これは、ホルモンの波と闘う、一人のおばさんの記録である。
(肉のホルモンのことではありません)

38歳、会社員兼物書き。小学校低学年の子ども一人、夫一人。

この数年、とてつもない精神の不調に悩まされていた。

それが月経前に定期的にやってくるものだと気づく。

症状があまりにひどいので、メンタルクリニックを受診した。

ここにその記録を書き残す。

個人の体験であるため、万人に効果があるわけではない。

私のように悩んでいる人も多いと思うので、参考程度に読んでいただけたら幸い。

普段の私と月経前の私

普段の私は、自分で言うのもなんだが前向き・社交的で、クズな一面も持ち合わせた愛しい馬鹿野郎である。

会社では「あほだけど使い減りしない」「発想とフットワークでIQの低さをカバー」「メンタル防弾ガラス」などと言われている。

特にメンタルの強さは折り紙つきで、仕事絡みで殺害予告をされたり、「今日で会社辞めろ」と上司に電話ガチャ切りされたりしても、まあ大丈夫。

「武勇伝にしたろ」などと思っているし、ちょっといいことがあるだけで「世界はスバラシー!胸熱!」などと言っている。こんな私が、この数年、おかしくなる時期が月に10日間ほどある。

月経前だ。

電話で上司が「了解了解」と電話を切っただけで、「うわ怒ってる…これ絶対陰口言われるやつだ」などと意味不明な被害妄想をしたり、

20時ごろに帰る予定の夫に、20時10分に電話して「どこにおるんじゃ、浮気かオイ」などと言ったりする。

自分以外の全ての言動が自分を責めているように感じ、それに対する攻撃性も高まっていく。

集中力も下がり、こぼす、落とす、忘れる、パンツ裏返しにはく。振り返って始末書と月経の周期を見ると、もれなく月経前に合致する。

「もうだめだ」「しんどい」「死にたい」が頻出ワード。そして、世界が滅びるよう神に祈っている、なかば本気で。

命の母ホワイトとの出会い

この状態が月経前特有のものだと分かってから(分かっただけでも少し救われた)、嵐が過ぎ去るのをひたすら待つようになった。

あるとき、Twitterで女性薬「命の母ホワイト」(小林製薬)の存在を知り、薬局で買って試してみた。

すると、月経前であることに気づかないまま月経を迎えた。

つまり、嵐がこなかった。

青天の霹靂とはまさにこのこと。

職場にも「置きホワイト」があるほど、心の支えとなった。

ここで私は「月経前の精神不調は、薬の力でねじ伏せられる!」という成功体験(あくまでも個人の体験です)を得たのだった。

ところが。

月経前の嵐も戦略を練ってきたのか、徐々に勢力を戻していった。

世界の滅亡を祈るほどではないが、月経前は夜になると特に悪い妄想にとりつかれる。

もともと業務の特性上、一つの出来事から、最悪のシナリオ~最善のシナリオを全パターンを想定する、という思考のクセがあり、月経前はこのクセが余計な仕事をする。

帰宅が遅れた夫を責めたり、息子が公園に行っている間も恐ろしい事件を想像してしまったり……。

このままでは家族が大変なめに遭ってしまう。

そこで私は、命の母から得た「月経前の精神不調は薬の力でねじ伏せられる」という成功体験に背中を押され、思い切ってクリニックを受診しようと決めた。

月経前症候群(PMS)などでググると、

体の不調が多い場合は婦人科、

精神の不調が多い場合は心療内科

―というクリニックのコラムを数件見かけたので、メンタルクリニックの受診を決めた。

メンタルクリニックさがし

まずネットで「心療内科」などで検索し、出てきたクリニックのHPを見る。

2つのクリニックに電話をかけた。

「月経前の精神不調を診てもらえるか」と伝えると、

1軒は受付から医師にバトンタッチされ「婦人科は検討されましたか?」「予約がいっぱいなんですよ、来週なら空いているかもしれませんね」などと言われた。

私はここで、このクリニックの受診を諦める。

医師の口調が冷たくて怖かったのだ。

業務上、怖い人には慣れているが、精神不調で受診しているときにこういう人と会話はしたくない。仕事モードで「そうですよね、お忙しいですよね」などと機嫌を取りつつ電話を切った。

この段階で怖いなら、名医だろうと私の心には良くないだろうと思った。

もう一軒は受付の方が対応。

「大丈夫ですよ、予約制ではないのでそのままお越しください」「診察時間の30分前が受付です」と丁寧な対応。

行こうと思った決定打は「お気をつけてお越しくださいね」の一言だった。

いざ受診

さすが絶賛月経前。出発してまもなく保険証を忘れたことに気づきとんぼ返り。

気を取りなおしてクリニックに到着すると、看板には「漢方治療」「疲れやすい、肩こりがつらい……などでも気軽にどうぞ」というようなことが書かれていた。

そこでまた私の受診の心理的ハードルが下がる。

(漢方か! 肩こりも慢性的にあるしね! 該当してる!)

