淋病の正式名称は淋菌感染症といい、性感染症の一種です。女性は感染しても自覚症状がないことが多く、気づきにくい病気です。しかし、放置してしまうと不妊につながる可能性があります。淋病の症状や治療法について紹介します。
淋病の患者数や感染経路
淋病は、「淋菌」という病原菌が粘膜に感染することで発症します。感染経路は性行為もしくはオーラルセックスがほとんどです。また、キスや回し飲みなどで感染するリスクは低いとされています。
淋病の患者数は、女性より男性が多いことが特徴です。その理由は、女性は感染しても自覚症状のないことが多く、感染に気づかずに病院を受診しないケースが多いからといわれています。
また、あまり一般に知られていませんが、淋菌は性器だけでなく喉にも感染するため、オーラルセックスでも感染する可能性があります。
淋病の症状やリスク
淋病は、男女で症状が異なります。
1. 女性が淋病に感染した場合
以下のような症状があらわれます。
- おりものの増加
- 不正出血
- 下腹部の痛み
おりものが増加する変化はありますが、ニオイなどの変化はほとんどないため気づきにくいです。
淋病に感染したことに気づかず放置すると、子宮頚管炎や尿道炎になる可能性があります。さらに感染が進むと、子宮内膜炎や卵管炎などの骨盤内炎症性疾患などを起こしてしまい、不妊の原因となることもあります。
2. 男性が淋病に感染した場合
2~9日の潜伏期間を経て、以下のような症状があらわれます。
- 排尿痛
- 精巣上体の腫れ
- 尿道からの膿
- 軽い発熱
性器が腫れ、歩くことが難しいほど激痛を伴うこともあります。急性尿道炎を引き起こすことが多く、放置すると前立腺炎や精巣上体炎などに発展するリスクがあります。
3. のどに淋病を発症した場合
のどに淋病を発症した場合は、ほとんど症状が出なかったり、出たとしてもごくわずかな変化だったりします。
- のどの腫れ
- のどの痛み
- 発熱
淋病の診察や治療内容
女性の場合は腟分泌液を採取し培養し、男性の場合は尿を採取して検査を行います。のどの感染の場合は、うがいした液やぬぐい液を検査します。治療は抗菌薬の点滴が1番効果的で、内服薬を使うこともあります。
最近では、抗菌薬が効きにくくなる耐性をもつ淋菌が増えています。そのため、淋病の治療は、きちんと治ったかを検査することが重要です。体内に淋菌がいなくなっているか、治療後3週間程度あけてから確認します。
注意点として、医師から処方された抗菌薬は、症状がおさまっても最後まで飲み切るようにしましょう。途中で服用を止めてしまうと完治しない可能性があります。
淋病の予防
淋病の場合は、性行為時のコンドームの着用で感染のリスクを下げることができます。そして、不特定多数の人との性行為は避けること、淋病が疑われる人との性行為(オーラルセックスも含む)を避けることが重要です。
女性の場合は自覚症状があまりなく、気づきにくいので注意が必要です。無症状のまま放っておくと、不妊症につながる可能性があります。
大切な人も自分も感染しないためにも正しくコンドームを使い、パートナーが変わったときや気になる症状が出てきたときは、性感染症の検査を行ってください。
監修者プロフィール
淀川キリスト教病院 産婦人科専門医
柴田綾子
2011年群馬大学を卒業後に沖縄で初期研修。世界遺産15カ国ほど旅行した経験から女性や母親を支援する職業になりたいと産婦人科医を専攻する。 総合医療雑誌J-COSMO編集委員を務め、主な著者に『女性の救急外来 ただいま診断中!』(中外医学社,2017)。産婦人科ポケットガイド(金芳堂、2020)。女性診療エッセンス100(日本医事新報社、2021)。明日からできる! ウィメンズヘルスケア マスト&ミニマム(診断と治療社、2022)。