夏のレジャーシーズンが到来。でもせっかく楽しみにしていた海水浴と生理が重なってしまったら、がっかりしてしまう人も多いのではないだろうか。

そんな時、タンポンや月経カップなどを使うことで、生理中でも海水浴や海のレジャーを楽しむことができる。ただし、注意が必要なことがいくつかある。

産婦人科医の柴田綾子先生によると「体調がすぐれない場合は海に入るのを控えること。体調がいい場合でも、急に体調が悪くなる可能性もあるため、早めに引き上げることが望ましいです」(柴田先生)。

また海でのタンポンの使用は、腟内を清潔に保つためにも、使用後はなるべく早めに新しいものに取り替えるなど衛生面にも注意が必要だ。柴田先生は、「生理中は経血の影響で、膣内は感染症などがおきやすいリスクもあります」としている。

サメは大丈夫?

体調の変化に十分気をつけながら、タンポンや月経カップなどの生理用品を使えば、海のレジャーは諦めなくてもいいことがわかった。

しかし、1つ気になっていることがある。それは……

血のにおいにサメが寄って来るのでは?

タンポンや月経カップなどを使って工夫していても、経血が漏れてしまうことは多々ある。筆者は以前ハワイ旅行中、海でシュノーケリングを楽しんでいたらサンゴで足のスネを擦りむいて流血したことがある。

その時、インストラクターがこう叫んだのだ。

「There is a risk that sharks will come near! Get out of the sea right away!!」

「サメが近づく危険性があります!すぐに海から出てください!」

(しゃ、しゃーく!?)

(サメこえええええ!)

人間の血のにおいにサメが寄ってくるのか…。驚きと恐怖でしばらく心臓のバクバクが止まらなくなった。子どものころ恐怖で震えたスティーヴン・スピルバーグ監督の出世作『ジョーズ』の映像が脳裏をよぎった(NetflixやAmazonプライムビデオで観られます)。

以来、海水浴場などに出向く際には、ちょっとした怪我でも流血したらサメが近づいてくるから気をつけねばと、警戒するようになったのだ。

画像=Laundry Box

「生理中 海」とGoogle検索すると「サメ」がサジェストされる。私と同じような不安を抱えている人たちが、少なからずいるようだ。

そこで今回、東京大学大気海洋研究所で魚類生理学を研究している兵藤晋教授に話を聞いた。

——血のにおいにサメが寄ってくるというのは本当ですか?

ごく少量の人体の血にサメが反応するという論文はあります。フレッシュな血液ほど、反応がいいという結果も報告されています。主に大きな水槽や生簀を使った実験によるものですが。

——サメは嗅覚が鋭いというのは本当ですか?

サメの嗅覚が非常に発達していることは事実です。谷内透先生の「サメの自然史」(東京大学出版会)によると、サメの嗅覚について次のように記されています。

サメの嗅覚が鋭いことはとくに有名である。サメを引き寄せるのに血の滴る獣肉や魚片などがよく用いられる。数km離れたところからにおいを嗅ぎつけてサメがおびき寄せられることは実験的にも確かめられている。(中略)珊瑚礁における実験では、ツマグロ(筆者注:メジロザメ属に属するサメの一種)などは、ハタ類のエキスを100億分の1に薄めても反応した。まさに深さ2m、面積4分の1エーカーの珊瑚礁に1滴こぼしたにすぎない濃度である。

出典:「サメの自然史」(東京大学出版会)

しかし遠く離れた海域から人間の血液のにおいを嗅ぎ取って近づいてくるということは考えにくいです。距離だけではなく海の流れや深さにも影響されるでしょうし、ほかに餌として好む生物がいたり、サメが飢餓状態かどうかなど、さまざまな条件にもよるでしょう。

実際にサメが人間を襲ったケースとしては、サメが人を獲物と見間違えて噛み付いたという事例だと思います。アシカやアザラシを常食としているホホジロザメの場合、ダイバーやサーファーが海産哺乳類と似ているので襲われやすいという説もあります。

——人間に危害を与えるようなサメは、どこに生息していますか?

ホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメなどがよく知られていますが、オーストラリアやアメリカ、メキシコなどには多く生息しています。

もちろん日本の近海にもいます。沖縄などでは定置網にかかることもあります。ですがいたずらに危険を煽るべきではないと思います。

だからと言って「大丈夫」とも断言できませんので、伝え方が難しいですね。「ホホジロザメ、イタチザメ、オオメジロザメは日本の近海にもいる」という事実のみをお伝えします。

Photo by Rusty Watson on Unsplash

——サメが目撃されて遊泳禁止になったというニュースはたまに見ます

小さいものも含めると、サメはどこにでもいます。ですが波打ち際で水遊びするようなところにサメが寄ってきて人が危害を加えられるかと言えば、そのようなことはないと思います。でも「絶対ない」とも言えず、難しいですね。

ひとつ言えるのは、サメがたくさんいるところで、生理の日にわざわざ泳がない方がいいということでしょうか。

サメの攻撃を回避する1つの手段として、まずサメに対する正確な知識を持つことが要求される。サメの習性を理解していれば、いたずらにサメを恐れる必要はない。ホオジロザメがアシカを襲うとき、単独の個体に狙いをつける。このような習性を理解しておけば単独で遊泳したり浮かばずに、なるべくグループで行動したほうが安全である。

(中略)

においの放出も禁物である、銛(もり)などにより傷ついた魚を持ち続けたり、肉体を傷つけたりすると、流れ出た血液がサメの嗅覚を刺激することになる。女性の場合は、とくに生理のときは水中に入らないほうが無難である。

出典:「サメの自然史」(東京大学出版会)

本記事では、生理時の海のレジャーに関する産婦人科医の見解と、サメの生態に関する研究結果などを紹介しました。それらの情報をもとにして海に入るかどうかは、体調とも相談したうえで、ご自身で判断してください。

もしも日程に余裕があれば、ピルの服用により生理日をずらすという選択肢もあります。産婦人科で相談して適切に処方してもらいましょう。

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