【お悩み】
今の仕事に就いて今年で4年目になる、26歳の女性です。
仕事ができる同期と自分を比べて、劣等感を感じています。
同期とは入社時から部署が同じで、なおかつ一緒に仕事を進めることが多いため、その同期の活躍ぶりや成長を間近でひしひしと感じます。
込みの早さ、要領のよさ、難しい上司や先輩ともうまく付き合うコミュニケーション能力…など、私にはないところをすべて持っている同期が羨ましいです。
それと同時に、その同期と一緒にいると、自分には足りていないところを実感して苦しくなります。
「自分にできることを頑張ろう」「せめて自分はミスをしないようにしよう」と、同期と比べないための意識・改善も試みました。しかし思うように気持ちが切り替えられません。もう4年も今の仕事をやっているのに…と思って情けなくもなります。
今の仕事に対する自信もなくなってきたため、転職をし、別の仕事へ移って環境を変化させれば気持ちも変わるのかなと考えています。ただ、結局はどこへ行っても同じかなという考えも捨てきれません。
なにか前に進む一歩がほしいです。アドバイスをお願いします。
(26歳・女性)
嫉妬とは、的確な判断を下せない感情
こんにちは。露の団姫(つゆの・まるこ)です。お便りを読ませていただきました。「優秀な同期と比べてしまうあなたは、まずは自分に自信を持ってください!」という、ありきたりのアドバイスをするつもりはありません。
少し耳の痛い話になるかもしれませんが、前に進むためにも一緒に考えていきましょう。
まずは、同期に嫉妬してしまうあなたを一言で表すと、「ヒマ」なのだと思います。
一般的に他者に嫉妬してしまう原因は「自信のなさ」とも言われますが、忙しい人は自分に自信があるかないかを問うているヒマもありません。あなたが同期に嫉妬したり、「情けない自分」に対して“落ち込んでいる”間も、同期は仕事をこなし、結果を出すための作戦を練って実行しています。忙しくて他人の仕事ぶりに関心を持ったり、比べている「ヒマ」もないでしょう。
「ヒマ」は、心の余裕であると同時に、人によっては「隙間」でもあり、心の隙間に自信のなさや不安がプラスされると、仏教でいう「貪瞋痴(とんじんち)」の「三毒」の心が生まれやすくなります。
「貪瞋痴」とは、「貪欲(むさぼり)」「瞋恚(いかり)」「愚痴(おろかさ)」のことですが、嫉妬は「愚痴」に分類され、愚痴の状態にあると「的確な判断を下すことができない」と言われています。
努力しようと思ってもなかなか気持ちが切り替えられない原因は、的確な判断を下せない状態である“嫉妬”や“劣等感”を、これから前に進もうとしているときの「出発点」にしてしまっているからかもしれません。
近年、「忙しい」は「心を亡くす」と書くという説から、「忙しいこと」はよくないこととされてきました。しかし、それも全員に当てはまることではないでしょう。忙しすぎて自分を見失ってしまったり、心身のバランスを崩してしまう人には忙しすぎない生活が必要ですが、「ヒマ」であることがマイナスの方向にはたらいてしまうタイプの人もいると思います。
そういう人は、自発的に忙しくするほうが自分にとっていい状態を保てる場合もあるのです。
自分で自分を忙しくすることは「自信を持つ」より簡単にできることです。なぜなら、自信を持つためにはたくさんの経験や時間、人との縁など、さまざまな要素が必要であり、自分ひとりですぐにできることではないからです。
だからこそ、今の自分を変えるために転職も視野に入れているのでしたら、「忙しい職場」に転職してみることも、ひとつの選択肢としていいかもしれません。人間には適度な運動が必要なように、適度な忙しさも必要です。その「適度」は人によって違うため、自分の適度を探してみてください。
嫉妬や劣等感を捨てられないのは当たり前のこと
阿弥陀経(あみだきょう)というお経には、「青色青光 黄色黄光 赤色赤光 白色白光」という1文がでてきます。極楽には色とりどりの蓮の花が咲いていて、青色の花は青い光、黄色い花は黄の光を放ち、どの花もそれぞれに美しいという意味です。
これはまさに、「さいた、さいた」ではじまる童謡「チューリップ」の世界観でもありますが、「どの花を見てもきれいだな」のような境地に至るためには、自分の色を知ることが大切です。
もちろん、嫉妬心など一切ない真っ白な心でいられれば、それほど素晴らしいことはありません。しかし、真っ白にはなりきれないのが煩悩を持つ人間というものです。まずはそういう自分自身を認めることが、自分の色を知り、深めていくヒントとなるでしょう。
「他人のことが気になる」という心のはたらきは、決して「弱さ」ではありません。実は「活動的」な証拠です。心が活動的な人は、自分が思っている以上に体も活動的です。忙しく動き回れる場所こそが、あなたが自分の花を咲かすことのできる場所かもしれません。
冬眠していた生き物たちが動き出す春。活動的なあなたの開花も、きっと応援してくれるはずです。
*本記事の内容は個人の見解です。必要な場合は専門家への相談をおすすめします。