(写真提供:ソルーナエスペランサ)

ジェンダーフリーのアンダーウエアブランド『ソルーナエスペランサ』を手がけるのが、井浦友空さんと鈴木翔也さんだ。

インタビュー前編では、衝撃だった生理の思い出や、カミングアウトまでの葛藤、ホルモン療法を初めてからの変化などについて話してくれた2人。

ここからは、セクシュアル・マイノリティであることを受け入れていく過程や、『ソルーナエスペランサ』のブランドに込めた思いなどを聞いた。

自分を受け入れられていないのは自分自身だと気付いた

カツオ:僕の中ではホルモン療法を始めて、より自然体でいられるようになったことが精神的も大きかったと思っているんだけど、2人はそんな辛い時期を乗り越えられたきっかけはありました?

友空:26歳のとき、人生で初めてLGBTQのオフ会に参加して、翔也や色んなFTMの人と出会って、同じような境遇の方たちが楽しそうにオープンにしているのを目の当たりにして、“自分を受け入れられてない自分”に気付いたんだよね。

友達は「男」とか「女」とか関係ないって思ってくれていたのに、自分で勝手に縛り付けてハッピーじゃないように考えていたと。知らなかった世界が広がって、その後も度々イベントに参加することでどんどんラクになり殻も破っていったのかなと思う。

翔也:僕の場合も同じで、20歳のタイミングで同じイベントに初めて参加したのが大きかったかもしれないです。職業も年齢も色んな人がいて、衝撃でしたね。

そこに「こうでなきゃいけない」とかルールや括りなんて一切なくて、みんなそれぞれ楽しそうにしていたので、いい意味で「なんでもいいや」と思えました。友空さんとはそれから本当に色々なものを一緒に見てきたのでエピソードも被りますね(苦笑)

友空:でもいくら近づけても男にはなれないから、いまの自分が自分という感じ。「一生男になれない」と本当に受け入れられたのはここ4〜5年かもしれない。戸籍や結婚も実は表面的な話で、最終的に「どう生きたいか」は自分の心次第なのかなと思うから。

来世は男でも女でも性自認が一致してたらいいなと思うけど、今世はこれで精一杯楽しむしかないと思いますね。

翔也:僕は胸を取ったのが19歳のときで、当時はめっちゃ嬉しくて男を取り戻したと思ったんだけど、結局男にはなれないって思って、自分が胸を取っただけの女性に見えた。その後は足りない部分を補うように筋トレをしたりして、いまも理想の自分を追いかけてる感じです。 今となっては胸を取ったのも乗り越えるきっかけのひとつだったんだなと思います。

友空:翔也と2人で遊ぶようになって、「人生とは」とか「人間とは」とかめっちゃ2人で考えたり語ったりしながら、「本当に大切なもの」に行き着いた感じかなあ……。

翔也:そうですね!こうして信じ合える仲間がいるというのが何よりですね。 ちなみに余談ですが、前の職場では、女性として勤務してたので「早く結婚しないの?」とか胸オペをした後もカミングアウトしてなかったので、「このお菓子あげるから、胸が大きくなるといいね」など言われたこともありました。いや、もともとEカップもあったんだわって心でツッコミ入れてましたけど(苦笑)。自分を受け入れることが出来たから、いまはネタにできるようになったのかなと思います。

コンプレックスを払拭するサポートがしたい

(写真提供:ソルーナエスペランサ)

カツオ:そして2人で話し合って、ソルーナを立ち上げたんですね?

友空:そう、胸オペをしてタイから帰ってきて、やっと海パン履いて海に行ける!って思ったら、今度はモッコリがないことを気にし始めてしまった。胸を潰すサポートグッズがあるなら、モッコリが無くてコンプレックスを抱えている方のサポートグッズがあってもいいんじゃないかと思ったんだよね。

翔也:始めた当初は、モッコリを入れるポケットを内部に作ってFTM(トランス男性)専用にしていました。その中で色んな方に意見を聞いていたところ「コンプレックスを解消したいのに逆にバレてしまうのではないか」という当事者の懸念のお声をいただいて……。

友空:そうだよね、と思って(笑)コンプレックスをカバーしたいのに、逆に特別にしてしまってたというか。

翔也:色んな人が居てその中のFTM(トランス男性)になってなかったんですよね。

友空:だったらカルバンクラインみたいに、男性・女性も含めてみんなが履きやすいようにしようということで、ジェンダーフリーだけどFTMのためのパスにも使えるという現在のスタイルになりました。

(写真提供:ソルーナエスペランサ)

カツオ:そこは大切だよね!ストレートも俺らもそれぞれ違うし、誰も特別ではなくて、色んなセクシュアリティというか特性を持っている。みんな元々は無知なだけだったんだよね。以前は、当事者同士でも「こうしなきゃ」って縛り合ってる部分もあった。僕もバイセクシュアルだって言いづらかったなあ。

友空:いまではジェンダーレスなタレントさんとかも多く、みんなが寛容になった気がするし、中性的でもオープンにする方が増えた気がする。

カツオ:少しずつネットや動画配信などで情報を得て、仲間がいるんだ、一人じゃないんだって知ったっていうのも大きいよね。今日は色んなお話をしてくださり、ありがとうございました!これからもお2人を応援してます。

友空・翔也:ありがとうございました!

人それぞれのストーリーがあり、みんなに等しい正しさなんてない

2人の話を聞いて、同じFTMという括りの中でも、経験してきたことや感じ方も本当に様々なんだなということをあらためて痛感した。その中でも同じ経験をしてきた仲間であるということも確かなことだ。

Photo by Emi Kawasaki / Laundry Box

「人はそれぞれ違う」をまず前提にして、「人によって同じ部分もあるかもしれない。それは素晴らしいこと」と考えた方がいいと思う。

「正義」や「正解」はそれぞれであり、みんなに等しい正しさなどない。その中で、自分の人生を生きているということだけが正解なのではないだろうか。

好きなパンツを履けばいいし、選んでいいのだ。人の選んだパンツにどうこう言うなんて、僕はやはり違う気がした。そして足りないところは補って、助け合っていけばいいと思う。

そのためにこういった情報サイトがあるわけで、2人も活動しているのであって、僕もこうして文章を書いている(のかな……笑)。

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