ランドリーボックスでは、特集「がんばりすぎちゃうあなたへ」を1カ月にわたってお届けしています。第7回はコラムニストの伊是名夏子さんです。

Photo by Yoshimi Kikuchi

コラムニストの伊是名夏子(いぜな・なつこ)さんは、生まれつき骨が弱い障がいがある。これまで骨折や手術を繰り返してきた伊是名さんは、結婚、出産などいくつもの壁を乗り超えてきた。車いすでの生活を送りながら、仕事や2児の子育てに奮闘している。

伊是名さんの日々をつづった初の著書「ママは身長100cm」は、障害ある・なしに関わらず、自分らしく生きることの素晴らしさが詰まった一冊だ。多くの人を勇気づけてきた伊是名さんに、生理や性教育、憂鬱なときの過ごし方について話を聞いた。

布ナプキンを買ってきてくれたのは夫

—私たちは生理のメディアを立ち上げました。伊是名さんは生理に関する悩みはありますか?

生理前は体温が安定しなくて寝苦しく、熟睡できないのが悩みです。イライラしちゃって、精神的に不安定になるかな。月に一度だけ「夫と別れたい」と思ってしまう日があるんですけど、だいたい生理前。生理が始まっちゃうとそんなふうに思うこともなく、落ち着くんですけどね。だから生理って本当に大変だなと思います。

生理でつらいとき、夫が背中をさすってくれたりするので、それは嬉しいですね。私は湯たんぽをよく使っているのですが、湯たんぽにお湯を入れて持ってきてくれるときもあります。しんどいとき、カラダを温めると和らぐのでありがたい。夫やヘルパーさんたちの気遣いに日々助けられています。

—生理用品はどんなものを使っていますか?なにかこだわりがあれば教えてください。

私は15年くらい前から布ナプキンを愛用しています。使い始めるきっかけは意外にも夫でした。彼は環境やエコへの関心が高いので、自然食品などを扱う専門店で見つけて買ってきてくれたんです。

すごくびっくりしました。「え!本当に買ってきたの?」って。夫の話によるとお店のご婦人にこんなのがあるよと教えてもらって「カノジョに買ってあげたら?」と勧められたそうなのです。だけど、まさか本当に買ってきてくれるなんて(笑)。

当時、布ナプキンの認知度はまだまだ低かったと思います。今みたいにきちんと縫製されていなくて、ただの生成りの布を自分で切って使うタイプのものでした。使ってみると、それまで使っていた紙ナプキンと比べてとても快適だったんです。それ以来、私はずっと布ナプ派です。

つい先日、久しぶりにスーパーの生理用品コーナーを見たら、オーガニックコットンの紙ナプキンが充実していることに気づきました。オーガニックのものは専門店でしか買えなかったのに。いつの間にか時代が変わったんですね。

いろんな人の手に取りやすく、購入しやすくなって、女性の選択肢が増えるのはいいことですよね。

—布ナプのベテラン勢なんですね。布ナプキンは洗う手間がかかる。つけ置き洗いをするときに家族の目が気になるという声も聞きます。布ナプキンを買ってきてくれるくらい、夫さんからの理解があるのはいいですね。

そうですね。夫は理解がありますが、うちには小さい子どもたちもいるので、つけ置きしている布ナプを見て「ママなにこれー!きたないー!」といわれることもあります(笑)。そんなときはすぐに「汚くないよー。赤ちゃんのベッドなんだよー」と話して、生理について教えています。

布ナプ生活のおかげか、生理に関してはオープンな家庭だと思います。「今日はママ血ぃでてるから、ムリムリ。子どもたち2人でお風呂に入ってねー」という会話も日常です。幸いなことに我が家には男の子、女の子両方いるので、ジェンダー問わず「生理は自然なこと」とフラットに話すよう心がけています。

Photo by Yoshimi Kikuchi

性教育は夫婦で楽しむ

—伊是名さんは性教育にも興味があると、ご著書に書かれていましたね。

性教育は趣味です。体をキレイにすることや、プライベートゾーンの話、赤ちゃんがどうやってうまれるか、嫌なことをされたらどうするか、自分の好きなことを大事にするためにも相手の話を聞くことなど。性教育は「自分を大切にして、自分らしく生きていくこと」につながります。私も勉強しながら、子どもの向けの絵本を読み聞かせてあげたりしています。

ママ友さんたちと、おすすめの絵本について情報交換することがあるのですが、「性教育」関連の絵本を紹介するとあまり良い反応がないんですよね。みんな性教育が気になっていても、ニガテ意識があるみたい。生理やセックスって自分にとって身近なものだからこそ、子どもにどう伝えたらいいのかわからないのかも知れません。

性教育について勉強会やワークショップを開いているご夫婦と話す機会があり、「私、性教育好きなんです」と伝えたんです。すると「夫さんはどう考えている?」と聞かれ、性教育は夫婦で楽しく取り組むことが大切だと教わりました。性教育はパートナシップのベースにもなっていると思うので、我が家でも実践していきたいです。

自分に嘘をつかない

—子どもが小さいうちに家族で性教育を楽しめるって素敵ですね。伊是名さんは人生を自分らしく楽しむためにどんなことを心がけていますか?

