フェムテックの盛り上がりとともに、「セクシャルウェルネス」の分野にも注目が集まっています。セクシャルウェルネス(性の健康)とは、性に対して身体的、感情的、精神的、社会的にも健康な状態であることを意味します。
でも日本ではまだまだ話づらい、タブー視する考えが残っていて、セックスやセルフプレジャーなど、「性」を楽しむことにどこか後ろめたい気持ちを抱いている人もいるかもしれません。
すべての人々の健康を保護する目的で、国連が設立したWHO(世界保健機関)は、セクシュアルヘルスに対して、以下のように表明しています。
「性的健康には、セクシュアリティと性的関係に対する前向きで敬意のあるアプローチが必要であり、強制、差別、暴力のない、楽しく安全な性的経験をする可能性も必要です。性的健康を達成し維持するためには、すべての人の性的権利が尊重され、保護され、満たされなければなりません」
あらゆる人が、身体、精神、社会において、個々人の尊厳を奪われることなく、自己決定ができること。その上で、「楽しく」、「安全な」性的な経験を伴うことがウェルビーイングに繋がるとされています。
「セクシャル・プレジャー宣言」とは?
性の専門家・研究家らによる団体「The World Association for Sexual Health(WAS)」(世界性の健康学会)は、2019年にあらゆる人たちには性的に喜びを得る権利があるとしてセクシュアル・プレジャー宣言を発表しました。
「セクシュアル・プレジャー(快感・快楽・悦び・楽しさ)とは、他者との、又は個人単独のエロティックな経験から生じる身体的および/または心理的な満足感と楽しさのことであり、そうした経験には思考、空想、夢、情動や感情が含まれる。
プレジャーが性の健康およびウェルビーイング(良好な状態・幸福・安寧)に寄与するためには、自己決定、同意、安全、プライバシー、自信、そして性的関係についてコミュニケーションしたり交渉したりする能力といった要素が重要となる。
セクシュアル・プレジャーは、性の権利の文脈で行使されるべきものであり、とくに平等と非差別、自律と身体のインテグリティ(保全・完全性・統合性)にかかわる権利、望みうる最高水準の健康および表現の自由にかかわる権利が重要となる。
人間にセクシュアル・プレジャーをもたらす経験は多様であり、(それゆえに)プレジャーがあらゆる人にとって肯定的な経験でありつつ、他者の人権とウェルビーングを侵害して得られるものでないことを保障するのが、性の権利である」
その上で、以下を宣言しています。
- あらゆる人々にとって、差別、強要、暴力をうけることなく、楽しく安全な性的経験が可能であるということは、性の健康とウェルビーイングの基盤をなすものである。
- セクシュアル・プレジャーの源にアクセスすることは、人間としてあたりまえの経験および主観的なウェルビーイングの一部をなす。
- セクシュアル・プレジャーは、人権としての性の権利の基盤をなす。
- セクシュアル・プレジャーには、多様な性的経験をする可能性が含まれる。
- セクシュアル・プレジャーは、世界中のあらゆる場所において、教育、健康推進、サービス提供、研究、権利擁護(アドボカシー)に統合されるべきものである。
- セクシュアル・プレジャーをあらゆる場面に組み込み、個人のニーズ、要望、現状(リアリティ)にあったものにすることが、究極的には、国際保健と持続可能な開発に寄与することになるのであり、そのための包括的で即時的かつ持続可能な行動が求められる。
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性には「安全」、「健康」はもちろんのこと、当たり前に「プレジャー」も大事。性を楽しみ、悦び、行動する権利が私たちにはあると、世界の公的な機関が提言しているんです。
性に後ろめたい気持ちを抱いている人が、少しでも自分らしく、幸せに生きられる世界に近づきますように。