20代後半になり、周りに結婚して子どもを持つ友人が増えてきた。そんななか、不妊の原因の約半分は男性にあるというデータを見て、ふと「もし自分に問題があったらどうしよう」と不安になった。パートナーである彼女から勧められ、勇気を出して自分の精子を調べてみた。
きっかけはパートナーからの紹介だった
普段から、私のパートナーは自分の身体についてよく話してくれる。
生理についてなんとなく分かっているつもりだったが、会話をするにつれて自分の無知さに気づき、驚きを隠せなかった。女性は毎月こんなに大変な思いをしているのか。それから、PMSやピル、生理用品など生理に関するさまざまなことを教えてもらった。
そんなある日、パートナーから自分の精子を調べられるキットがあると聞いて興味をもった。LINEでSeemのURLを共有してもらい、その30秒後には注文をしていた。
Seemとは?
「Seem(シーム)」は、株式会社リクルートライフスタイルが提供する、スマートフォンで自分の精子の濃度と運動率が簡単に測れるサービスだ。
キットを購入し、専用アプリをダウンロードするだけですぐに利用できるのが特徴だ。アプリがスマートフォンのフロントカメラを介して精液を解析し、その場ですぐに精子の濃度や運動率が測定できる。
精子の状態は体調や環境などの影響で大きく変化することを受け、複数回の測定結果における平均値やグラフ表示により、精子の状態の傾向を確認することができるのも特徴のひとつだ。
使い方は学校でよくあった尿検査と一緒
注文してから数日で自宅にキットが届いた。もともと公式サイトでキットの画像は見ていたが箱は思ったより小さかった。開封するときはなぜかドキドキしてしまって割れ物を扱うかのように、恐る恐る取り出した。
Seemの使い方は以下の通りだ。
- 採取用カップに精液を全量採取し、精液が液化するまで15分~30分待つ。
- 精液が液化したらカップをゆっくりまわし、精液をよくまぜる。
- 採取棒を使って、スマートフォン顕微鏡レンズの上に精液を1滴のせる。
- レンズをiPhoneのフロントカメラにセットし、専用アプリ『Seem』で動画を撮影する。
- 動画がプログラムで自動解析され、精子の濃度と運動率が表示される。
尿検査用のプラスチックカップを思わせる採取用カップに精液を入れ、精液がサラサラに変化するまで20分ほど置いた。付属の採取棒を使用し、スマートフォンのフロントレンズに乗せるためのレンズカバーに自分の精液を付着させるのだが、ここが難関だった。
説明動画では極少量の精液をレンズカバーにのせていたが、いざやってみると動画の通りには上手くいかなかったのだ。精液がしっかりと付着しているのかがよく分からず、2~3回同じ作業を繰り返した。
Seemのアプリのカメラを起動し、恐る恐るスマートフォン顕微鏡レンズをフロントカメラにセットする。レンズをピンポイントでフロントカメラに合わせるのもひと苦労だったが、なんとか説明通りにできた。
スマホの画面に自分の精子が映し出され、動いているのを実際に見て、思わず声をあげてしまった。
自分の精子を見て童心に返った
自分の動いている精子を見るのはもちろん初めてだ。学生のころ保健の授業で見た、精子が動いている動画は他人事だと思っていたが、それが自分の精子となると正直気持ち悪いと思ってしまったのだ。
ただ、この精子が受精して妊娠すると考えたら、生命の神秘を感じて、気づいたら少年の頃に戻ったかのようにワクワクしながら自分の精子を覗き込んでいた。
測定結果には濃度と運動率の両方が表示される。WHO・ラボマニュアル5版(2010)によると、濃度が15百万/ml、運動率が40%を下回ると自然妊娠が難しいとされているようだった。
濃度は61.9百万/ml、運動率は60%というのが私の結果だった。前述のようにWHOの基準値を下回ると自然妊娠が難しいとのことだったので、基準を上回っていることが確認でき、ほっとした。
個人的には、WHOの基準のほかに年齢別の平均値や中央値の記載があるとさらに親切だと感じた。
いつもと違う感覚の自慰行為
ひと通りSeemを使用してみて強く感じたのは、精液の採取タイミングの難しさだ。
同棲中のカップルや夫婦で、各自の部屋がない場合には、パートナーが在宅中に精液を採取するのもどこか気まずいだろう。
ただ気持ちよくなるための自慰行為ではなく、精液を採取するための自慰行為というのは初めての経験で、どこかモヤモヤする感覚もあった。
私はパートナーから聞いてSeemを利用したが、普段からパートナーと性について話さないカップルの場合、精子を調べるということ自体が面白いネタとして捉えられる可能性もあるだろう。
Seemは定期的に計測して自分の精子状態の改善を追えるように設計されているが、実際に継続して計測できるかどうかはパートナーの理解や協力が必要不可欠な要素であると感じた。
精子検査をもっと身近なものに
私は結婚もしていないし、子どももすぐに欲しいと思っていないため、精子の状態を把握できたからといって何かが劇的に変わったわけではない。ただ、WHOの基準値を上回っているということを知ることができただけでもよかった。
笑われるのではないかという心配もあったが、勇気を出してさりげなく会社の同僚に勧めてみた。彼は最近結婚したばかりということもあり、以前から興味はあったとのことだった。すぐに購入、使用し、ほかの同僚にも自ら勧めていた。
幸い私の周りでは精子の検査を冷やかす人はいなかったが、もしからかわれたり、ネガティブにとらえられていたら、私もほかの人に勧めることはしなかっただろう。
仮に精子に異常が見つかった場合、早期の発見によって改善の選択肢が増えるかもしれない。また、パートナーとのライフプランによってとらえ方も変わるだろう。男女関係なく、まずはオープンに話せる空気感をつくり、気軽な気持ちでチェックが行えるようにサポートし合うことが大切だと感じた。