働いている女性が妊娠した場合、喜ぶ一方で「職場への報告はいつするべき?」と悩む方が多いかもしれません。とくに産後も同じ職場で働こうと思っている場合、仕事の調整をうまくしながら産休・育休に入りたいですよね。今回は、職場への妊娠報告をするときに気をつけたいポイントを説明します。
職場への妊娠報告はいつがベスト?
職場への妊娠報告は、いつ報告しなければいけないという決まりはありません。特に困った症状が無い方は妊娠初期をすぎて妊娠5~6カ月ごろに報告する方が多いようです。しかし、妊娠中の体調は個人差があるため、以下に当てはまる方は早めに職場に報告して仕事の内容を相談したほうがよいでしょう。
1.つわりがひどい
つわりは個人差が大きく、ほとんど症状が出ない人もいれば、入院が必要なくらい症状が重い人もいます。たとえば、ある食べ物や飲み物を身体が受けつけなくなる、特定の匂いを嗅ぐと吐き気がするなど、気分が悪くなる原因もそれぞれです。
仕事に支障が出るほどつわりが重い場合は、我慢せず早めに上司に妊娠報告をしましょう。事情をわかる人がいれば、休暇や通勤時間をずらすなどの調整をお願いしやすくなります。
2.仕事がとても忙しい
体調の変化はそこまでないけれど、立ち仕事が多い・出張が多い・毎日残業があるなど仕事が忙しい場合は、早めに妊娠を報告しましょう。
妊娠初期はとても大事な時期。過度なストレスや身体への負担をなるべく減らすようにしましょう。早めに報告することで会社側も業務調整がしやすくなり、仕事に影響が出にくくなります。
3.妊婦が働くにはハードな環境
以下のように、妊婦の身体に負担の大きい仕事をしている場合は、妊娠報告をしてなるべく負担を減らしてもらいましょう。
- タバコの煙を吸う可能性がある
副流煙は、妊婦に悪影響があります。
- 重いものを頻繁に持つ
荷物をもつときにお腹に力を入れると、子宮の収縮が起こりやすくなり母体に負担がかかる可能性があります。
- ずっと立ちっぱなし
まったく座れない場合は、身体に負担がかかる可能性があります。
もし、妊娠報告をした上で仕事の調整が難しい場合は、今後の働き方を考える必要があります。
職場に報告するときのポイント
妊娠を職場に報告するときのポイントは、以下の2点に気をつけましょう。
最初に妊娠を報告するのは直属の上司
妊娠を職場に報告する際、まずは直属の上司に報告してください。上司が忙しくてなかなか時間を作ってもらえない場合は、メールで報告してもかまいません。上司が人づてに妊娠を知ることは避けた方がいいでしょう。
上司への報告が終わったら、同じ部署のメンバーに伝え、最後に仲の良い他部署の同僚の順に報告するのが無難です。同じ部署のメンバーには、産休・育休中に仕事を引き継いだりするなど負担をかける可能性があるので、なるべく報告するように心がけましょう。
ただし、伝える順番に悩んだり報告が負担に感じたりする場合は、上司から他のメンバーに伝えてもらうという選択肢もあります。伝えるタイミングに希望があれば、併せて上司に伝えておくとより安心です。
妊娠の報告時は、予定日や今後の仕事について話す
妊娠の報告をするときは、以下をわかりやすく伝えましょう。
- 妊娠何カ月か
- 予定日はいつか
- 現在の体調や配慮してほしいこと
こうした報告をした上で、産休に入るタイミングなどを上司と調整します。
職場への報告は勇気がいるかもしれませんが、産休に入る時期や体調については、上司や同じ部署の人と共有しておいたほうが、仕事の調整がしやすくなります。結婚や妊娠はデリケートな話題です。色々な事情を抱えている方が周囲にいるかもしれませんので、伝え方に配慮しながら報告しましょう。
母性健康管理指導事項連絡カードについて
妊娠をした際に、仕事の内容を調整したり休暇をとったり通勤時間をずらしたりしたい場合、「母健連絡カード」を使用できます。
母健連絡カードの正式名称は、母性健康管理指導事項連絡カードです。妊婦健診などによって休暇や通勤時間をずらすなどの措置が必要だと医師(産婦人科医)が判断した場合に作成されます。
妊婦さんは母健連絡カードを利用することで、医師の指示を会社に伝達できます。つわりなどの症状はなかなか理解してもらえないこともあるので、この母健連絡カードを利用すると会社側も対応しやすいです。
母健連絡カードは母子手帳の後ろの方についているものや、産婦人科に置いてあるものに記入してもらいます。会社から提出を求められたり、自分が必要だと感じたりした場合は、医師に相談してみましょう。
新型コロナウイルスへの感染対策として、妊娠中の方が希望した場合、産婦人科医が母健連絡カードに記入することで在宅ワークや休業を申請できる措置もはじまっています。
妊娠はとてもおめでたいことである一方、仕事の仲間には負担をかける可能性も。その点を配慮しながら、妊娠報告をすると、双方にとって気持ちよくその後の仕事や、引継ぎがスムーズにしやすくなるでしょう。
妊娠中は知らないうちに体に負担がかかっていることがあります。体調が悪かったら無理や我慢をせずに、産婦人科医に相談してください。
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。