セックスコラムニストというお仕事上、みなさんがセックスで困っていることを知るために日々SNSにかじりついています。
そこでよく見かけるのが、男性の“やばいセックステクニック”です。
今回は、その「やばいセックステクニック」がはびこる理由と解決策について考えていきたいと思います。
そのセックステクニック…やめませんか?
挙げればキリがないほど出てくる、相手は気持ちいいと感じていないかもしれない「やばいセックステクニック」。
男性の行為でいうと、例えば
キスの最中に歯の裏ばかり舐めてくる
やたらと乳首をつまむ
よく分からない場所をしつこく愛撫する
クリトリスをゴリゴリ擦る
腟を指でガシガシかき回す
体位を何度も変える
ピストンが激しい
膣奥にゴンゴン当てる
顔に射精する
などなど。
SNSで「〜〜のようなセックスをする人がいて嫌だった」という投稿が流れてくると「そうだよね、やばいテクニックの人いるよね」と思う一方で、「ネットには書き込むのに、なぜ相手には言わないんだろう?」と不思議に思っていました。
しかし、よく考えたらセックスコラムニストになる前の私も同じだったんですよね。
相手には何も言わずに、友人と「この間こんなことされたんだけど(笑)」と話のネタにするばかり。
無意味に激しく突く爆速ピストンが全然気持ちよくなくても気持ちいいフリをしてしまっていたし、ボディソープを潤滑剤代わりにして腟をかき回す愛撫で股間がヒリヒリしても何も言えませんでした。
「言えなかった」というよりは「言わなかった」と表現するべきかもしれません。
嫌われたくない、男性のプライドを傷つけたくない、雰囲気を壊したくない、ちゃんと気持ちよくなれる女だと思われたかった。
色々な理由があったんだと思いますが「どうせ言っても無駄」「私さえ我慢すれば丸くおさまる」と黙ってやりすごしていました。
ところで、そもそも多くの男性に共通する“やばいセックステクニック”はなぜ生まれ、なぜ広まったのでしょうか。
やばいセックステクニックがはびこる理由
やばいセックステクニックが広まっている理由はアダルトビデオにあるとよく言われています。AV鑑賞が趣味の私にとってはとても残念な話ですが、激しい手技、潮吹き、激しいピストン運動と派手な射精によるクライマックスなどはまさにAVの影響でしょうね。
AVでのセックスはマスターベーションしながら観ている視聴者のことだけを考えた「見せるセックス」であって「セックスのお手本」ではありません。
それにもかかわらず、AVのセックスを元に誰かが書いた「女性をイカせるテクニック!」といったネット記事、さらにそれらの記事をまとめたSNS投稿が量産され、どこへアクセスしても「セックスのお手本」としてやばいセックステクニックが並んでいる状態です。
ちょっと指を動かせばこれらの情報にアクセスできるようになってしまったことが、やばいセックステクニックがはびこる最大の理由ではないでしょうか。
しかし、もうひとつ大きな原因があると私は思っています。
それは、女性が本音を言えないこと。
前述の通り、私もやばいテクニックを披露されたときに我慢して気持ちいいフリをしてきました。その我慢が「このテクニックは効いた!」と間違った成功体験を与えてしまうことになるんですよね。
彼らは今でもどこかで爆速ピストンやボディソープ愛撫を披露しているかもしれません。
女性も間違ったセックステクニックを実践しているかも
そして、やばいセックステクニックを実践しているのは男性だけではありません。
よかれと思いネット記事を読みあさって見つけたテクニック、自信満々に披露しているテクニックに男性が我慢しているパターンもよくあるんです。
耳に強く息を吹き込んでくる
乳首を噛む
男性器を強く掴んで速く動かす
オーラルセックスでやたらと吸引する
オーラルセックスで派手に音を立てる
睾丸を雑に触る
騎乗位で激しく動く
勝手にお尻の穴を舐める
「歯が当たっているけど気付いてなさそうだし我慢しよう」「自信ありげに騎乗位してくれているけど、根元から折れそうでヒヤヒヤする」などはよく耳にしますし、私も思い当たることがいくつか……。
結局のところ、男性も女性も「パートナーと一緒に気持ちいいセックスがしたい」と考えているのに、その方法を正しく知る機会がないんですよね。
すれ違う男女のセックスで何が必要か
「パートナーと一緒に気持ちいいセックスがしたい」とはつまり「愛情を肌で感じ合いたい」とか「心地いい時間を過ごしたい」であって「なんだかすごいテクニックの見せ合い」ではないはずです。
それならば、どこかの誰かが教えてくれる”テクニック”よりも、目の前にいる相手と自分が何を求めているのかを大事にしたいと思いませんか。
感じ方も、体力も、性欲の強さもひとりひとり違っていて、その日の体調や気分によっても変化があるのが普通です。
だから少しずつ自分の好みを伝えていかないといけないし、セックスの度にその時の気持ちも伝えていく必要があります。
難しく感じるかもしれませんが、新しいパートナーに少しずつ食事の好みを伝えるのと同じです。
「私は甘いものが好きで辛いものは苦手」「今日はラーメンの気分」と言うように「私は舐めてもらうのが好きで指で触られるのは苦手」「今日はグッズで気持ちよくなりたい気分」と言えばいいんです。
指摘したい時も伝え方は同じ。食事をしながら「この味苦手かも」「もう少し塩こしょうした方がおいしくなるよ」「一回チンして温め直した方がおいしいと思う」と言うテンションで、「ちょっと待って、これ苦手かも」「もう少し舌の力抜いた方が気持ちいいよ」「ゆっくり動いた方が温かさを感じられるから好き」と伝えれば、案外すんなりと受け入れてもらえます。
私の経験上、こんな風に教え合えばネガティブな雰囲気になることはありません。もちろん、良いと思ったことやして欲しいこともどんどん伝え合うべきです。こうやって小さなことから率直に伝え合うことを続けていけば、もっと話題にしにくい痛みや性機能についても伝えやすい関係性ができていきます。
例えばセックスの回数や年齢を重ねていくうちに、誰もが中折れや腟の乾きなどパートナーと話しにくいトラブルに直面しますが、フランクに伝え合う関係性ができていれば大丈夫。
「今日は元気がなくなっちゃったから続きはおもちゃでしてもいい?」「ヒリヒリしそうだから潤滑剤たっぷりめで!」と言えるようになっているはずです。
お互いの気持ちを尊重し、言葉を交わし、実践してはピロートークでフィードバック。時には一緒にセックスを学び直しながら、ふたりにとってより良いセックスを作り上げていきたいですね。
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