初診なので、問診票を記入。基本情報以外にも、細かい質問がA4用紙2枚もあった。

体は火照るか冷えやすいか、体で痛いところはないか。普段の性格は、便の状態は、1日の尿の回数は、月経は定期的にやってくるか―。

こんなに自分の体と向き合うのは久しぶりだな、と思いながら記入していく。

待合室もゆったりしていて、壁に向かって座れるカウンター席もある(これ助かる人いるんじゃないだろうか)。

庭の入り口には「庭でお待ちになりませんか」などと張り紙がされている。癒やし空間。

15分ほど待って、診察室に呼ばれた。

男性の医師が、白シャツとスラックス姿で待っていた。

おかけくださいと促された椅子は、一人掛けのソファ。棚には大量の漢方薬が並んでいる。

医師が「月経前ですね~どんな症状ですか? ずーんと落ち込む感じです?」と穏やかな声で尋ねてきたので、私は以下のようなことを伝える

■イライラ、感情の爆発、悪い妄想が止まらない―などの症状で家族に迷惑をかけている
■集中力も下がり、仕事のミスは決まってその時期
■ゾワゾワしだしたなと思って月経管理アプリを見ると、だいたい排卵予想日から3~4日後
■月経前の10日間ほどその不調が続く
■肩こりは慢性的、月経前は足の冷えがひどく眠れないことがある
■業務上、最悪のシナリオを考えるクセがあり、月経前はそのクセがプライベートでも余計な仕事をする
■症状が出始めたのは5年ほど前からだろうが、月経と関連があると気づいたのはこの2~3年だと思う
■命の母ホワイトを半年ほど前に飲み始めて調子が良くなったが、最近また精神不調が強くなった気がする
■今日まさに月経予定日6日前で、嵐のさなかにいる

医師「その思考のクセ、いちばんダメージ受けちゃいますね」

私「ですよね(汗)妄想族って言われます……仕事では役立つんですけど、プライベートではほんといらなくて。ADHDっぽいのも月経前はひどくなっちゃって」

医師「いや、ADHDっぽい傾向というのは、今のお仕事に合ってるんじゃないですか? 大丈夫ですよ」

私(大丈夫なのか!)(チョロい)

そんな会話をしながら、医師にこんなことを聞かれる。

医師「普段も不安が強いですか?」

私はふと自分を振り返る。

(むしろ楽天的なんじゃないか?? けど待てよ……いつも最悪のシナリオを考えるってことは、不安が強いってことなんだろうか……)

(不安の強さを普段はメンタルの強さで補っているけど、月経前はそのメンタル防御力が落ちてるだけでは……?)

私「もしかすると、不安……強いかもしれません」

医師「じゃあイライラを抑えるための月経前用と、不安を落ち着かせるために普段用、2種類、漢方出しましょうか」

私(そんなことできるのォオオ)

処方された漢方薬

というわけで、処方されたのは「月経前」と「普段」の2パターンだった。

月経前=四物湯、柴胡桂枝湯(症状が出始めたら飲む)
普段=抑肝散加陳皮半夏、半夏厚朴湯

ここで言われたのが、意外な一言。

医師「飲んだらわりとすぐ効果出ます。効いてないと思ったら飲み続けずに、もう一度来てください。自分の感覚で大丈夫です」

私「漢方って飲み続けないと効果ないって思い込んでました」

医師「いやいや、そんなことないですよ」

私「飲んでいるうちに慣れて効かなくなることありますか?」

医師「それは効いていないってことですよ」

私(へえーーーーー!!)

お会計は薬代入れて4300円。

3日間飲んだ感想

3日間、月経前用に処方された漢方を飲んでみた。

現在月経予定日3日前。
この記事を書く直前の、私のツイートをご覧いただきたい。

漢方効いたツイート

月経前だと思えない、この精神の凪!!

風呂で言うこときかない息子にキレていた私が、昨夜はクイズを出し合って笑っていた。

夫に一度も腹が立たなかったし、何か言われても責められている気持ちにならなかった。

悪い妄想も襲ってこない。もちろん世界の滅亡など祈らない。

不調になるとLINEや通話などで友人に頼るが、それも今のところヘルプを出していない。
これってもしかして、効いてる……!?

いやいやそれでもまだ分からない。

プラセボ効果というやつかもしれない! そう私は疑り深い女。

もう少し様子を見て、またここに追記しようと思う。

(いったん 了)

後編「処方された漢方薬で、月経前のメンタル嵐が微風になった」はこちら

【本記事は2021年2月10日掲載のnote「月経前のメンタル嵐でクリニックを受診した話」を一部編集して転載したものです】

※本記事の内容は個人の感想です。必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、適切なご対応をお願いいたします。

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