仕事や家事・育児に忙しい現代の女性たち。ランドリーボックスでは、特集「がんばりすぎちゃうあなたへ」を1カ月にわたってお届けしています。第3回は「EMILY WEEK」ブランドコンセプターの柿沼あき子さんです。
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初めて生理を迎えた時のこと。それはうれしかった?びっくりした?それとも覚えていない?「生理」との向き合い方は、出会い方や環境で大きく異なってくる。
生理周期を軸に、女性のバイオリズムに寄り添う、ベイクルーズのファッションブランド「EMILY WEEK(エミリーウィーク)」を立ち上げた柿沼あき子さん。ファッションという切り口で「生理」の文化を変えようとしている彼女の初めての生理は「死ぬんじゃないかと思うくらい、怖く、誰にもいえなかった」といいます。
生理についての向き合い方を、自分の体調を見つめながら少しずつ変えていった柿沼さんにお話を聞きました。
「生理が辛い」に新しい選択肢を
—エミリーウィークを立ち上げた経緯は?
もともとWeb制作会社に勤めていて、そのときから、この事業をしたいと考えていたんです。10年前、新卒だった頃、生理がとても辛かった。いまより生理が辛いといいにくい環境でしたし、生理用品の選択肢も少なかった。
初めて布ナプキンに手を出したときもすごく勇気がいりました。でも試してみたらすごく良くて、生理を気持ちよく過ごせた。
ほかにも調べてみると月経カップや月経ディスクも出てきました。世の中にはまだあまり知られていないけれど、生理を快適に過ごすための選択肢がある。それを伝えられるブランドがあってもいいんじゃないかなと思っていたんです。
—それでアパレルの会社へ転職されたんですね。
5年前、ベイクルーズに転職した当初は、Web販促を担当していました。入社2年目に新規事業としてエミリーウィークを提案して、2017年9月にブランドがスタートしました。
生理用品は隠したり、あまり人にいえない環境ですが、ファッションアイテムとしてオシャレの一環として提供できれば、この状況が少し変わるんじゃないかなと思いました。
「自分にとって心地いい」は少しの勇気で見つかる
—生理が辛かった時期はどのような悩みが?
もともと生理は重いほうでしたが、新卒2年目までは夜遅くまで働く生活になってしまい、生理が急激に辛くなりました。生理の1日目、2日目は本当に起き上がれないくらいの腹痛。経血量も多く、倦怠感もすごかったですね。
会社には「生理痛」といいづらく「体調不良」を理由に休んでいました。でも毎月のことなので「やる気がない」と思われちゃうのかなとか、仕事をがんばりたいけどがんばれないとか、そういう悩みが常にありました。
でも、働き続ける限りこの悩みが続くと思ったら、状況を改善しないといけないと感じて、一度すべてを受け入れて、ちゃんと自分と向き合ってみることにしたんです。
—自分と生理に向き合ったんですね。そこで新しい生理用品も試したんですか?
はい。雑誌等で紹介されていた布ナプキンを試しました。生理用品を変えると、こんなに快適になるんだと知り、今まで生理用品が自分に合っているかどうかということにすら気づいてなかったんだなと。そこから自分の気持ちよさに対するマインドが変わりました。
紙ナプキンやタンポンしかないと思っていたけど、勇気を持って新しいものにチャレンジすると心地よさに出会えた。自分にとって心地いいものは、能動的に探せば見つかります。
生活改善のためにアロマで睡眠を深めたりもして、生活や食生活をちょっとずつ変えていくと生理の状況も良くなりましたね。
なにより毎月の生理が新しいアイテムにチャレンジする期間だと捉えると生理を前向きに過ごせるようになりました。それに、1ヶ月の中で生理週間が、自分のカラダの状態やどういう生活をしているかを判断する目安になりました。
死ぬかもしれないと思った初めての生理。誰にも相談できなかった
—ファッションを通じて「生理」との向き合い方を変えていこうとされています。今後、エミリーウィークとして手がけたいものはありますか?
生理との最初の出会いを変えたいと思っています。素敵なアイテムを提供できるようなブランドになりたいと思っているので、初めての生理の時にプレゼントとして選ばれるようなブランドや文化を作っていきたいです。
—柿沼さんの初潮の時はどのような環境でしたか?
