はじめまして。布袋太郎と申します。アラフォーの男性、そしてゲイです。

この連載では、自分がゲイライフを送る中での出来事などを通じて、ノンケ/ストレート(異性愛者)の方にも共感いただけるかもしれない、世の中の違和感などを発信させていただきます。

自分をゲイと自覚して25年以上経ちますが、ここまでLGBTQIAという言葉が浸透したり、同性カップルが登場するCMが放映される時代が来るとは思っていませんでした。昔の自分にエールを送ってあげたい気持ちでいっぱいです。

そんな時代になったからこそ、同性愛者も一人ひとり違うんだなぁ!ということを知ってもらいたいのです。

今回は「結婚」についてです。

Photo by Robert V. Ruggiero on Unsplash

ゲイとして自分が選択した、現時点での“結婚的なもの” 

自分は長年付き合っている彼氏がおり、今年同性パートナーシップを申請しました。

現時点で同性婚がない日本では、ゲイライフ的に言うといわゆる「晴れて、ゴールイン!」という状態だと言えるのかもしれません。

周りの友人達に報告をすると「良かったね!」「式はするの?」「プロポーズはどちらから?」「女装してドレス着よw」などなど…自分たち以上に喜んでくれました。

というのも、実はパートナーシップ制度を活用する男性ゲイカップルは決して多くありません。

制度を活用する意義を感じられなかったり、お互いの自由を優先したいという想いがあったり、シングルでいることを選択する人がいたりと理由はさまざまです。

そんな中、アラフォーのゲイ男性同士が、あえて同性パートナーシップを入れることは、極めて“ロマンティックな出来事”に見えたのかもしれません。

渋谷区が発行する同性パートナーシップ証明

同性パートナーシップ制度と同性婚との違いなどはコチラの記事でおさらいいただくとして、自分が取得したのは東京都渋谷区が発行している「同性パートナー証明制度」です。

2015年全国に先駆けて制度を導入した渋谷区は、同性パートナーシップ制度の象徴のように扱われがちですが、住民がそこまで多くないことや取得までのハードルが高いためか、申請数自体は全国の中でも多くありません。

自分は2022年秋に申請しましたが100番未満でした。驚きです。

この背景には、申請に必要となる公正証書が関わっています。

公正証書とは簡単に言うと、公証役場という公的機関で管理される個人間の契約書です。渋谷区の同性パートナーシップ制度の申請に必要な公正証書は下記の2種類です。

  • ①任意後見契約公正証書 : 自分の判断能力が欠如した場合、パートナーに身辺整理の代行を委任できる契約。行政書士から基本的にはフォーマットに沿うことが重要と言われました。
  • ②合意契約公正証書:二人が法的な男女の婚姻関係に準ずる関係であることを合意する契約。比較的自由に決められるのでペットについて言及したり、貞操を守るべきかどうかなども、条文として入れるかどうかなど、自分たちらしい条文を設定することができる。

契約書の作成を行政書士に依頼したり、公証人や公証役場へ支払うお金なども含めると、総額で15万円以上はかかったと思います。

渋谷区もそれを見越して助成金を用意してくれています。しかし、そもそも「そこまでしてでもパートナーシップ制度を活用したい」というゲイ男性は、現段階では多くないのかもしれません。

また「身バレ(親や会社に同性愛者だとバレる)」を心配するゲイが多いのも課題です。

実際には、公正証書の作成やパートナーシップ制度の申請・証明書の取得にあたっては、一切親の承認は必要ありませんでした。

しかし「親の同意が必要なのではないか」という誤解をはじめ、「パートナーシップを入れるなら親にカミングアウトしなければいけない」という思い込みのあるゲイの友人も多くいました。

意外とアラフォーゲイ男子でも、この制度にまだ無頓着だったりするのです。

自分がしたかったのは本当に“結婚”か?いや“事実婚”なのかも

このようなアラフォーゲイにとってもまだまだ得体の知れないパートナーシップ制度ですが、自分たちがわざわざ公正証書の作成や渋谷区のパートナーシップ証明書を申請するきっかけになったのは「パートナーと住宅を共同購入する」という極めて実用的なものでした。

