2021年11月4日、世界の生理用品開発者たちと話す「ラブピースクラブの生理トーク Vol.2」が開催された。初回はアジア初の月経カップ「フルムーンガール」を開発した台湾のヴァネッサさんと長田杏奈さんをゲストに迎えていた。
今回は、台湾発の吸水ショーツ「ムーンパンツ」開発者のユアン・イーさん（以下、イーさん）と、ジャーナリストの伊藤詩織さん（以下、伊藤さん）のトークセッションが行われた。台湾と日本の生理文化の違いや、吸水ショーツがいかに生理を変えたか、また生理の貧困問題などについて話がかわされた。
ランドリーボックスでは、トークイベントの内容を一部抜粋してまとめる。
台湾の生理カルチャーは日本と似ている？
イベントの冒頭では、伊藤さんが日本では生理に関する教育を男性が受ける機会が少ないため十分な知識が得られていないことを指摘。男性と生理について話し合う風土がまだできていない現状もあり、学校で生理用品を忘れたときや急に生理が来たときには、友達と生理用品を隠しながら貸し借りしていたという。
これに対してイーさんは、台湾でも同じだと続けた。イーさんの学生時代には生理用品を巾着袋に入れて歩いたり、袖にナプキンを入れて隠していたこともあると話した。しかし、近年では公共の場でも生理について話せる雰囲気に変わってきたという。
ただ、先進的に見える台湾でも、保守的な人がまだ多くいるという。
ある会社で女性社員が生理休暇を取得しようとしたら、上司に使用済みナプキンを持ってきて生理中であることを証明するように言われたという。この出来事は台湾で話題になり、それ以降生理に関連する人道的な議論が熱くなったそうだ。
イーさんは月1回、オフラインでクラブ活動を行う場を設けてユーザーとのコミュニケーションの場を設けているという。テーマは毎回月経に関連したものに設定し、内容はゲストによるトークイベントや、月経時にできるスポーツ、タロット占いなど多岐にわたり、楽しさを強調したものとなっている。
「女性だけの秘密な集まりにしたくない」というイーさんの思いから、グループディスカッションやQ&A形式で、生理を経験したことのない男性でも参加できるようなシステムになっている。実際に訪れた男性は、参加者の女性たちからすぐに囲まれてしまうほど歓迎されているという。
生理用品のCMにも変化が起きている
画像＝ムーンパンツCM スクリーンショット
台湾では10年以上前に男性歌手の羅志祥（ショウ・ルオ）が3年に渡って生理用品のイメージキャラクターを務めたことがある。ドラッグストア「Watson’s」のCMの中では、ショウ・ルオが女性のために生理用品を購入する様子が描かれた。CMは反響が大きく、イーさんいわく、男性とも生理について公共の場で話しやすくなったという。
イベントでは、伊藤さんやラブピースクラブの北原みのりさん（以下、北原さん）が絶賛する、イーさん手掛けるムーンパンツのCMも紹介された。
パンクな演出で、家族でテレビを見るのと同じ感覚で見られるCMに仕上げたという。イーさんと同世代の人たちはテレビで日本の番組をよく見ていた世代だといい、随所に日本語が使用されているのも見どころだ。
また、経血を青色で表現しないことにもこだわった。赤色を使用すると一部SNSでのシェアが規制されることから、できるだけ赤に近いピンク色やケチャップで経血を表現した。冒頭部分では、さまざまなフルーツをメタファーに使って月経の多元性を表現している。
CMに対する反応は賛否両論だったという。「女性の本音を伝えてくれた」などポジティブな意見もあれば、保守的な女性から「はしたない」などネガティブな意見も多かった。しかし、イーさんはネガティブな意見が出ることは想定内で、それによって新しい議論が始まることもあるため、むしろ喜ばしいことだと話した。
生理の貧困に吸水ショーツが活用できるのではないか
伊藤さんが生理用品を十分に調達できない地域での取材時にムーンパンツを愛用していることから、話題は生理の貧困にも及んだ。
台湾でも、日本と同様に困窮者に対する生理用品の支援は、ナプキンなどの使い捨て生理用品で行われている。イーさんも、十分に使用できるものの市場には出せない「欠陥品」のムーンパンツを路上生活者などに寄贈・寄付したという。支援を受け続けなければならない使い捨てナプキンだけでなく、繰り返し使えるムーンパンツを使うことで自尊心が守られ、自立にも繋がると話した。
加えて北原さんは、ムーンパンツは更年期の不安定な生理周期や、尿もれにも活用できるアイテムだと話す。見た目が普通のパンツであることで尊厳が守られるように感じるという。知的障害者の女性や、車椅子の女性からもムーンパンツに対する感謝の言葉を聞くことがあるそうだ。
なお、イーさんはさまざまな生理用品を試してみないと自分に合った選択肢がわからないとし、ムーンパンツだけでなく、ほかの生理の選択肢にもトライしてほしいと話した。他の生理用品とミックスして使うのもおすすめだそうだ。
