日本では年間1万人以上の女性が子宮頸がんに罹患しています。子宮頸がんの主な原因とされるヒトパピローマウイルス(HPV)は、性交渉により感染します。

予防法は子宮頸がんの検診とHPVワクチンの接種の2つ。初期では自覚症状が出にくく、気付きにくい病気であるため、20歳以上の女性は2年に1度の子宮頸がん検診が推奨されています。

厚生労働省は、HPVの感染を60~70%を予防できるとされているHPVワクチンの接種を、12〜16歳の女性に対し、2回もしくは3回推奨しています。

ですが、HPVワクチン接種に関する認知度や接種率は、まだ低いのが現状です。

〈参考記事〉
子宮頸がんの症状、原因は?予防や治療法を医師が解説します(2022年11月更新)

株式会社エムティーアイが運営する、健康情報サービス「ルナルナ」は婦人科系疾患の予防啓発活動を行う一般社団法人シンクパールと共同で「子宮頸がんとヒトパピローマウイルス(以下、「HPV」)ワクチンに関する意識・実態調査2024」を実施しました。

「子宮頸がん検診を受けた」20代前半は30代以上の約半数

エムティーアイの調査によると、子宮頸がん検診を受けたことのある人は、30代以上では8割超だった一方で20代前半では約4割と30代以上の約半数であることが判明しました。

全体では、子宮頸がん検診を「受けたことがある」が71.6%、「今後、受ける予定がある」が6.1%、「受ける予定はない」は22.3%と8割近くが受診済み、もしくは受診予定であることがわかります。

また、子宮がん検診の受診頻度に関する質問では 「1年に1回受診している」と答えた人が39.1%で最も多く、次いで「2年に1回受診している」が22.1%、「過去に1回だけ、受診している」が20.5%、「不定期だが、受診している」が18.3%という結果になりました。

国の指針では、20歳以上の女性に向け2年に1度の子宮頸がん検診受診が推奨されています。

年齢別に結果を見たところ、国の指針通り1年に1回、もしくは2年に1回受診している人は30歳以上では6割超え、25〜29歳では54.6%、20~24歳では31.0%でした。

年齢が下がるにつれ2年に1度、もしくはそれ以上の頻度での検診受診が実施されていないことがわかります。

HPVワクチンの無料接種、認知度は約3割

子宮頸がんを予防する方法の1つである、子宮頸がんワクチンの存在を「知っている」と答えた人は66.6%、「なんとなく知っている」は17.7%、「あまり知らない」は8.3%、「全く知らない」は7.5%。

「知っている」「なんとなく知っている」と答えた人の数を合わせると、8割以上の人が子宮頸がんワクチンの存在を認知していることが分かります。

一方、子宮頸がんワクチンが厚生労働省により「定期接種(公費助成)として接種可能」なワクチンであると定められていることを知る人は全体の約3割と非常に少ないことが判明しました。

HPVワクチンは接種することで、子宮頸がんになる原因の50~70%を防ぐことができると言われています。

ワクチンの積極的推奨が停止されていた数年の間に接種対象期間を満了した世代に向け、「キャッチアップ接種」も実施されているため、公費助成対象の人は接種について検討してみてください。

〈参考記事〉
【UPDATE】HPVワクチン積極的勧奨再開へ。キャッチアップ接種も来年4月から実施の方針

 ワクチン接種を希望しない理由は「副反応」

2013年から約8年間停止されていた子宮頸がんワクチン接種の「積極的勧奨」が2022年4月より再開されました。

これを受け、定期接種対象者にHPVワクチンを接種したいと思うかを聞いたところ、「すでに接種した」「接種したい」「どちらかというと接種したい」を選んだ人は35.5%、「できれば接種はしたくない」「接種する予定はない」「接種を迷っている」の合計が34.9%した。

2021年に行われた調査では、「接種したことがある」、「今後接種する予定がある」と答えた人は15.8%と2割弱であったため、積極的推奨の再開により接種希望者が増加したと言えます。

HPVワクチンの積極的推奨の再開により接種希望者が増加した一方で、「接種を希望しない」、「接種を迷っている」と回答した人も一定数いることがわかりました。

「接種を希望しない」と答えた人にその理由を聞いたところ、「接種後の副反応が心配だから」が54.7%、「信頼できる情報がないから」が30.6%、「接種の必要性を感じないから」が23.1%。

また、接種を「迷っている」と答えた人の回答理由は「接種後の副反応が心配だから」が71.2%、「接種の効果効用がわからないから」が32.3%、「信頼できる情報がないから」が28.3%と、最も多かった理由は「接種を希望しない」と答えた人と同一であることがわかりました。

自治体によるHPVワクチン啓発活動、8割が「知らない」

政府広報や自治体は、HPVワクチンに関するさまざまな情報を発信しています。

しかし、そのような啓発活動を「見たことがある」人は全体のわずか14.5%。

また自身が住む自治体がどのような取り組みを行っているのか、その認知度を調査した設問では、「知っている」と答えた人が5.8%、「なんとなく知っている」が6.6%、「あまり知らない」が34.4%、「全く知らない」が53.2%でした。

「知っている」「なんとなく知っている」と回答した人に、具体的にどのような取り組みを知っているのか聞いてみたところ、HPVワクチンの無料接種や子宮がん検診についての案内といった郵便物を挙げる人が多い結果に。そのほか、医療機関に掲示されているポスターと答える意見も見られました。

若年層のがん患者、女性が占める割合は8割

国立がん研究センターと国立成育医療研究センターが発表している「がん診療連携拠点病院等院内がん登録2016-2017年小児AYA集計報告」(2019年)によると、15歳〜39歳のがん患者では女性比率が高く、特に20歳以降は約8割の患者が女性であることがわかっています。

子宮頸がんのように、ワクチンで予防できるがんは多くはありません。2人に1人ががんになると言われる現代だからこそ、他人事とは思わずHPVワクチンの接種や定期検診の受診を検討してみてください。

<調査概要>

子宮頸がんとヒトパピローマウイルスワクチンに関する意識・実態調査2024
調査実施時期:2024年2月22日(木)~2024年2月26日(月) 
調査方法:『ルナルナ』、『ルナルナ 体温ノート』、『ルナルナ ベビー』
人数:女性 2,230名

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