多くの人がHIVやエイズ(AIDS)という名前を一度は耳にしたことがあると思います。昔はHIV感染は不治の病として恐れられていましたが、医療の発展や治療薬の普及によって、現在では命を落とす人は減っています。今回は、HIV感染の症状やエイズ発症、原因、治療法、予防について説明します。

HIVに感染してから、エイズ(AIDS)が発症するまでの期間は個人差がある

エイズとは後天性免疫不全症候群(AIDS:acquired immunodeficiency syndrome)の略称です。具体的には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV:human immunodeficiency virus)に感染することで免疫機能が低下し、細菌やカビ、ウイルス感染症や悪性腫瘍などの病気にかかってしまった状態を指します。

また、HIVに感染したらすぐにエイズを発症するわけではなく、急性期、無症候期、エイズ発症期の3段階があります。

1.急性期(感染から2~6週間程度)

HIVがリンパ組織で急速に増え、発熱やリンパの腫れ、筋肉痛、倦怠感などインフルエンザのような症状が出ますが、数週間で自然に治ります。ただし、これらの症状は一時的に治っただけで、治療をしなければHIV感染はどんどん進行してしまいます。HIV感染の急性期の症状は全ての人に出るわけではなく、感染した約50%の人にはなんらかの症状が現れます。

2.無症候期(数年~10年以上)

急性期の症状がおさまった後もHIVは増殖します。HIVに感染した人の免疫機能がHIVを抑えられているときは、何も症状の出ない状態が続きます。

無症候期の期間には個人差があり、急性期が終わってすぐにエイズを発症する人もいれば、10年以上症状が出ない人もいます。アメリカでは、HIVに感染した人のうち1年以内に発症した比率が36%という数字も報告されています(抗HIV治療ガイドライン2021より)。

3.エイズ(AIDS)発症期

免疫機能がHIVの増殖をおさえられなくなり、血中のウイルス量が増加すると免疫不全の状態に陥り、エイズを発症します。この時期には食欲低下、下痢、体調不良などが続くことがあります。

HIVの感染経路

HIVは血液、精液、膣分泌液、母乳などに多く含まれるため、主な感染経路は性交渉、血液感染、母子感染です。HIVの感染力は強くないため、トイレやお風呂の共用、電車のつり革、手や身体に触れるなど、日常生活での接触による感染はありません。

HIV感染症の診察や治療法

HIVの検査は、血液検査をして血液中のHIV抗体を調べます。全国の多くの保健所では無料で検査を受けられます。医療機関でも検査が可能ですが、検査ができるか事前にHIV検査相談マップや電話等で確認することをおすすめします。

もし、HIVの感染の可能性があり、急性期の症状が出ている場合はすぐに検査を受けるようにしてください。早期に治療を開始することで、免疫機能の低下の予防につながります。

HIV感染が確認されたら、ARTとよばれる抗HIV療法が行われます。ARTは血中ウイルス量を抑えることで免疫機能を維持し、HIVに関連した病気にかかるのを減らす治療法です。HIVを完全に排除する治療法や治療薬は現在研究中です。

HIV感染症を予防するには

HIVの感染経路でもっとも多いのは性行為です。そのため、性行為時のコンドーム着用で感染のリスクを下げられます。

HIVに感染していてもエイズを発症していない場合、自分がHIVに感染していることを知らない場合があります。そうした人から感染する、もしくは自分が他人を感染させるリスクを減らすためにも、不特定多数との性行為を避けることが重要です。

また、HIV検査を受けて、自分が感染していないか確認することもできます。全国ほとんどの保健所では、匿名で無料のHIV検査を受けることが可能です。

エイズは昔は多くの人が命を落としてきた性感染症です。ただ、治療薬や治療法が発展したことで、HIVの感染がわかった時から服薬を続けて、普通に日常生活を送っている人はたくさんいます。もし、HIVの感染やエイズ発症の恐れがある場合は、すぐに検査を受けてください。

監修者プロフィール

淀川キリスト教病院 産婦人科専門医

柴田綾子

2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。LINEボット「妊産婦さん向けの風邪薬ボット」も運営中。https://twitter.com/ayako700

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