自分にとってはパートナーシップ制度を申請したからといって、「晴れて、ゴールイン!」「ロマンチックな結婚」という感覚はあまりありません。

そのため、周りの友人が考える「結婚」とのギャップに驚いたのです。

ゲイの自分から見ても、男女の結婚制度には違和感を感じることがしばしばあります。

法律で用意された夫婦のテンプレートに沿うだけでなく、自分たちらしい形を模索・選択できるようにすべきだと考えています。

もし自分が異性愛者であっても、法律婚を選ばずに事実婚を選んでいるタイプなのかもしれません。

もちろん、日本で同性婚ができないのは大問題ですし、1日でも早く制度化されて欲しいと願っていますが、自分が利用するかと言ったら別の話。

もし同性婚ができる社会になったとしても、それが現在の男女の結婚制度に準ずるような形、つまり、夫婦別姓の問題など男女のアンフェアな形式や社会的な規範を用いるものであれば、少なからず自分はその制度を選ばないでしょう。

男女における制度の矛盾は同性であれば関係ないのでは?と感じる人もいるかもしれませんが、ゲイカップルでも、社会的に求められる男女的な役割をハッキリつけるカップルも多いです。

男女でも結婚観はさまざまですが、ゲイでもそれは同じだということを頭の片隅に置いてもらえたら嬉しいです。

ゲイカップルのペアローンでの住宅購入事情

ここで一つ補足しておきたいのが、ゲイカップルのペアローンでの住宅購入です。

今では沢山の銀行がLGBTカップル向けのペアローンを提供していますが、共同で家を買う時に必要なのは「パートナーシップ証明書」ではなく「公正証書」が基本となります(一部の銀行では公正証書も不要な所もありますが)。

というのも、パートナーシップ証明書の取得にあたって公正証書が不要な自治体が多いのが現状です。渋谷区ではパートナーシップ証明書を所轄するのは、婚姻届などを提出する住民戸籍課ですが、全国でもパートナーシップ制度の申請数が多い大阪市や世田谷区や横浜市では、人権課や男女共同参画課といった部門が所轄しており、そもそも観点が異なっていたりします。

どちらの制度も良し悪しがありますが、まだまだゲイカップルがペアローンで共同で住宅を購入するのはハードルが高いことには変わりません。

ゲイの中にも蔓延る「The結婚」のテンプレート

話をロマンチックな「結婚」に戻しましょう。さきほど、周りの友人と自分の「パートナーシップ」や「結婚」のイメージのギャップについてお話をしました。

結婚式場でパーティはしないの?写真は撮らないの?ウェルカムボードはどんなものがいいかな?動画をつくろう!と、盛り盛りのお祝いパーティを友人たちが企画してくれました。

彼らの頭の中にはいわゆる男女で行う「The結婚式」があり、それをゲイカップルが行うこと自体に意義を感じているようでした。

しかし、自分とパートナーは「The結婚式」に全く興味がないタイプの二人。

まさにこれは、ストレートの友人からしばしば聞く “親族や友人からの重圧”と言ったような周囲の期待が、自分たちに大きくのし掛かってきたと言えるでしょう。

最終的には自分たちの意向を友人たちにも伝えて、全員が納得する形の楽しいパーティを開催できましたが、そのプロセスで社会の闇を少し見た気がします。

最近では、結婚式をしないカップルや、「The結婚式」とは違う選択をするストレートのカップルが身近にあらわれはじめているように思います。

多様性が重要と言われる世の中になっているからこそ、ストレートの方々の結婚式を含めた「結婚像」についても、多様な姿がもっと前面に取り上げられることで、少しでも多くの人が「結婚」に抱いているイメージが解きほぐされて欲しいと願うばかりです。

そうなることが、LGBTQ含めた一人ひとりの幸せにも繋がっていくと思います。

母親から勇気づけられた「それ、結婚て呼ぶのやめようよ」という一言

パートナーシップ制度を申請するにあたり、自分も母親にカミングアウトをしました。

ほぼ身バレしている状態だったので驚きは少なかったようですが、自分がゲイだと告白したこと以上に、母親は「結婚」という言葉に敏感に反応しました。その時の一言が忘れられません。

「いわゆる男女の結婚と一緒なの?もし男女の結婚に違和感があるんだったら結婚て呼ぶのやめようよ。同性愛者とか関係なく、旦那と妻とか、それに当てはめて息子が結婚すること自体、平成で終わりにしたい。」

70歳を超えた母親の言葉は、非常に示唆にとんでいました。

自分も「結婚とはなんぞや?」を常々問い直しながら、パートナーや親戚のような友人たちと、日々生活をしていきたいと思います。

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