私は、12歳くらいで初潮を迎えましたが、小学校の朝礼後に急に目の前が真っ暗になって、耳が聞こえなくなったんです。
—え?
ほんとに怖くて、冷や汗がばーっと出て、死ぬかもしれないって思いながら、自分の席に座ったら動けなくなった。もう死ぬんだろうかと思っていたら、徐々に声が聞こえて目もだんだん見えるようになって元に戻りました。
家に帰ったらちょっとだけ経血がついていて、原因はよく分からないけど、たぶん貧血。これが私の最初の生理でした。その後も同じようなことが何度かありましたが、怖くて親にもいえなかったんです。
—誰にも相談しなかったんですか?
心配かけてしまうと思ったのと、今まで経験したことがない状態だったので、どうしていいのか自分でも分からず助けを求めることもできなかったんです。
過呼吸のような症状や動悸が激しくなったり、横にならないと動けない状況が中学くらいまで時々ありましたが、大人になるにつれてなくなりました。でも、そんな怖い状態なのに、家ではお赤飯が出てきて違和感がすごかったですよ(笑)
生理用品は危険な塊…?
—お赤飯は出てきても生理の話はしないですもんね…。
そうですよね。親からいわれたのは、兄がいたこともあって、使った紙ナプキンは、さらにチラシなどの紙に包んで捨てなさいということでしたね。
—普通に包んだナプキンをさらに?
はい、ナプキンの包装紙でナプキンをくるくる巻いた後に、チラシとかでもう1回包んで絶対に中身が見えないようにしてからゴミ箱に捨てなさいと指導を受けました。
—ナプキンがすごい危険物みたいになってますね。
そうなんですよ、この塊なんだろうみたいなね(笑)。なので、なんで生理を祝われているのか、それなのになぜ隠さなきゃいけないのか、どういうこと?と。毎月この感覚が発生すると思うと、ぜんぜん嬉しくないし、うんざりしていました。
—柿沼さんの現在の活動を見てご両親は?
「知らなかった。いってくれればよかったのに」といっていましたね。私も親にはカラダのことは恥ずかしくてまったく話していなかったので、親も知らなかったんですよね。
—エミリーウィークを通じてそのような環境が変わっていくといいですね。
そうですね。生理はげんなりするけれど、生理がカラダにとってどういう役割で、将来的に妊娠・出産にどう繋がっていくかといった性教育があるだけで、少し安心できると思うんです。
例えば、「HELLOFLO」など海外の生理用品サブスクリプション(定期購入)では、親が購入した商品が子ども宛に届くようなサービスがあるんです。毎月生理用品が届くことで、親が伝えられないことを子どもが知っていく。多感な時期って親のいうことにピンとこなかったり、話し合うのも恥ずかしいことがあるので、そういうサービスは面白いと思っています。
「今」をがんばりすぎない。少し声にすると助け舟が増える。
—素敵なサービスですね。親子の関係だけでなく、生理がしんどくても我慢してしまったり、人になかなか甘えられない人も多い。
私も生理のことはいいづらく体調不良といっていましたが、カラダがどこか悪いのか?と相手に心配されることもあって、最近は会社でも「生理で辛い」伝えるようにしています。
私は、生理のときに気分に出てしまうタイプなので、社外との打ち合わせでうまく話せないときに同僚にフォローしてもらうこともあります。事前にちょこっと伝えておけば助け船って増えるし、お互いのためになるんだと実感しました。
—柿沼さん自身も変わられてきたんですね。
ときには無理をしてがんばることも大事だけど、自分のカラダを気遣いながら健康的に働くことで叶えられることもあります。「今」だけを考えすぎず、もう少し長期的な生活を考え、元気に働けることが幸せなことだと感じています。
だからこそエミリーウィークは、自分や一緒に働いてくれている人の健康をちゃんと考えられるブランドになっていきたいです。
お話を聞いた方
「EMILY WEEK」ブランドコンセプター
柿沼あき子
2009年に女子美術大学絵画学科を卒業後、同年にベンチャー企業へWebディレクターとして就職。その後Webプロモーション企業を経て、2014年(株)ベイクルーズへWeb販促プランナーとして入社。同社の社内新規事業として、生理週間を軸に女性のバイオリズムに寄り添うライフデザインを提案するブランド「EMILY WEEK」を提案し2017年9月に事業化。現在は「EMILY WEEK」にてWeb PR、バイイングなども担当。