画像=Laundry Box

先日、ある情報番組で、男性だけで作られたという「生理用ショーツ」が取り上げられ、Twitterでトレンド入りした。生理がある人を中心に、さまざまな議論が飛び交った。

そんななか、その生理用ショーツのHPにある、「生理中であることを周りにバレたくない!気づかれる行動と周りに隠すための対処法」というページの存在を知った。

私の生理にまつわるいろんな記憶と、今まで発信してきた内容への思いが、混ざりあって波のように心の中でうねった。

生理を隠すことで生まれる弊害——私はこれと闘い続けてきた。今取材を続けている生理の貧困問題でも、その弊害を色濃く感じているからだ。

生理の貧困への理解は、「隠さなくてもいい」文化的土壌が不可欠

Photo by Drew Hays on Unsplash

女性は、「隠せ」と教えられたわけでもないのに、生理を隠すようになる。

生理が「穢れ」とされてきた歴史については、多くの人が知っていることだろう。生理になった人を放り込む「月経部屋」なるものがあったくらいだ。

そこまであからさまな穢れ意識はなくなった現代でも、生理はやはりオープンにできるものではなかった。最近になってやっと、メディアで取り上げられることも増え、女性の体や健康についての議論が活発に行われるようになった。

生理の貧困について、ここまで大々的に報じられる時代が来るなんて、少し前では考えもしないことだったのではないだろうか。

生理の貧困は、今に始まったことではない。統計こそ取られて来なかったが、ナプキンが潤沢に供給されない時代は長かったし、幅広い世代から生理用品に事欠いたエピソードが寄せられている事実からも、この問題が取り残されてきたことが伺える。

諸外国の動き、時代の潮流の中で、やっと概念化され、可視化されたのである。

可視化されたら終わりではない。生理の貧困はバックラッシュの只中にあり、関連記事を出せば「スマホは買えるのにナプキンは買えないの?」などのおびただしい数のコメントが寄せられるのが現状である。

理解を深めることや、適切な支援の方法について議論できるのは、まさにこれからだ。

問題として提起され、それを男性中心社会の中で議論に上げるには、まずは「生理を隠さなくてよい」という文化的土壌が必要だった。今、やっとその土壌ができつつある。

「ナプキンは1日1枚で足りる」生理に対する勘違いの数々

Photo AC

生理を隠すことで生まれる弊害は、挙げればキリがないのだが、端的に言えば、「無知からくる無理解、そこから生まれる配慮不足」だと言える。

性教育における生理、についての授業は、男女別で行われるのが通例。男性は、生理について触れずに生きていけるのだ。そんな社会が生み出したのは、恐ろしいほどの無知と、トンデモない勘違いの数々である。

そうした生理への勘違いの一部を紹介する。

  • 経血の量や出すタイミングはコントロールできる
  • 生理の日は妊娠しないから避妊せずに性行為をしてもよい
  • ナプキンは1日1枚で足りる

このように、聞くだけで目眩がするような勘違いが際限なく生まれている。これは私が書いた記事に寄せられたコメントや、Twitterに寄せられた声を一部抜粋したものだ。

PMSの存在も知らず、寝込むほどの生理痛なんて想像もできない、そんな人もいるだろう。

彼氏に生理になったと言っても温泉旅行を決行しようとした、という話もある。絶句したのは、処女膜神話から来たと思われる「処女は生理が来ない」、を本気で信じている人がいるということだ。

災害時に避難所でナプキンを配布する際、不謹慎だ、と言われたり、コンビニでナプキンを買おうとしたらおじさんにけがらわしい、と暴言を吐かれたり、などのエピソードはこうした勘違いに由来するものだと考えられる。

生理痛で生理休暇を取ろうとしたらズルではないかと疑われたり、電車でうずくまっていると演技だと言われる。

これらが、知らないから仕方ないよね、で済まされる話なのだろうか。

生理の貧困の要因のひとつに、父子家庭で父親に言い出せなかった、また、夫がナプキンの消費量に理解がなく、十分な量を買わせてもらえなかった、というものがある。生理について正しい知識があれば、年頃の娘に生理が来ることや、ナプキンの使用量に個人差があることくらい想像できる。

「生理なのでしんどいです」が言えたなら、もう少し生きやすくなる

生理についてもっとオープンに話せたらどれだけ良かっただろう、と思うことが今でもある。貧血で倒れそうになりながら仕事をしたり、電車で立ち眩みがしたり。

以前よりははっきり言えることも増えた。しかし、躊躇がないかと言えば嘘になる。

「生理なので、しんどいです。休ませてください」そう毎回はっきり言えたなら、もう少しだけ、生きやすくなるんじゃないか、と思うのだ。

生理の無理解について記事を書くようになってから、思い切って男友達に、生理に関する無理解についてどう思う?と聞いてみたら、「”排泄系”だから、聞く方の気持ちにも配慮してほしいかな」という返事が返ってきた。

気心知れた男友達にそういわれたのは、正直ショックだった。それを最初に言われてしまったので、それ以上、生理について話すのをやめた。

正しい知識があれば、生理のディスコミュニケーションも減るかもしれない

冒頭で触れた「生理中であることを周りにバレたくない!気付かれる行動と周りに隠すための対処法」のページでは、「気付かれやすい行動」として、次のように紹介されている。

・イライラしたり、情緒不安定でいつもと様子が違う

・トイレに行く時に荷物が多く、回数も多い

・いつもはスカートなのに、ボトムスを穿いている

そして「うまく隠す方法」として、こう記載してあった。

・ナプキンはメイクポーチに隠す

・ポケットが付いているものや吸水型サニタリーショーツを選ぶ

・においが気になる時は、香り付きナプキンを使う

これを見て思わずちゃぶ台返しをしたくなったのは、私だけだろうか。

生理だと悟られたくない女性は多いし、そこにはいろんな理由がある。そして、隠すための行動など、誰から言われずとも、体に染みついているし、ないものとして扱うことに私たちはとっくに慣れてしまっている。

むしろ私が訴えたいのは、生理を隠さなくていい権利だ。

ナプキンを手にトイレに行き、必要があれば不調を伝える。不可化されている生理の存在を認識してもらうだけでも、少しだけ世界は変わるのではないか。人は現実を知るからこそ、想像力を働かせられるのだから。

毎月生理が来ること。経血の量やかかる経費、症状の種類や重さは千差万別。それを知っている人が増えたなら、生理に関するディスコミュニケーションは減るんじゃないか。

最後にもう一度言いたい。

生理は隠してもいい。でも、隠さなくてもいい。時代はもう、変わっている。

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