コロナ禍において、好ましくない状況に置かれた女性たちの姿が浮き彫りになっている。連日ニュースでも報道され、女性の自殺率は去年7月以降から上昇し続けている。そんな中、それを裏付けるような資料として男女共同参画白書の令和3年版が内閣府の男女共同参画局から2021年6月に公開された。

男女共同参画白書とは、男女共同参画社会基本法に基づき男女共同参画社会の形成の状況などについて国会に報告する年次報告書で、男女共同参画週間(6/23〜6/29)の時期に合わせて閣議決定がされる。令和3年版は6月11日の閣議で決定された。

白書には、令和2年度男女共同参画社会の形成の状況において、コロナ禍で顕在化した男女共同参画の課題と未来という特集が組まれ、そのほか令和2年度に講じた男女共同参画社会の形成の促進に関する施策と令和3年の施策についても書かれている。

非正規雇用やシングルマザーに大きな打撃

画像=男女共同参画白書 令和3年度版

2020年における就業者数の推移では、男女ともに第1回緊急事態宣言が発出された2020年4月に大幅減少したものの、男性が39万人減に対して女性は70万人減と、女性の減少幅が男性に比べて大きいことがわかる。

画像=男女共同参画白書 令和3年度版

雇用形態別雇用者数の前年同月差の推移では、女性は非正規雇用労働者の割合が高く、さらに増加が進む一方で非正規雇用労働者は2020年3月以降13ヶ月連続で減少した。非正規雇用労働者の割合が高い飲食業や娯楽業などが特に就業数の減少幅が大きく、非正規雇用労働者を打撃した。

画像=男女共同参画白書 令和3年度版

また、シングルマザーの完全失業率がコロナの影響で約3%ポイント押し上げられている。その一方で、子どものいる有配偶者には大きな影響はみられないことも同時にわかった。非労働力率も、シングルマザーと子どものいる有配偶者で対照的な影響が見られ、後者の非労働力化に影響が生じている。

DV相談件数が前年比1.6倍に増加、性暴力も増加した可能性

新型コロナウイルスによる影響は就業面だけに留まらず、生活面においても影を落としている。

画像=男女共同参画白書 令和3年度版

全国の配偶者暴力相談支援センターと、新型コロナウイルスの感染に伴って2020年4月より開始した「DV相談プラス」に寄せられたDV相談件数を合わせると、令和2年度の相談件数は19万30件で前年度比で約1.6倍に増加している。

画像=男女共同参画白書 令和3年度版

また、全都道府県に設置されている被害者支援の中核的組織「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」に寄せられた令和2年度の相談件数は5万1141件で、4万1384件だった前年度と比較すると約1.2倍に増加している。

なお、令和元年度に配偶者暴力相談支援センターに寄せられた相談総数約12万件のうち、そのほとんどを占める11万6374人が女性である。

自殺者数は前年比で女性が935人増加、男性は減少

画像=男女共同参画白書 令和3年度版

自殺者数においても変化があった。上のグラフを参照すると、男女ともに2020年6月までは2016年以降最低の水準で自殺者数が減少していたが、7月以降男性も女性も自殺者数が増加する傾向が見え、特に女性にとってその傾向が顕著であった。7月以降はすべての月において、2016年以降の自殺者数をゆうに超えていることが確認できる。

画像=男女共同参画白書 令和3年度版

女性の自殺者数の内訳は「無職者」が648人増加、「被雇用者・勤め人」も443人増加と、職の有無にかかわらず自殺者数が増加していることがうかがえる。「無職者」の中でも「主婦」が最も増加し、学生・生徒などにおいては「高校生」が最も増加した。

男性の自殺者数においては「非雇用者・勤め人」が199人増加し、自営業者・家族従事者は239人減少した。総数としては、2020年の自殺者数は前年比で23人減少していることは、女性の自殺者数と比較して注目すべきデータである。

しかし、女性の自殺者数が前年と比較して935人増加しているものの、総数で見ると男性が1万4055人、女性が7026人であり、男性の自殺者数が依然として女性の約2倍の数字となっていることにも同時に留意する必要があるだろう。

テレワークの感じ方に男女で乖離

画像=男女共同参画白書 令和3年度版

ポストコロナ時代においてはテレワークの普遍化により、女性が働きやすくなる可能性があるとされている。

実際に第1回緊急事態宣言中にテレワークを経験した就業者を対象に、テレワークを経験して感じたことを調査したところ、「家事・育児との両立がしやすくなる」と回答した男性が8.2%、女性が9.1%と男女ともに家事・育児と仕事の両立がしやすくなったと感じた人が一定数いたことが読み取れる。

一方で、ストレスを感じた人が多いことも事実だ。

同調査で「家事が増える」「自分の時間が減ることがストレス」と回答した人は、それぞれ男性が12.5%、9.3%であったのに対して、女性は17.6%、13.6%となり、女性がよりストレスを感じているという結果に。

また、「家族と一緒の時間が増えてよい」と回答した男性が19.2%いたのに対して、女性は12.4%であったことからも、男性と女性でテレワークの受け取り方に乖離が生じていることもわかった。

コロナ禍で介護サービス就業者数増加も、勤務環境の改善が懸念

画像=男女共同参画白書 令和3年度版

医療・福祉、情報通信業などコロナ禍においても就業者数が増加している産業がある。有効求人倍率を見ると、第1回緊急事態宣言後も介護サービスの職業については、3〜4倍以上で推移しており、ニーズが高いことが読み取れる。また、IT関連の転職求人倍率も高く推移している。

白書においては、今後このようなニーズのある分野や成長分野などへのシフトが重要であり、そのためには職業訓練などの人材育成、人材のマッチング、勤務環境の改善などが必要であるとの記載があるが、介護職の給与の低さは議論されるべきポイントだ。

組合員約8万人の介護業界の労働組合「UAゼンセン日本介護クラフトユニオン(NCCU)」は2020年9月に、厚生労働大臣に対して介護報酬の引き上げや「介護職員処遇改善加算」などの仕組みの再構築、身体介護と生活援助の一元化などを求める要望書を提出しており、その背景には他業界と比べた給与の低さなどがある。

NCCUが2020年に11月に発表した「2020年度就業意識実態調査」では、介護職員の平均給与額は359万8000円であることが発表された。これは国税庁が発表した「令和元年分 民間給与実態統計調査」における、全産業を通じた平均給与である436万4000円と比較して、約77万円低い水準にあることがわかる。

相談先まとめ

性犯罪や性暴力、DVなどに関する相談先をまとめました。男女共同参画局のホームページから相談窓口一覧が確認可能です。お困りの際にはこちらを参照してください。

性犯罪・性暴力について

DV・デートDVについて

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