​先日、卵子凍結*1をしました。「卵子凍結」とは、将来の体外受精に備えて、未受精卵を凍結する技術を指します。

独身時代から卵子凍結をしているという芸能人の話題が、たびたび耳に入ってきます。

このコラム連載では、芸能人でもセレブでもない一般OLの私が未婚で「卵子凍結」を決意し、治療まで行った実体験を綴っていきます。今回は卵子凍結を決めた経緯についてです。

結婚は先送りできても、妊娠・出産は先送りできない

Photo by Samantha Gades on Unsplash

「生きているだけで、年齢を重ねていくだけで勝手に目減りして失われていくものがあるなんて、なんてやるせないんだろう…」

この感覚は、あまり男性が抱くことはない女性特有の実感値、焦燥感ではないでしょうか。

私は東京で暮らす33歳。好きな場所に住み、好きな時間に好きなものを食べ、就寝時間や休日の過ごし方も自由。副業をしながらの仕事も、わりと充実している会社員兼ライターです。

結婚願望を問われると特にどうしても結婚したいということはなく、ただそんな私でも思わず口ごもってしまうのはその後に必ず聞かれる「じゃあ、子どもは欲しくないの?」という質問。

私自身、子どもは大好きで、はとこに夢中。全くの赤の他人の赤子の動画がSNSで流れてきても、目を細めながら見てしまいます。

ここで厄介なのは「結婚」の選択は物理的に先送りができても(もちろん選択肢が狭まるなどの制約はあるかもしれませんが…)、「妊娠・出産」にはどうしたってタイムリミット、年齢的・身体的制限があるという残酷な事実です。

これは、現代社会を生きる女性には耳の痛い話だと思いますが、紛れもない事実です。

“現実を知る”ことで、自身の本音がわかる

Photo by Patty Brito on Unsplash

そこで私のように色々な将来の選択を棚上げにして決め切れない女性にこそ必ずやって欲しいことがあります。それは「婦人科検診のフルコース受診」。できればアラサーと言われる年齢になったら受診してほしいと思います。

まず、大前提、自分の体の状態について知っておくことはとても大切です。もし万一、思わしくない検査結果が出た場合にはすぐさま治療に入ることもできるし、働き方や生活リズムについて見直す良いきっかけにもなります。

もしかすると「このまま悠長に構えてはいられない」ともっと切実に自身のライフプランについて向き合うまたとないチャンスにもなり得ます。

そして、何より自分の本心なんていうのは本当のところ「その立場になった時に湧き出てくる感情」でしかわからないもの。“現実を知る”ことは、自身の本音を反映した建設的な将来設計、また現実的な優先順位の設定にとても重要です。

もしかしたら、想定していたよりも思わしくない結果が出る可能性もあります。ただ、その場合にも、その時点での選択肢を知り、もう出産妊娠について考えずにもっと自由に自分のやりたいことだけにフォーカスした人生設計に振り切ることも一つの選択肢です。

振り切りたくても、簡単に振り切れるものでもなかったり、「なぜ自分だけが…」と感じてしまうこともあるかもしれません。ですが、早々に自身の状況を知ることは、未来を考える時間や新しい選択肢を知るきっかけにもなるんだと思います。

まず検査だけでも受けておくべし

とにかく、自分の今の体の状態を知り、まずそもそもこのままで「妊娠・出産」について悩める選択肢が自分にあるのかどうかを把握し、そして結果が出た時に自身の中に渦巻く本音に気付けることこそ、またとない“決断を迫られる外的要因”になり得るのです。

(賃貸物件の更新よりももっと切実に決断を迫ってくる外的要因となるので、かなり貴重でありがたいものだと言えます)

私の周囲には先輩、同僚、友人と不妊治療中のカップルが少なくありませんが、全員口を揃えて言うのが「まず検査だけでも受けておくべし」ということです。

Photo by National Cancer Institute on Unsplash

私は31歳になる誕生日に独身の友人から、婦人科検診フルコースをプレゼントしてもらい一緒に受診。有意義な贈り物で、我ながら最高の友人です。私は子宮頸癌検診、乳腺エコー、AMH検査(*2)を受診しました(オズモールの「婦人科検診」予約ページはおすすめです)。

当時、AMH値などあらゆる数値が同年代の平均値より高い状態だったのですが、昨年はコロナでAMH検査をスキップし、2年後の今年に受診した際には「AMH値」が同年代の平均値を少し下回りました。

