「生理は恥ずかしい」小学生の頃からの刷り込み

すでに初潮を迎えていた小学校高学年の頃だった。

教室で女友達に生理用ナプキンの話をしたら、その子に「男子に聞こえるところで生理の話ししちゃダメなんだよ!」と目くじらを立てられたことがある。なぜ男子に聞かれちゃダメなんだろう、わたしの体のことだし、保健室にもポスターが貼ってあることなのに……という当時のとまどいの気持ちは、いまだに消えることはない。

それから20年ほど経って、当時よりは生理がタブー視されなくなってきた気がする。とはいえ、「オープンにするか、否か」という議論はいまだに続く。パートナーにすら生理であることを公にしたくない、という方も少なくない。その気持ちは尊重されるべきだろう。しかし、自分自身と周囲の人がより生きやすくするために、生理に関する情報をオープンにすることも、また尊重されるべきだと思う。

同性のアイドルたちは、一体どうやって折り合いをつけている?

ところで、わたしはモーニング娘。をはじめとしたハロー!プロジェクトのファンである。楽しくファンをしながらも、同性のアイドルということで、ずっと疑問に思っていたことがある。彼女らの生理についてだ。

わたしの「推し」たちに限らず、女性のアイドルグループにはローティーンから20歳前後の方々が多い。

自分のその頃を思い出すと、生理のときの重だるさはもちろん、生理周期もまだ安定しておらず、PMSなんて概念も学んでいなかった。月に1回来る不調と学校の試験や体力テストがぶち当たると最悪で、「不公平だ」と感じていたのを覚えている。

それと同じことが、アイドルという仕事においては、どうだろう。

生理で体が重たくても、激しく踊る日もある。お腹の底から声を出さなければならない日もある。ずっと立ちっぱなしの日もあるし、白い衣装でテレビに出なければならない日もあるかもしれない。頭が痛くても、お腹が痛くても、笑顔でいないといけない。そして生理について気軽に話題に出すこともできない。

これは一般人のわたしたちよりはるかにハードだ。畏怖の念を覚えた。一体どうやって、仕事と体調の折り合いをつけているのだろう。

そして、年若い彼女たちなら当然起こりうる体に関する悩みや意見を、ひっそりと隠さなければいけないのもしんどくはないだろうか。「お料理したよ」「お掃除したよ」「今日は転んで膝を擦りむいちゃった」と同じ温度で、「今日は生理でしんどいからお腹を温めたよ」ということを言えないのは、なぜなのだろう。アイドルという職業の持つ偶像性は、個人の人間性を隠さなければ成りたたないのだろうか。

そのように考えては、いちファンとして、彼女らに偶像性を強いてしまっている気がして、申し訳なさの気持ちも感じた。

一人ひとりの発信から、広げていく輪

そんなときに、とあるyoutube動画を見た。

彼女はモーニング娘。の元メンバーである尾形春水(おがたはるな)さん。2018年にモーニング娘。を卒業した後、学生をしながらインフルエンサーをされていている。

動画のタイトルは「【男子禁制?】女の子の日って。ゆるゆる雑談動画」というもの。

リラックスした雰囲気で友達とのおしゃべりのように、尾形さんがゆるゆると「生理」について話す。それは、アイドル時代の生理の話も含まれている。

たとえば、生理とコンサートが被ったとき、しんどかった話。白い衣装のときはヒヤヒヤした話。最初は「薬に頼りたくない!怖い!」と思っていたけど、薬を飲むとラクになることがわかり、適切に頼るようになった話。握手会のときは座れるし、休憩も挟めるのから少しはマシだった話。私服で仕事のときは赤いボトムを履けてよかった話。

トークの上手な彼女は軽妙なトーンで話すが、やはり苦労話として生々しく、いまだ年若い彼女の過去の苦労がしのばれる。

また、彼女はアイドル時代に過激なダイエットをした過去があり、それもYouTubeで明かしている。

「そのときは生理も止まった。生理がこないからラクかと思いきや、生理のときの体調不良がずーっと続く感じ。まだ健康的に生理が来る方がマシ」と話している。

アイドル本人によってアップデートされていく生理の価値観

尾形さんの動画を見たとき、わたしは少し「アイドル」の未来に希望が持てるような感覚になった。現役ではないとはいえ、アイドル経験を持つ彼女が声をあげ、動画を出したことが、アイドルが偶像性を強制されない世界へと近づく第一歩のように感じたからだ。「アイドルも人間だよ」と本人が言ってくれた気がして、とても嬉しかった。

尾形さんは21歳。同世代でアイドルの仕事をしている人や、生理の対処に悩みやつらさを感じている人もまだまだいるだろう。せめて悩みや対策を1人で抱えず、仲間内でノウハウが共有されていてほしいし、運営企業や周りの大人たちが、彼女たちの心身をしっかりサポートしてあげてほしい、と願うばかりだ。

尾形さん以外にも、ハロー!プロジェクト出身者では元アンジュルムの和田彩花さんも「#NoBagForMe」という、生理用品のあり方を考えるプロジェクトのメンバーとして活動している。アイドルグループを卒業してからもアイドルを名乗る彼女が、現役アイドルとして生理に関する議論に加わり、意見を交わす姿はとても頼もしい。

生理についての価値観が、誰にも強制されることなく、静かにアップデートされていく。

いつか、「思いっきり踊っても横漏れしないナプキンはこれだよ」「生理痛のときはこういう工夫をしているよ」と、アイドルたちがひとつの話題として発信していく時代がくると願っている。

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