【お悩み】
付き合って5年の彼と一緒に住んで3年。お互い大切なパートナーだと思っています。
「結婚(いわゆる法律婚)」も考えましたが、私も彼も苗字を変えたくないので、事実婚をしたいとふたりで話し合っています。
しかし、私の親に話すと反対され、法律婚をすすめられています。
親にも気持ちよく私たちの選択を応援してほしいと思うので、押し切ってまで決断する勇気がありません。
団姫さんも事実婚とお聞きしました。どのように親に伝えれば、気持ちよく応援してくれると思いますか?
(20代・女性)
こんにちは。露の団姫(つゆのまるこ)です。未来を共に歩みたいと思える素晴らしいパートナーと出会えたこと、心からお祝い申し上げます。
いざ結婚となると、さまざまな課題に直面しますよね。私も、夫とともに選択的夫婦別姓の実現を待ちながら、事実婚生活を送るひとりです。今回も一緒に考えていきましょう。
「選択的夫婦別姓」は「選択的夫婦同姓」
まず、「選択的夫婦別姓」についてお話をするとき、「同姓派」か「別姓派」で対立するイメージを持つ人がいますが、これは本来、対立するような議論ではありません。
なぜなら、「選択的夫婦別姓」は「選択的夫婦同姓」だからです。
選択的夫婦別姓が実現した場合、同姓がいい人はこれまで通り結婚するときに同姓を選べばいいですし、別姓がいい人は別姓を選べばいいのです。
私自身は、「好きな人と同じ苗字になりたい」と思うのは素敵なことだと思いますし、「自分の苗字のまま好きな人と生きていきたい」と思う人がいるのも当然だと思います。
名前とは自身のアイデンティティのひとつそのものですから、さまざまな考え方があっていいのです。
だからこそ、「選択的」というのが大切なポイントです。
まずは選択的夫婦別姓の議論が進み、法制化することが、結婚する人を増やし、少子化対策にもいい影響を与えると私は考えますが、これがなかなか実現しないのが現状です。
そうなると私のように「事実婚」を選択する人も増えてきますが、パートナーとの話し合いができても、その次に親の理解を得るのに苦労する人も少なくありません。
親が反対する理由
では、なぜ親は事実婚に反対するのでしょうか。
それは、親というものは、なるべく我が子に「いらぬ苦労」をさせたくないものだからです。
例えば今から20年ほど前、私はファミレスで「子どものランドセルを何色にするか」と盛り上がる母親たちの会話を聞きました。
「うちの娘、水色のランドセルが欲しいって言ったけど、説得して赤にさせた!」
「わかる~!いろんな色がでてきたけど、結局、女の子は赤とかピンク系だし、男の子は黒だもんね」
「そうそう!だから、水色にしたら、いじめられるかもしれないもんね~」
私はこれを聞いて驚きました。
「本人の好きな色」ではなく、「いじめられるかもしれない」という心配が優先されてしまうのです。なかには、そうではない親もいたとは思いますが、この会話を聞いて「子どもたちが好きな色のランドセルを選べるようになるまで時間がかかるな」と感じました。
その後10年ほどすると、やっと街中で色とりどりのランドセルを見かけるようになりました。
ものごとには「転換期」がある
ものごとは「明日からこうします!」といわれても、急に変えられるものではありません。
必ず、「転換期」を経てから変化します。
その「転換期」に、真っ先に変わることを喜ぶ人、そして躊躇しない人もいれば、まわりの様子を伺ってからでないとなかなか動けない人、考える時間や慣れる時間が必要な人もいます。
ここで対立が生まれると、百害あって一利なしです。
自分の考えと違う相手を否定せず、さまざまな視点の人がいることを理解することが、「転換期」を上手く乗り越える秘訣です。
現在、相談者さんは同棲されていますが、同棲も同じことです。
30年前なら、「同棲なんてけしからん!」と大反対する親も多かったでしょう。
しかし、その選択をする人が増えたため、今は同棲に苦言を呈する親も減ったのだと思います。
親は我が子が事実婚を選んだ場合、社会的にいらぬ苦労をしないか、孫がいじめられないか、心配なのです。
しかし、私自身、そして私の周囲の事実婚生活を送る人も「事実婚」であることで他者から悪意を向けられたり、子どもがいじめられたと聞いたことはありません。
親は「我が子に苦労をさせたくない」と心配するばかりに、世間の目を気にして、ときに一番大切な「我が子の気持ち」を見失ってしまいます。
ただ、事実婚は「社会保障」という面で多くのデメリットがあることは事実ですから、そのデメリットも考慮して反対する親もいるのでしょう。
だからこそ、選択的夫婦別姓が実現するのがベストですが、実現しない現状では、そのデメリットを踏まえてでも、「自分の気持ちを大切にしたい」ということを改めて伝えてみてください。
幼い子どもであれば、自ら選んだランドセルの色を数年後に後悔し、「やっぱり色を変えたい!」と泣く子もいるかもしれません。
でも、大人であるあなたは、突発的に「事実婚」を考えたわけではありません。
自らの生き方をパートナーと真剣に考え、その末に導き出した「選択」を、責任をもって生きるのです。その強い意志を親にみせてください。
お墓の問題
ところで、事実婚の場合、「夫婦で苗字が違うと、一緒のお墓に入れないのではないか?」と心配される人もいます。
それはきっと「○○家 先祖代々の墓」のイメージがあるからだと思います。
しかし、「先祖代々の墓」は実は明治以降にできた文化であるため、伝統というわけではありませんし、必ずしもそうしなければいけないというものでもありません。
私の場合、苗字に加えてクリスチャンの夫とは宗教も違いますが、将来は一緒に「夫婦墓」に入ることを結婚前から夫婦で決めています。
なにより、私たちはお墓のために生きるわけではありません。
お墓のために生き方を変えるのではなく、自分の生きた証がお墓なのです。
事実婚だと家族の絆がなくなる?
事実婚生活を送っていると、「苗字が異なると家族の絆がなくなる」というご意見をいただくこともありますが、「絆」は苗字で決まるような簡単なものではないと思います。
苗字が同じになったことで幸せな気持ちになり、絆を感じる夫婦もたくさんいる反面、苗字が同じでも不倫する人、離婚する夫婦もいるのです。
そして、事実婚で愛に溢れる家庭はたくさんあります。
絆の結び方、感じ方は人それぞれですから、それは形式で決まるものではありません。
ちなみに私は夫の家庭の事情で法律婚をしていた時期もありましたが、書類上の繋がりがない事実婚生活は、絆がなければできないものだと実感する日々です。
現状だと、選択的夫婦別姓を望む人は、法律婚をしても苦痛を伴いますし、また事実婚を選んでも、誰かに何かを言われることもあるでしょう。
でも、結局は夫婦のことですから、親を含め、まわりの意見にふりまわされず、自分たちらしい選択をすることが大切です。
あなたたち自身がどれだけお互いを信頼しているか、すでにどれだけの絆があるか、ご両親にお話ししてみてください。そして、事実婚で仲良くしている夫婦や家庭の例を具体的にあげてみてもいいでしょう。
それでももし、ご両親が認めてくれないのであれば、あとはあなたたちが時間をかけてふたりの関係を証明していくのみです。
「姓」についての考え方が「転換期」であることを踏まえ、親の気持ちも理解しながら話し合えば、きっと、応援してもらえる日がくるはずですよ。