです。そのため、喫煙者がピルを飲むことはリスクが高いと言えます。タバコを1日15本以上吸う人にはピルを処方していない病院もあるようです。

5.ほかのお薬との併用による悪影響がある

これはここに書くとかなり量が多くなりますので、実際にピルをもらいに行く際に現在飲んでいる薬を申告する&ピルを飲み始めてからはどこの病院にかかる際もかならずピルを飲んでいることを申告することでリスクが軽減できると思います。

意外と、ニキビ治療で皮膚科にかかった際に処方される抗生物質の中にも相性が悪いものがあるので、ニキビに悩まされて皮膚科と婦人科にかかっているという方は要注意です。セントジョーンズワートなど薬局などで普通に買えるサプリメントも併用するとピルの効果が下がってしまったり、ビタミンCを1日1000mg以上飲むと、エストロゲンの効果が上がってしまい副作用が出ることが考えられるようです。ピルと飲み合わせの悪いお薬やサプリは結構多いので注意が必要です。

6.シミや肝斑ができやすくなることもある

ピルを飲むとメラニンの産生能力が上がってしまい、シミや肝斑ができやすくなることもあるようです。気になる人は紫外線予防をしっかりとしましょう。

自分に合うピルを見つけて

本当はあまりやってはいけないことなのかもしれませんが、ピルによって副作用が出た時に別の種類にピルに変えてみては?との助言をいただいたのでピルを4種類ほどハシゴしてみました(1種類につき半年は飲みます)。

その結果「ピルAは気持ち悪くはならないけど、むくみやすいよね」とか「ピルBは体重増えないけど、歌声に影響がでるよね」とか、確かにピルの種類によって微妙に体への影響に差があったと思います。

ちなみにピルが歌声に影響がでるという話ですが、当時習っていたボイストレーナーさんに喉の不調を訴えたところ「ピル変えた?」と聞かれ「変えました」と答えたら「男性ホルモンで男性の声が低くなるように、ホルモンと喉の関係性は密接。低用量ピルでホルモンのバランスが以前と変わり、歌いにくくなってるかも」的な助言をいただいたことがあったのです。しかしこれは私がうろ覚えなので、本当に余談として聞き流してください(笑)。

と、こんな感じでピルに関することを書いてみました。

副作用や注意点もたくさんありますが、これを差し引いても私はピルを服用してよかったなと思っていますし、アイドル活動中(水着や極寒中の撮影も多かった)にピルを知っておきたかったと強く思います。

今回、自分なりに調べて(高須クリニック高須幹弥先生の動画や産婦人科のホームページを参考にしています)副作用も紹介しました。ピルは正しく使えば生活のクオリティが爆上がりする素晴らしいものだと思いますが、同時に「薬」であり、 ほかの処方薬と同様に100%安全とは言い切れないのも事実。手放しで賞賛して女性全員にピルをオススメのもまた違うかなと思ったのが理由です。

実際に副作用のことも考え、ピルなしでも生理痛が軽くなった現在、私はピルを服用しておりません。

そして私は専門医でもなく、ピルを数年間使って良さを実感した上で、生理に苦しむ女性にも、その周りの男性にもピルについて知ってほしいと思っているただの人なので、詳しいことに関してはお医者さんに聞いた方が良いです。

これをきっかけに、苦しみから抜け出す方法に気づく人が一人でもいたり、偏見が世の中からほんのちょっとでもなくなると嬉しいなぁと思います。

(本記事は、2020年1月17日note掲載「アイドル時代に「ピル」を知っておきたかった」を編集し転載したものです)

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