私の「初めてタンポン」秘話。16歳、夏。いざ闇のデンジャラスゾーンへ

初めてのセックスのとき、出血がなかった。

映画やドラマのロストバージンのシーンを観るたび、なぜ自分には出血がなかったのだろうと考えるのだが、思い当たるフシはある。

あいつだ。

信じたくない事実として葬ってきたが、あいつしか考えられないのだ。

プール見学が苦痛で、あいつを試してみることにした

それは16歳の夏だった。

水泳の授業と生理がぶつかると、プールサイドで見学という、罰ゲームのような1時間を、女子ならば誰でも1度は経験したことがあると思う。

タンポンを使えばプールに入れるということを、中学生のころから聞いてはいたが、アソコの中に吸収体を入れることが考えられず、試すこともなしに毎夏を過ごしてきた。しかし、暑いプールサイドでひたすらクラスメイトの泳ぎを見ているのが苦痛で、水に入れるものなら入りたいと、試してみることにした。

サイズ展開に戸惑い、買うことができなかった…

それまで、タンポンの売り場すらよく見たこともなかったが、まあ、あるわあるわ。

まずはそのサイズ展開に戸惑った。サイズのバリエーションがあることすら知らなかったので、1番大きなサイズの直径が2センチ近くあるのを見てびっくりした。

まんこ、すげえ。

こんな裂け目に直径2センチのタンポンのみならず、赤ん坊も出てくるし、男性器も…。陰（ホト）は神秘だ。まるでブラックホールだ。

タンポンから宇宙の神秘に思いが至り、スーパーの生理用品売り場でブラックホールに引きずり込まれそうになる頭をなんとか現実に戻した。ジュニア用なるものを見つけて手に取ろうとするも、アプリケーターだの指で入れるから安心だのと、これまた種類がいくつもあって、何がなんだかわからなくなる。

結局、その日は買うことができず、翌日、タンポンを使ったことがあるという同級生に、おすすめを聞いてみることにした。

無事に購入したが、今度は…

彼女いわく、アプリケーター式はつるっとした素材で、先の丸くなっているものが使いやすい。でも、実は指で直接入れるもののほうが、無理なく、位置もわかりやすいのでおすすめとのことだった。サイズは小さいものから始めたほうがいいと言われてほっとした。

その日のうちに「フィンガータイプジュニアサイズ」を買い求め、さっそく試してみることにした。

まず、説明書を見る。楕円とひし形の中間のような図形で描かれた陰部と思しき部位の真ん中に白いものが刺さっている絵が描かれている。

その図形がなんのことだかわからない。

アソコの構造すら理解していなかった自分にとって、そこは川口浩探検隊が進む密林よりも深い、闇のデンジャラスゾーン。しかし、そこに踏み込まなければ目的は達せられないのだ。

おそるおそる手鏡を使って自分の陰部を見たときの衝撃は筆舌に尽くしがたいものだったが、それはまたの機会に書くことにする。

いざ、闇のデンジャラスゾーンへ

なんとか説明書の図と自分の体の部位を一致させることができたので、説明書の通りの姿勢で息を吐きながら挿入を試みるも、入らない。

場所を間違えているのかと思いながら何度か試みるが、天の岩戸もかくやの扉に阻まれて、全く進んで行かないのだ。

何度も説明書を見返し、ここで間違いないと思う場所に何度もタンポンを押し当て、全身汗まみれになりながら思い切り力任せに押し込む。

気分は天の岩戸の前で踊るアメノウズメだ。

脳内では、アメノウズメの舞にあわせて八百万の神々が歌い、踊っている。そしてついに、脳天を突き刺すような痛みと出血とともに、フィンガータイプジュニアサイズは膣の中に潜り込んだ。

アマテラスはその重い扉を開いたのである。

しかし、気になったのはその痛みだった。

初体験で出血しないことにがっかりしたのは、彼よりも私だったかもしれない

タンポンで処女膜を傷つけることはありませんと説明書に書かれているので、処女膜を傷つけたとは考えたくはなかったのだが、初めてのセックスのときに出血がないのを見て、やはりあのときに「やっちまった」のかもしれないと思った。

実際に、初タンポンで処女膜を傷つけてしまったかどうかは定かではないが、普段の私が郵便物を開封したり、買ったもののパッケージを開封するときの雑な手順を鑑みると、「やっちまった」可能性がある。

初体験の彼は、出血がないことを多少訝しく思っていたようであったが、そこに至るまでの私の振る舞いから、私に男性経験がなかったことを疑わずにいてくれた。

でも、初体験で出血がなかったことにがっかりしていたのは、彼よりも、むしろ私の方だったのかもしれない。

破瓜の出血で汚れたシーツというものに憧れはあった。それを見ることなく生涯を終えるのかと思うと、いまだに口惜しく、死んでも成仏できずにこの世を彷徨い続けてしまうような気がする。

＊

タンポンで処女膜が破れることはありません。また、初めてのセックスの際に出血がある人もいればない人もいます。