自分に嘘をつかないことですね。仕事もすべて受けるのではなく、なるべく選んで、大切にしたいことに時間を掛けられるようにしています。仕事を断ることはとても難しいのですが、誠意をもって断るということも大事だと気づきました。

ハフポストさんでブログを、書かせていただくことになり、そのご縁で本を出版することになるとは思いもしなかったんです。でもディスカヴァー・トゥエンティワンさんと、ハフポストさんが始めることなら「おもしろそう」と感じたなので楽しく取り組めました。

仕事に限らずですが、なにか困ったとき、人に相談してみるとあっというまに解決することも多いです。たとえば、私は新聞でコラムの連載をしているのですが、掲載された記事を切り取って、スキャナーでスキャンして保存しておく作業が億劫だったんです。1年分くらい溜まってしまって。

そのことをなにげなく友人に話したら「新聞社にPDFデータがあるはずだから、送ってもらえばいいんじゃない?」といわれました。「そっか!」と。新聞社の方に聞いてみたら、すぐに送ってもらえるようになりました。自分では思いつかないことが抜け落ちていることがよくあるので、人に頼ったり、いいアイデアはすぐに取り入れています。

Photo by Yoshimi Kikuchi

ズル休みは最高

—仕事や家事・育児など、忙しいうえに、女性なら生理がつらいという人も多いですよね。それでも仕事が休めないって人も多いみたいです。

休んでも「あれ。意外とどうにかなるじゃん!」と気づくこともあると思いますよ。うちの夫は仕事人間というか、むしろ“仕事中毒”なタイプなので全然仕事を休みません。私が一人目を出産したときも休まなかったくらいです。

そうそう。先日、私が怪我をして入院したとき、初めて家族のために会社を休んでくれたんです。今まではそんなことなかったんですよ。だから、怪我をしてよかったと思うことがあるとしたら夫が仕事を休んでくれたこと(笑)。休みやすい環境の職場って理想だし、お互い様でしょ。今回、ひとりくらい休んでも平気だったと気づいたみたい。

私もやりたい仕事がたくさんあるので、いろいろ詰め込みすぎちゃうときがあるんですけど、本当にちょっとだけ余裕が出てきたタイミングで、休む日を予定に入れるくらい意識してしっかり休むようにしています。

Photo by Yoshimi Kikuchi

—いつもがんばっている伊是名さんだからこそ、意識的に休んでいるんですね。仕事も休めず、がんばりすぎちゃう人たちに伝えたいことはどんなことですか?

「ズル休み最高だよ」かな(笑)。

人生は休み休みがいいですよ。でも勇気がいるんですよね。休むってこわい。その気持ちもよくわかります。だけど意識して休まないと休めないじゃない私たち。

“皆勤賞”っていまもあるんですね。あれは、どうしてなくならないんだろう? 息子は来年から小学校に入りますが、絶対に学校を休みたくない“真面目ちゃん”なんですよ。でも私は、息子にはあえて休みをとってほしいと思っているんです。

たまには、サボるのも悪くない。なぜなら、“休まざるを得ない人”の気持ちがわかるから。

小学生にとって休むって恐怖。休んでいる間に「このページもう終わっちゃったんだ」とか「みんなが作っているこの作品、僕は作れなかったな」とか「楽しみにしていた行事に参加できなかった」とか。

そういう気持ちを息子にももっともっと味わってほしい。学校も仕事も、休まざるを得ない人って世の中にいっぱいいて、でもその人たちの気持ちって、どうやったら理解できるんだろう?

私は子どもの頃から、手術や入院を繰り返してきたので学校を休むことは日常でした。そんな私自身、学校を休んで残念な気持ちになることもあったけれど、実際なんとかなってきたんです。

学校教育ってみんなが「平等=同じでなければいけない」という考えがまだまだ根強いなと感じます。もっと多様な生き方を知ることが、助け合いや休むことに繋がるから、自分の生き方もラクにしてくれると思います。

—がんばりたいけどできない人たちの気持ちにも、寄り添える。

がんばりたい気持ちは大事です。でも、うまくいかないことのほうがいっぱいあるじゃないですか。そんなときは悩んだり考え込んだりせずにすぐに諦めます。ダメだったなあ。でも誰も悪くない。しょうがないって(笑)

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