性器ヘルペスは、性行為を経験したことのある人なら感染する可能性があります。女性では、最近30~50代の患者さんが増加傾向にあります。一度感染するとウイルスを完全に取り除くことができないため、再発にも注意が必要です。
性器ヘルペスとは
性器ヘルペスとは、単純ヘルペスとよばれるウイルスに感染し、性器やその周辺に小さな水泡や潰瘍ができる病気です。
性器ヘルペスは男性より女性の発症率が高く、症状が重くなりやすいです。その理由は、女性は性行為時に粘膜に小さな傷ができることが多いため、ウイルスが入り込みやすいからだと考えられています。
はじめての感染では、男女ともに激痛を伴うことが多いといわれていますが、まれに無症状の場合もあります。もし、男性が無症状であった場合、知らないうちに女性のパートナーに感染させてしまうこともあります。
性器ヘルペスの特徴は感染力が高いことです。特定のパートナーとの性行為の場合でも、1年間に約10%で感染するといわれています。
性器ヘルペスは以下のような接触で感染し、2~10日間の潜伏期間後に症状が出てきます。
- 口と口との接触(キスや回し飲みなど)
- 性行為
- オーラルセックス
- 母子感染
- 性器への接触
一度ヘルペスウイルスに感染すると、症状がおさまった後でもウイルスは体内に潜伏したままになります。免疫力が落ちてくると神経を伝って粘膜にあらわれ、また症状が出るといった特徴を持っています。
性器ヘルペスの症状や感染のリスク
初めて感染した場合は、ほとんどの方が日常生活に支障をきたすぐらいの痛みがあるといわれていて、以下のような症状が見られます。
- 性器や性器周辺に痛みを伴う小さなポツポツができ、そのあと水疱のようなものが多数できます。
- 38℃以上の発熱
- 足の付け根のリンパが腫れる
- 強い排尿痛、など
こうした症状は放っておいても2~3週間ほどでおさまりますが、薬を使用すれば1~2週間程度に縮めることができます。
ただし、薬によってウイルスの増殖をおさえることはできますが、一度身体に入ったウイルスを完全に排除することができません。そのため、症状がおさまっても、体内に潜伏するウイルスが再発しないように注意が必要です。
再発した場合は、初めて感染したときより症状が軽いことが多いです。再発する前には性器に違和感をおぼえたり、足に痛みを感じたりするなどの兆候が出ることが多いようです。再発率は月に2~3回、年に1~2回など個人差が大きく、高齢者や女性では再発しやすいと言われています。風邪をひいたときなど体の免疫力が落ちたときに再発しやすいので注意してください。
婦人科での性器ヘルペスの診療や治療内容
性器ヘルペスの症状に心当たりがある場合は、婦人科を受診しましょう。婦人科では、内診や抗原検査、血液検査などをしてウイルスの特定を行います。
治療方法としては、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬の軟膏を塗り、錠剤を5~10日程度服用します。痛みが強い場合は鎮痛剤を処方されたり、点滴による薬剤投与が行われたりすることもあります。
性器ヘルペスを予防するには
性器ヘルペスの予防方法は以下の通りです。
- 不特定多数との性行為を控える
- 性器ヘルペスに感染している可能性のある人と性行為をしない。性器に接触しない
コンドームを使用すれば感染のリスクは減らせますが、性器周辺に感染する可能性はあります。
性器ヘルペスは再発しやすい。再発を繰り返す場合は医師に相談を
性器ヘルペスは免疫力が落ちたときに再発しやすいため、日頃から規則正しい生活をする、バランスのよい食生活をするなどして注意しましょう。
症状が出たときは、薬を服用して早期に治すことをお勧めします。何度も再発を繰り返す場合は、薬の予防投与が可能か、医師に相談してみましょう。
性器ヘルペスは、性行為を経験した人なら発症する可能性のある病気です。初めて感染した場合は、歩けなくなるほどの激痛に苦しめられることもあります。デリケートゾーンにブツブツができて痛みを感じる場合は、早めに病院へ行って治療しましょう。
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著書に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。LINEボット「妊産婦さん向けの風邪薬ボット」も運営中。 https://twitter.com/ayako700