その結果を受け取った時、2年という時の流れの残酷さを感じながら予想以上に衝撃を受けました。

予期せぬ神様のいたずらに傷つかないように「卵子凍結」を決断

ちなみに、31歳の頃に私にはプロポーズを受け両親にも紹介済みの相手がいました。しかし、その彼と結婚に至らなかったのは、私の知らないうちに、彼は不妊検査(精液検査)を受けてくれており、その結果が芳しくなかったことが原因です。

私としては一緒に不妊治療に臨んでくれるのであれば問題なかったのですが、彼は極度のワーカーホリックで仕事大好き人間だったのでクリニック通院が必要な不妊治療と仕事との両立が難しいのは最初から目に見えていました。

話し合いは平行線を辿りお別れすることになりました。彼がとても切り出しにくそうに、検査結果について話してくれた時の苦しまぎれの笑顔を思い出すと、今でも胸を締め付けられる思いがします。

世の中には“誰も悪くないのに傷つけられる神様のいたずら”が至るところに溢れています。(この記事を読んで下さっているあなたにも、そこのあなたにも、きっとそんな経験の一つや二つあるはずです、わかります。ここからビッグハグを送ります…!)

今は恋愛モードではない私ですが、また将来を共にしたいと思えるパートナーと巡り会えるかもしれない。そして、その時に私は子どものいない生活を思い描くことはないと思います。だからこそ、当時の私のように予期せぬ神様のいたずらに自分も相手も傷つくことがないようにしたい。それこそが私が未婚ながら「卵子凍結」を決断した理由です。

Photo by Cody Black on Unsplash

私はこんな調子なので、今後生涯を共にしたいと思うパートナーに巡り会うかもわからないし、巡り会いの後に運よく自然妊娠でき、凍結した卵子を使うことはないかもしれない。

それでも、AMH値が下がったという事実を把握した上で、「卵子凍結」という選択肢も知っているのに、その選択をしないということは、将来の自分が「あの時ああしておけば良かった」と後悔する可能性を残しかねないと思いました。

将来、凍結した卵子を使って不妊治療をしても妊娠・出産できる保証はありません。それでも、“トライできる可能性“を未来の自分に残したいと思いました。

「今の自分が取り得る最大限の選択肢を将来の自分にプレゼントした!」と自信を持って言えるようにしようと決め、すぐさま「卵子凍結」するクリニック探しに着手しました。

“心のお守り”を得るために、“何もしなかった”のではなく、“今自分が出来得ることは全部した”という自信と痕跡が欲しくて「卵子凍結」に踏み切ったわけです。

次回は、クリニック選び、採卵までに困ったこと、卵子凍結にかかった費用や通院回数、結果などを細かくお伝えできればと思います。

*1〈卵子凍結〉

卵子凍結とは、将来の体外受精を見据えて未受精卵を凍結する技術のこと。

元々は悪性腫瘍や白血病等で抗がん剤治療や放射線療法を受ける女性患者に対し、治療前に卵子や卵巣を凍結保存しておくことで治療後の生殖能力を維持するために行われてきた。

2012年、凍結融解卵子由来で生まれた子どもに染色体異常、先天異常、および発育障害のリスクが増大することはないという見解を米国生殖医学会が発表。2014年にはFacebookがいち早く女性社員の卵子凍結費用を上限2万ドルまで補助する福利厚生制度を導入し、Apple、Google、Netflix、Uberなど数多くのテクノロジー企業、投資銀行、アメリカ国防総省などでも同様の制度の導入が進んでいる。

米国生殖補助医療学会の統計によると、米国での卵子凍結の症例数は2014年の6,090件から4年間で2018年には13,275件までに急増している。日本でも日本生殖医学会が2013年にガイドラインを発表し、健康な女性が将来の妊娠に備えて卵子凍結を行うことを認めている。

*2〈AMH検査〉

AMH(抗ミュラー管ホルモン/アンチミューラリアンホルモン)検査とは、卵巣の中に卵子がどれくらい残っているかを調べる(血液)検査。

AMHは、抗ミューラー管ホルモンと呼ばれる⼥性ホルモンの⼀種で、これから育っていく卵胞(発育卵胞、前胞状卵胞)から分泌されるホルモンのこと。

胎生期に卵巣で作られた原子卵胞は、加齢とともに減少し、AMH値も低下していく。AMH値が⾼ければ、これから育つ卵胞が卵巣内に多く残っている状態、値が低いと卵胞が減ってきている状態を指す。AMH検査は⽉経周期や体調などによる変動はなく、将来の妊娠の可否を決めるほどの正確なものではない。

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