前回は産後、ホルモンバランスのアップダウンに心が敏感に反応してしまい、笑いと涙の育児をしていたことをお話しました。
HSP(注)は自分の気持ちにも振り回されますが、共感力の高さから相手の気持ちにも敏感です。周囲の空気を読んで安全確認をしてから行動するので、育児に対する世間の批判にも敏感に反応してしまいます。
*注:どんな人であっても、その人の身体に“体質”があるように、心にも“気質”があります。HSPは、うつなどの心の病ではなく、気質です。もし「自分もそうかも」と思う人がいれば、HSPという“心の気質”を知ることで、環境への適応力が上がり、より生きやすく、より自分らしく過ごせるようになるのではと思います。(精神科医:鹿目将至)
基本的に人に迷惑をかけること、目立つこと、怒られることが苦手なのです。
そして世間ではお母さんに対する目はとても厳しいと感じます。「ベビーカー論争*1」「ポテトサラダ手作り論*2」「子ども用ハーネスは虐待?*3」などなど、一生懸命育児していても批判の目にさらされることがあります。しかし親がどんなに気をつけていても、思うようにいかないのも育児。
赤ちゃんと電車でおでかけするまで半年かかりました
もし公共の場で、知らない人から「うるさい!」って怒られたら?
「仕方ないじゃない。私だってがんばっているの!」と口には出さずに心の中でイラッとするか、スルーできればいいのですが、HSPの場合は頭が真っ白になって思考停止してしまいます。
怒られることはHSPにとって、とてもショックが大きいことなのです。
いつも「最悪の事態」を想定してから動くのがHSP。ベビーカーのほかに泣いたとき用の抱っこひもを用意し、オムツにタオル、飲み物などを用意していると荷物はパンパン。事前にネットで「ベビールーム」がある施設を調べてからでないと安心できません。
考えすぎて、私は赤ちゃんと2人きりで電車に乗ってお出かけするまで半年かかりました。
こんな感じで何事にも「石橋を叩いて渡る」気質のHSPは、ネットやテレビなどで世間のネガティブな情報を見てしまうと「最悪の事態」を想定して慎重になってしまいます。結婚や出産に積極的になれないHSPも多く、子どもを持たない選択をする夫婦もいるそうです。
何をしても批判する人は必ずいる
考えすぎてしまっているときは、外の情報に敏感になりすぎているときです。自分の感覚や本当の気持ちを取りもどすために、たまには「デジタルデトックス」をおすすめします。個人的におすすめなのは、極力携帯をOFFにして自然やアートなどで五感を満喫させ、リフレッシュすることです。
あと「何をしても批判する人は必ずいる」と頭の片隅にいつも置いておきましょう。
ちょっと今回はまじめになりすぎた?のでおまけマンガもどーぞ。
*1ベビーカー論争…電車内など混雑する公共の場所でベビーカーを畳まずに使用している人に対して「邪魔だから畳んでほしい」という否定派と、「乗らないと移動できないので仕方がない」などの理由の賛成派で意見が分かれている。JRは、ベビーカー利用の人と周囲の人が安全・快適に電車を利用できるよう呼びかけている。
*2ポテトサラダ手作り論…惣菜コーナーでお買い物中に「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」と言われた、というTwitterの投稿が話題になった。これに対し、母親像の押しつけだ、ポテトサラダは作るのが大変だから惣菜を買ってもいい、やはり手作りすべきだ、などといった多数の意見が見られた。
*3子ども用ハーネスは虐待?…歩き始めた子どもの安全のために使用する子ども用リード紐のハーネス。「手をつないでも振りほどいてしまうのであると助かる」などの使用者の意見がある一方で、「ペットみたい」「虐待だ」という否定的な意見もある。
著者プロフィール
おがたちえ
台湾とクルーズ船を愛するHSP漫画家。刺激追求型HSPゆえに、怯えつつも汚部屋掃除や事故物件などのルポ漫画も手掛ける。『フォアミセス』(秋田書店)にて『HSPの歩き方~ハッピー・センシティブ・パーソン!~』を連載中。著書に『繊細すぎて生きづらい~私はHSP漫画家~』(ぶんか社)、『なつかしい日本をさがし台湾』(ぶんか社)、『汚部屋掃除人が語る命の危ない部屋』(竹書房)などがある。
監修者プロフィール
鹿目将至
精神科医。1989年、福島県郡山市生まれ。日本医科大学卒業。現在、愛知県内の病院に勤務。『1日誰とも話さなくても大丈夫 精神科医がやっている猫みたいに楽に生きる5つのステップ 』や『「もうもたない…」折れそうでも大丈夫』を出版。「気軽に生きる」をモットーに活動中。