先日、ある情報番組で、男性だけで作られたという「生理用ショーツ」が取り上げられ、Twitterでトレンド入りした。生理がある人を中心に、さまざまな議論が飛び交った。
そんななか、その生理用ショーツのHPにある、「生理中であることを周りにバレたくない!気づかれる行動と周りに隠すための対処法」というページの存在を知った。
私の生理にまつわるいろんな記憶と、今まで発信してきた内容への思いが、混ざりあって波のように心の中でうねった。
生理を隠すことで生まれる弊害——私はこれと闘い続けてきた。今取材を続けている生理の貧困問題でも、その弊害を色濃く感じているからだ。
生理の貧困への理解は、「隠さなくてもいい」文化的土壌が不可欠
女性は、「隠せ」と教えられたわけでもないのに、生理を隠すようになる。
生理が「穢れ」とされてきた歴史については、多くの人が知っていることだろう。生理になった人を放り込む「月経部屋」なるものがあったくらいだ。
そこまであからさまな穢れ意識はなくなった現代でも、生理はやはりオープンにできるものではなかった。最近になってやっと、メディアで取り上げられることも増え、女性の体や健康についての議論が活発に行われるようになった。
生理の貧困について、ここまで大々的に報じられる時代が来るなんて、少し前では考えもしないことだったのではないだろうか。
生理の貧困は、今に始まったことではない。統計こそ取られて来なかったが、ナプキンが潤沢に供給されない時代は長かったし、幅広い世代から生理用品に事欠いたエピソードが寄せられている事実からも、この問題が取り残されてきたことが伺える。
諸外国の動き、時代の潮流の中で、やっと概念化され、可視化されたのである。
可視化されたら終わりではない。生理の貧困はバックラッシュの只中にあり、関連記事を出せば「スマホは買えるのにナプキンは買えないの?」などのおびただしい数のコメントが寄せられるのが現状である。
理解を深めることや、適切な支援の方法について議論できるのは、まさにこれからだ。
問題として提起され、それを男性中心社会の中で議論に上げるには、まずは「生理を隠さなくてよい」という文化的土壌が必要だった。今、やっとその土壌ができつつある。
「ナプキンは1日1枚で足りる」生理に対する勘違いの数々
生理を隠すことで生まれる弊害は、挙げればキリがないのだが、端的に言えば、「無知からくる無理解、そこから生まれる配慮不足」だと言える。
性教育における生理、についての授業は、男女別で行われるのが通例。男性は、生理について触れずに生きていけるのだ。そんな社会が生み出したのは、恐ろしいほどの無知と、トンデモない勘違いの数々である。
そうした生理への勘違いの一部を紹介する。
- 経血の量や出すタイミングはコントロールできる
- 生理の日は妊娠しないから避妊せずに性行為をしてもよい
- ナプキンは1日1枚で足りる
このように、聞くだけで目眩がするような勘違いが際限なく生まれている。これは私が書いた記事に寄せられたコメントや、Twitterに寄せられた声を一部抜粋したものだ。
PMSの存在も知らず、寝込むほどの生理痛なんて想像もできない、そんな人もいるだろう。
彼氏に生理になったと言っても温泉旅行を決行しようとした、という話もある。絶句したのは、処女膜神話から来たと思われる「処女は生理が来ない」、を本気で信じている人がいるということだ。
災害時に避難所でナプキンを配布する際、不謹慎だ、と言われたり、コンビニでナプキンを買おうとしたらおじさんにけがらわしい、と暴言を吐かれたり、などのエピソードはこうした勘違いに由来するものだと考えられる。
生理痛で生理休暇を取ろうとしたらズルではないかと疑われたり、電車でうずくまっていると演技だと言われる。
これらが、知らないから仕方ないよね、で済まされる話なのだろうか。
生理の貧困の要因のひとつに、父子家庭で父親に言い出せなかった、また、夫がナプキンの消費量に理解がなく、十分な量を買わせてもらえなかった、というものがある。生理について正しい知識があれば、年頃の娘に生理が来ることや、ナプキンの使用量に個人差があることくらい想像できる。
「生理なのでしんどいです」が言えたなら、もう少し生きやすくなる
生理についてもっとオープンに話せたらどれだけ良かっただろう、と思うことが今でもある。貧血で倒れそうになりながら仕事をしたり、電車で立ち眩みがしたり。
以前よりははっきり言えることも増えた。しかし、躊躇がないかと言えば嘘になる。
「生理なので、しんどいです。休ませてください」そう毎回はっきり言えたなら、もう少しだけ、生きやすくなるんじゃないか、と思うのだ。
生理の無理解について記事を書くようになってから、思い切って男友達に、生理に関する無理解についてどう思う?と聞いてみたら、「”排泄系”だから、聞く方の気持ちにも配慮してほしいかな」という返事が返ってきた。
気心知れた男友達にそういわれたのは、正直ショックだった。それを最初に言われてしまったので、それ以上、生理について話すのをやめた。
正しい知識があれば、生理のディスコミュニケーションも減るかもしれない
冒頭で触れた「生理中であることを周りにバレたくない!気付かれる行動と周りに隠すための対処法」のページでは、「気付かれやすい行動」として、次のように紹介されている。
・イライラしたり、情緒不安定でいつもと様子が違う
・トイレに行く時に荷物が多く、回数も多い
・いつもはスカートなのに、ボトムスを穿いている
そして「うまく隠す方法」として、こう記載してあった。
・ナプキンはメイクポーチに隠す
・ポケットが付いているものや吸水型サニタリーショーツを選ぶ
・においが気になる時は、香り付きナプキンを使う
これを見て思わずちゃぶ台返しをしたくなったのは、私だけだろうか。
生理だと悟られたくない女性は多いし、そこにはいろんな理由がある。そして、隠すための行動など、誰から言われずとも、体に染みついているし、ないものとして扱うことに私たちはとっくに慣れてしまっている。
むしろ私が訴えたいのは、生理を隠さなくていい権利だ。
ナプキンを手にトイレに行き、必要があれば不調を伝える。不可化されている生理の存在を認識してもらうだけでも、少しだけ世界は変わるのではないか。人は現実を知るからこそ、想像力を働かせられるのだから。
毎月生理が来ること。経血の量やかかる経費、症状の種類や重さは千差万別。それを知っている人が増えたなら、生理に関するディスコミュニケーションは減るんじゃないか。
最後にもう一度言いたい。
生理は隠してもいい。でも、隠さなくてもいい。時代はもう、変わっている。